第11話 院長先生、ホーリィでスタンディング・ウッドを倒す!?
これまでのあらすじ
サイレント、『神の爆誕伝説』の魔族の解釈をアリアに聞く。
スタンディング・ウッドがサイレントの質問に答える。
「何言っているんですか、冒険者としてフラットさんを守るのは当然じゃないですか」
「サイレントさんー、素敵ですー」
「いやいや、それほどでもないですよ」
言いながらボクはスタンディング・ウッドをちらりとみた。
どうやら、攻撃をしてくる様子は見受けられない。
……というより、まったく微動だにしないじゃないか、この魔物。
あれ、もしかして……
「フラットさん、確認なんですけど、スタンディング・ウッドは、動けないんですよね?」
ボクはフラットさんに確認する。
「そうですねー」
「動かないなら、ただの木です。こんなの放っておいて、逃げましょう!!」
そうだよ、相手は動かない木なんだから、相手にせずに逃げればいいんだよ。
「逃げられないと思いますー」
「やってみないと分からないじゃないですか!! 瞬動!!」
ボクは全速力で逃げるために脚に力をいれてその場から逃げようとした。
だがしかし、ボクが逃げようとした先には、とんでもなく高い壁が立ちはだかっていた。
こんなところに壁なんてあったか??
まあ、いいや。
ここがダメなら、他のところから逃げればいいんだ。
ボクは反対方向へ瞬動して逃走を試みる。
「……って、あれ?? ここにも壁がある!!」
「ダメですよー。逃げようとしてもー、スタンディング・ウッドのテリトリーに入ったら、根っこが壁となり、地上からは、ちょっとやそっとじゃ逃げられないんですー」
え??
この壁、全部、木の根っこ??
「木の根っこなら全部斬り刻めば……」
「スタンディング・ウッドの根はー、分厚いので時間がかかるかと思いますー」
「時間がかかっても、やってみる価値はあるかと思います」
「やめるのよ、サイレント。私達が根っこを斬り刻んでいる間、スタンディング・ウッドが指をくわえてみているはずがないのよ」
「いやいや、スタンディング・ウッドは、指をくわえてみているしかないですよ。こんなに距離が離れているのに、木がどうやって攻撃するんですか??」
そもそも、木に指はないですよね??
「枝攻撃でごわす!!」
スタンディング・ウッドが叫んだ瞬間、頭上から枝がものすごい速さでボクに飛んできた。
ものすごくしなる枝は、まるで鞭のようだ。
……なんて解析している場合じゃない。
避けないと。
余裕、余裕…………じゃなかった。
後ろにはフラットさんがいる。
フラットさんをかばいながら避けないといけないじゃないか。
ボクはフラットさんの体を押しながら、スタンディング・ウッドの鞭攻撃を紙一重でなんとか避けた。
避けた後、『バッチン』という音が響き渡る。
ボクが音の方向を見ると、地面がえぐり取られていた。
ちょっと待って。
地面がえぐりとられるくらいの威力って、どんだけだよ!!
「もしかして、スタンディング・ウッドって強いんですか??」
「そうですねー。Aランクですねー」
おっとりとしながらも甘ったるい声でこたえてくれるフラットさん。
「Aランクだって!? はやく逃げましょう!!」
FランクのボクがAランクの魔物を倒せるわけがないじゃないか。
「フラットの話を聞いてなかったのよ?? スタンディング・ウッドのテリトリーに入ったら、ちょっとやそっとじゃ逃げられないのよ!!」
「空から逃げればいいじゃないですか」
ボクは上を指さした。
院長先生には堕天使の羽があるんだし、ボクにはスキル・空動がある。
相手はここから動けないんだから余裕で逃げられるだろう。
「それはオススメしないですねー」
「どうしてですか??」
「スタンディング・ウッドはー、テリトリーに入った標的を外に逃がさないんですー。枝を空高くまで伸ばすことも可能なんですよー」
「別にスタンディング・ウッドが枝をのばすくらい、どうでもいいじゃないですか」
「もしもー、枝に捕まったら最後ー、スタンディング・ウッドの養分になって干からびてしまいますねー」
「なんてこった」
「院長先生、ホーリィで倒してくださいよ!!」
院長先生の魔法で光の槍なら、ムービング・ウッドを倒すことも可能だろう。
「分かったのよ!! ホーリィ!!」
院長先生は光の槍を作り、それを投げた。
「やった、直撃コース!! これで終わりだ、ムービング・ウッド!!」
相手が悪かったな、ムービング・ウッド。
こっちには院長先生がいるんだぞ!!
「ダメなのよ、サイレント。倒せないのよ」
「え? 直撃だったじゃないですか??」
「本体には当たっていなかったのよ!!」
「本体には当たっていないってどういうことですか??」
「枝と根っこで、ガードしたでごわす!!」
「そうなのよ、枝と根っこが邪魔して、本体まで届かなかったのよ!!」
「なんてこった!!」
ボクが驚くと同時に、ひゅんひゅんと枝の鞭の攻撃。
全方向からたくさんの枝が、ボクたちの逃げ場をなくすように飛び交っているようだ。
「どうするデスか、師匠?? このままだとじり貧デス」
「えっと、どうしようか??」
「ムービング・ウッドは、火力の強い炎魔法で焼き尽くすかー、ムービング・ウッドの体すべてを凍らせる氷魔法で凍らせるのがー、セオリーですねー」
さすがは現役フラットさん。
倒し方を分かっていらっしゃる。
「火力の強い魔法なら、アリアのボルケーノの魔法でここら一帯を焼野原にするデス!!」
意気込むアリア。
そうだ、アリアの魔法・ボルケーノでここら一帯を焼野原にすればいいんだ!!
「ダメなのよ!!」
「ダメってどうしてですか、院長先生??」
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、スタンディング・ウッドから逃げようとするが逃げられない。
院長先生、ホーリィで倒そうとするが、枝と根っこにガードされ、倒せない。