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第5話 院長先生、サイレントとアリアの愛の逃避行を許さない

これまでのあらすじ

 院長先生、絶対にアリアを諦めない。

 サイレント一行、言い合いをしてアーノム・ギトーゲの兵士たちに追いつかれる。

「院長先生、言い合っている暇はないみたいです」

「そうみたいなのよ」

 院長先生は慌ててボクの前に出てくる。


「さっきよりもスピードをあげるよ、アリア」

 ボクは脚に力を入れる。


「あの、師匠、さっきから、アリア、思っていることがあるんデスけど……」

「何? アリア??」

 はやく逃げないといけないのに、なんなんだ??


「空を飛びながら逃げる必要ってあるデスか??」

「え? どういうこと??」


「先ほどから、眼下はずっと樹海デス。樹海の中に入ったらどうデスか?」

「樹海の中に入るだって??」


「そうデス。あんなに大きな空飛ぶ機械に乗っていたら、木が邪魔になって、追ってくることができないのではないデスか??」

「さすがアリア、その手があったか!!」


 そうだよ、院長先生は堕天使の羽があるから飛んだ方が速いかもしれないけど、ボクからしてみたら、走ったほうが速いに決まっているんだ。


 飛ぶことにこだわる必要なんて全くないんだよ。


「ついてきてくれるかい、アリア??」

「アリアはどこまでも師匠についていくデス」


「ちょっと待つのよ、あそこは……」

 院長先生が何かを言いかけたが、アリアの提案に乗ったボクは、すぐさま樹海へと向かった。


「サイレントさんー、アリアさんと二人だけで愛の逃避行ですかー??」


 上空からフラットさんが叫んでくる。

 愛の逃避行だって??

 何を言っているんだ、フラットさんは。


 上をちらりと見上げると、院長先生はボクについてこないで、まだ上空を飛んでいた。


 あれ??

 ボクについてこないの、院長先生??

 ボクたちを覗き込む院長先生と目が合った。


「アリアちゃんと愛の逃避行をするなんて、許さないのよ! アリアちゃんは私が運ぶのよ!! アリアちゃんをこっちに寄越すのよ」

 ボクと目が合った瞬間、院長先生はボク達を追ってきた。


 なんというアリアに対する執念だろうか。

 ボクは院長先生から逃げる形で樹海に降り立つと、すぐさま院長先生が追ってきた。


「さあ、私の腕の中に入るのよ、アリアちゃん」

 院長先生はフラットさんをおざなりに降ろすと、抱擁するがごとく手を広げながらアリアに迫ってきた。


「どうして地上のいるのに、あなたの腕の中に入らないといけないデスか??」

 確かに、アリアの言う通りだ。


「地上に降り立ってしまったのでー、まずはー、アーノム・ギトーゲの兵士たちの出方を窺いませんか??」


 確かにその通りですね、フラットさん。

 ボクは機械の音のする方へと視線を向け、視界に入ってくるのはたくさんの葉っぱの隙間から空飛ぶ機械を覗き見る。


 パラシュート的な何かでここに降りてくるのか、それともここには降下せずに引き返すのか、あるいは、空から炎魔法で木を燃やしてボクたちをあぶりだすなんてことも考えられる。


 できれば引き返して欲しい、いや、むしろ、降下せずに、そのままアーノム・ギトーゲ城まで引き返せ!!


「「「「「樹海に入るなんて卑怯だぞ!! 出てこい、懸賞金」」」」」


『ボクの名前は懸賞金じゃないぞ』というツッコミを我慢して、成り行きを見守る。


 先ほどのボクの心の願いが届いたのか、兵士たちは旋回する飛空艇から声をあげるだけで、誰一人として樹海へは降りてこずに、どこかへと立ち去って行った。


 逃げる場所を空に固執しなかったアリアの作戦勝ちというやつだ。


「とりあえずは逃げ切れたみたいだね。地上に降り立つことを勧めてくれて、本当にありがとう、アリア。はぁはぁ」

 ボクは息を整えながらアリアに話しかける。


「いえいえ、たいしたことじゃないデス」

 謙遜するアリア。

 ここでも謙遜するなんて、本当にできた子だ。


「とりあえずはアーノム・ギトーゲの兵士からは逃げられたのよ。アーノム・ギトーゲの兵士たちからは」


「良かったですよ、逃げきれて。追いつかれるんじゃないかとヒヤヒヤしましたから」


「ただ……」

 何か言いたそうにする院長先生。


「何か問題でもあるんですか??」


 ボクたちが降り立った樹海は昼間だというのに、生い茂る木々のせいで辺りは暗いし、ジメジメ蒸し蒸ししている上に、白い霧まで立ち込めていて気味が悪い。


 だが、しかし、何か問題があるようには思えないんだけど。


「気配察知をしてみるといいのよ」


 院長先生が深刻な顔で勧めてくるので、ボクは言われたとおりに気配察知をする。

 気配察知をした瞬間、背筋がゾッとした。


 周囲には魔物、魔物、魔物、魔物、魔物、魔物、魔物、魔物。

 これから、魔物フェスティバルが始まってもおかしくないくらいの大量の魔物がいた。


「アリア、院長先生、フラットさん、ここ魔物が多すぎます!! 気配をすぐに完全に消してください!!」

 ボクは小声でみんなに話した。


「そんなの分かっているのよ。完全に気配を消していないのは、あなただけなのよ、サイレント」


「そうでしたか……って、何で気配を消していたんですか??」

 そう指摘されて、すぐにボクは気配を消す。


「魔界の入口の樹海に降りるなら、気配を消すくらい当然なのよ」

「そうですよね、魔界への入口の樹海に降りるなら、気配を消すのは当然ですよね……って、魔界への入口の樹海だって??」


「そうデス。ここは魔界の入口の樹海デス。もう少し奥まで行くと、魔界への門番、ケルベロスがいるはずデス」


「よし、魔物に囲まれる前に、帰るか!!」

 ボクは全速力で空動を使って空へ逃げようとした。


「飛んじゃダメデス!!」

 アリアはボクの肩をがっしりと掴んできて、空へ飛ばさないようにしてくる。

「なんで飛んじゃダメなの?? こんなところにいたら、魔物に囲まれちゃうよ」


「師匠、空に逃げたら、追ってきている兵士たちに捕まってしまう恐れがあるデス」

「確かに、兵士たちに捕まる恐れもあるけど、この樹海は魔界への入口付近なんだよね?? こんな危険なところにいられないよ。はやくここから離れようよ」


「ダメデス、師匠!! このまま魔界へ突入して、さくっと魔王を暗殺するデス!!」

「魔王をさくっと暗殺できるわけがないでしょ!!」

 暗殺なんて、そんなお手軽にできることではないんだから。


「分かったデス」

 分かってくれたか、アリア。


「さくっとじゃなくて、普通に暗殺してほしいデス!!」

 うん、全然分かってなかった。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、逃げた先は魔界への入口付近。

 サイレント、アリアに魔王暗殺を依頼される。

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