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第18話 サイレント、隠れた才能が開花する!?

これまでのあらすじ

 サイレント、大天使長が存在しないことを知る。

 フラットさん、元神様をバカにして院長先生を怒らせるが、アリアがなだめる。

「これからは声を出さずに、ハンドシグナルで合図をしながら近づいた方が良さそうなのよ」


 確かに、院長先生の言う通りだ。

 せっかく気配を消したのに、声で居場所がバレてしまっては元も子もない。


「あれ?? でも、ハンドシグナルじゃなくて、念話のほうが良いのでは??」

 院長先生の念話なら、心の中で会話ができるはずだ。


「念話で会話すると、魔力を使うから、魔力の敏感な魔物に気づかれる可能性があるのよ。ハンドシグナルの方が安全なのよ」

「わかりました」


 ボクはこくりとうなずくと、ハンドシグナルで、木の陰に隠れるよう、みんなに指示を出した。

 ムービング・ウッドは一度立ち止まってから、きょろきょろと周囲を何度も見回したあと、慎重に動いている。


 合流してくる魔物も多いから、もしかしたら、目的地に近いのかもしれない。

 ここからは慎重に動かないと、命に関わるぞ。


 念のために気配察知もしないでおこう。


 ボクは気合を入れなおし、ゆっくりとボクについてくるようにハンドシグナルを出した。

 少し歩いた後、魔物たちが足を止めたのでボクも足を止める。


「ちょっと、ハンドシグナルなしで急に立ち止まらないでほしいのよ」

 背中にぶつかった院長先生の小声の文句にボクは答えずに、指をさした。


「どうしたのよ、サイレント??」

 ボクの指さす方を見て、院長先生も息をのむ。


「数えきれないほどの魔物が集まっていますねー」


 小声ではあるが、いつものように甘ったるい声で間延びした声を出すフラットさん。

 どうしてそんなに平常通りなの??

 こんなに魔物がいるのに。


「くんくんー、Aランクのファイヤーウルフ、Sランクのセイレーンやケルベロスまでいますねー」


 鼻をひくひくと動かしながら香りだけでその場にいる魔物を当てていく。

 セイレーンやケルベロス、聞いたことのない魔物だ。


 だが、Sランクは弱いといことは知っているし、Aランクは強いということも知っている。

 結局、フラットさんが言いたいことは、強い魔物からから弱い魔物までたくさんいるということだろう。


「香りだけで魔物が分かるなんて、さすがフラットお姉さまデス」

「そんなことないですー。いろいろな魔族の香りが混じりすぎていてー、どれくらいの数がいるか分からないですー」


「もし、魔界付近の魔物が集まっているならば、最低でも1万体ほどいるはずデス」

「1万体もいるのよ!?」


 1万体という数がどれくらいか分からないけど、院長先生の驚きようから、ものすごい数がいることは分かった。


「院長先生、この数の魔物をホーリィで駆逐するってことは……」

「無理に決まっているのよ」

 にっこりと笑顔でこたえる院長先生。


「ですよね」

 うん、分かっていました。

 これだけの数だもんな……


「あれ? 魔物たちの奥の方に人影が見えますね」

 遠くて豆粒みたいにしかみえないが、あれは確かに人影だ。


「アリアには見えないデス」「そうですねー。私も見えないですー」「本当に人なんかいるのよ?」


 確かに、夜目がきくアサシンのボクでさえ、なんとか分かる程度だ。

 アサシンじゃない人なら、見えなくて当然だろう。


「間違いなく人影ですよ」

「こんな魔界の入口付近で人間が何しているのよ??」


「もしかしたら、人型をした魔族かもしれませんね」

 アリアみたいに。


「人型魔族ならー、Sランクの魔族なのは確定ですねー」


 そっか、人型の魔族って、Sランクなんだ。

 弱いんだな、人型の魔物って。

 人間、他の動物と比べて、牙も爪も弱いからな……


 アリアもFランクのボクより弱かったわけだし。

 あれ??

 でも、アリアって、Dランクのスケアード・スライムを倒していたよな……

 あ、そういえば、自分の攻撃と相性によっては、格下でも格上の魔物を倒せると聞いたことがある。


 きっと、アリアの鎌攻撃は、スケアード・スライムの弱点だったに違いない。

 ボクが納得していると、何か音が聞こえてきたのでボクは耳を澄ました。


「人影が何か言っていますね……範囲魔法の詠唱でしょうか??」

 うまく聞き取れなかったので、ボクは院長先生に確認する。


「何を言っているかは聞こえないけれど、近くで大きな魔力は感じないのよ。おそらく魔法詠唱ではないのよ」

「それなら何なんですか??」


「声は聞こえないデスが、おそらくは演説デスね」

「演説だって??」


「そうデス。指揮官が壇上に立って、演説をして魔物たちを扇動する内容だと思うデス。」

「院長先生もアリアも声は聞こえないんですか??」


「聞こえないデス」「聞こえないのよ」

 音源から離れすぎているのせいだろうか、院長先生たちには聞こえないようだ。

 ボクはフラットさんのほうを見た。


「私も聞こえないですー」


「もう少し魔物たちの方に近寄りますか??」


「これ以上近づいたら、魔物にばれてしまうのよ。サイレント、あなたの耳でかすかな声を聞き取るのよ!!」

「わかりました……って、ボク、魔族語が分からないんですけど」


「気合でなんとかするのよ、サイレント!!」

「分かりました、気合でなんとか……って、魔族語の翻訳なんて気合じゃなんとかならないですよ!!」


「なんて聞こえたかを教えていただければ、アリアが翻訳するデス。聞こえたように教えてほしいデス」

「分かったよ、アリア」

 ボクは耳を澄ます。


「『集まってもらったのはほかでもないでござる』……と言っていますね」

「あなた、魔族語が分かるのよ??」


「あれ? 言われてみればそうですね。 ……分かった!! ボクの隠れた才能が開花して、魔族語が聞き取れるようになったんですよ!!」

「違うデス。おそらく、フランケン・シュタインが作った翻訳拡声器のおかげデス」

「翻訳拡声器だって??」


「そうデス。魔族と言っても、陸獣族・鳥族・海獣族・虫族などいろいろな種族がいて、言語が異なるので、どの種族でも聞き取れるように、魔王がフランケン・シュタインに作らせたんデス」


 さいですか。

 隠れた才能でもなんでもなかった。

 めちゃくちゃ恥ずかしい。

忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、魔物がたくさん集まっていたのでびっくりする。

 サイレント、魔族の言葉が分かるようになったと喜ぶが、アリアに勘違いだと教えられる。

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