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第32話 サイレント、アリアに大人の対応を見せる!?

前回のあらすじ

サイレント、アリアの大鎌を持とうとするが、持てない。

サイレント、スクロールを拾いに行く。




 

 しまった。

 このままだと、8年前に捨てたスクロールを拾いに行くバカって思われてしまう。

 ここはうまくごまかさないといけないぞ。


「えっとね、これは、金貨10枚に釣られたのではなくて、ボクのステータスをアリアに見せたかったから、拾いに行こうとしたんだよ」

「金貨のためじゃなくて、アリアのためだったんデスね」

 アリアの顔はみるみる明るくなり、天真爛漫な笑顔になった。

 本当はお金のためだとは絶対に言えない。


「もちろんさ。ステータスの数字なんて、実践じゃ役に立たないんってことを教えたくてね」

 毒を食らわば皿までだ。

 徹底的に嘘を貫き通してやる。


「そうなんデスね」

「そう、決して金貨10枚のためじゃないからね!!」


「実践でステータスは役に立たないなら、師匠のステータスは確認するまでもないデス」

「そっか、良かった」

 ボクが金貨に釣られたことをうまくごまかせた上に、ステータスに興味がなくなったなら、ラッキーだ。


「何が良かったんデスか?」

「ああ。いや、こっちの話、こっちの話。気にしないで」


「気にしないでと言われると気になるデス」

「ステータスのことはおいといて、他に何か気になることってある? 気になることは何でも答えてあげるよ、なんせボクは先輩冒険者だからね。エレガントにこたえてあげるよ」

 ボクはエレガントに自分のティーカップにお茶を淹れなおし、エレガントに足を組むことで大人の余裕を見せながら、エレガントに話題を変える。


「なんか、無理矢理話題を変えている感がすごいデス」

「そんなことないさ」

 図星だということが伝わらないように、いたって冷静に答える。


「師匠、手が震えてるデスが、大丈夫デスか?」

「少し寒気がしてね。でも、この紅茶を飲めばすぐに震えは止まるはずさ」

 言いながら、ボクはエレガントにティーカップに口をつける。


「それでは師匠、質問デス」

「何だい?」

 次の質問はエレガントにこたえてみせる。


「禁断の恋ってどう思うデス?」

「ぶーっ」

 口に含んでいたお茶を一気に吐き出すボク。


 ボク、彼女いない歴=年齢の人間だよ。

 恋に一番縁のない人間なんだよ。

 そのボクに禁断の恋の話?

 人選ミスだよ、アリア!!


「師匠、汚いデス」

「ごめん、ごめん、急に恋の話になったからさ」


「師匠は禁断の恋のことをどう思うのかな……って気になっただけデス」

「確認なんだけど、キンダンのコイって、食べちゃいけない魚の鯉ことじゃないよね? 禁断の味がするから、食べてはいけない鯉のお話的な」


「そういうのじゃないデス。身分違いの人を好きになったら師匠ならどうするかって話デス」

 そんなの考えたこともない。

 考えたこともないが、聞かれたからにはエレガントにこたえなくてはいけないぞ。


「ボクの身分が下で相手が上だったら、好きってことだけ伝えて、恋人同士になるかどうかは、相手に判断を委ねるかな」

 身分の下の方は上の人とお付き合いできれば嬉しいけど、身分が上の人は下の人とお付き合いしても嬉しいとはかぎらないしね。


「なるほどデス」

 納得するアリア。


「恋の話じゃなくて、他に気になることはないの?」

 経験のない恋の話はこれ以上もたないと思ったボクは話題を変える。


「気になること……アリア、師匠の武器に興味があるデス」

「ボクの武器?」

「そうデス。できれば、どんな武器なのか見せてくださいデス」

 アリアはボクの息がかかる距離まで詰め寄り、ボクの腰に手を伸ばす。


「触っちゃダメ!!」

 ボクは慌ててアリアを止めた。


「何でデスか?」

「武器はボクの命みたいなものだからね」


「師匠、アリアの大鎌は触ったのに、ズルくないデスか?」

「ズルくない。ボクのダガーは高かったんだ。おいそれと触らせられないよ」


「高かった?」

「うん、そう」


「師匠のダガー、初心者用デスよね?」

「うん、そうだね」

 冒険者になりたての頃からずっと愛用しているダガーだ。


「初心者用のダガーなら、高いようには見えないデスけど」

「これは、特別製なの!!」


「ちなみに、いくらしたんデスか?」

「5千ゴールド」

 あ、言っちゃった。

「5千ゴールド!? 5千ブロンズじゃなくてデスか?」

 アリアは大声をあげる。


「うん、5千ゴールド!!」

 この値段だけは、バカのボクでも覚えている。

「ね? 高いでしょ?」

「適正価格よりも高いデス。いや高いなんてもんじゃないデス。高過ぎデス」


「そんなことないよ。5千ゴールドは適性価格だって、お店の人が言っていたもん」


「適正価格なわけないデス、師匠。5千ゴールドですよ? リンゴ1個が1ブロンズ。リンゴ10個が1シルバー。リンゴ100個が1ゴールドですよ? 5千ゴールドってことは、リンゴ50万個ですよ?」


「そうだね」

 リンゴ50万個と言われてもよく分からないが、とりあえず頷いておく。


「5千ゴールドと言えば、ミスリル製の武器でも高いデスよ。まさか、最高級のティタン製デスか?」

 ティタン製の武器と言えば、世界最強の武器で、神さえも殺せると言われている、冒険者なら誰もが欲しがる武器だ。


「皆には内緒なんだけど、実はティタン製なんだ」

 ボクは腰のダガーを鞘から抜き、弟子であるアリアにダガーをみせつけた。

 ふふふ、うらやましいだろ、アリア!!


忙しい人のまとめ話

サイレント、アリアにエレガントな対応を見せようとして、お茶をふく。

サイレント、アリアに武器を見せて欲しいとせがまれる。



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