第53話 サイレント、妙案を思いつく!?
2024/9/5 誤字があったので直しました。(話の内容は変えていません)
これまでのあらすじ
アリア、フランケンシュタインと健闘するも、足の骨を折られる。
サイレント、空中戦で有利に戦おうとするが、すぐにアドバンテージを失う。
ボクがおどおどしていると、ボクの心を察したのか、フランケン・シュタインはにやっと嗤った。
あれ?
あの笑顔、どこかで見たことがあるんだよな……
どこだったっけ??
…………あ、思い出した!!
「もしかして、フランちゃん?」
「おやおや、懐かしい呼び方じゃないかい」
「妹さん、フランケン・シュタインと知りあいだったんデスか??」
「うん、ボクにマジック・バックを教えてくれた子だよ」
「ああ、師匠が性格悪そうだと言っていた人デスね?」
「そうそう、とても性格が悪そうでね。世界を滅ぼすんじゃないかと思っていたんだよ」
ぶちん。
フランケン・シュタインの何かがキレる音がした。
「僕の性格が悪いだって? 何だい、僕を怒らせるためだけに昔話をしたのかい?」
まずい、怒らせちゃった。
「違うよ、ほら、懐かしいと思ってさ。ボク達、幼馴染みたいなものじゃないか」
「小さいころに一度あっただけなのに、幼馴染は言いすぎじゃないのかい??」
「そうですよー、サイレントさんの幼馴染は私のポジションですからー」
フラットさん、話をややこしくするのはやめてほしい。
「師匠がどこかにいるんですか??」
アリア、『サイレント』という言葉に反応してボクを探そうとするのはやめてほしい。
「まあまあ、久々に再開できたんだから、昔話に花を咲かせようよ」
「昔話に花を咲かせるだって?? 花なんか咲かないよ」
フランケン・シュタインは昔話をしたくないみたいだけど、何がなんでも昔話をして、この戦いを和解へと導いてみせる。
「絶対に花は咲くよ。だって、マジック・バックの魔法を教えてくれたこと、今でもボクは感謝しているもの」
そう、この感情にウソはない。
「僕からしてみたら、当時、君にはがっかりさせられたんだよ」
「がっかり? 何で??」
「どうして君にマジック・バックを教えたのか想像できるかい??」
「見当もつかないよ」
「人間界でマジック・バックはポーターの専門魔法とされているのは知っているかい??」
「うん、そうだね」
実際、フランちゃんに教えられるまで、ボクもポーターじゃないからマジック・バックは使えないと思っていたしね。
「でも、実際は魔法の才能があれば、ほとんどの人間が使える魔法だから、そのことをいろいろな人間に伝えようとしたんだ。だが、僕の話をまともに聞くやつなんかいやしなかった」
「それはー、そうですねー。今でも人間界ではポーター以外の人がマジック・バックを使えるなんて言ったら、鼻で笑われるのがおちですねー」
「そんな中、僕の話をまともに聞く男の子があらわれた」
「それが、ボクってこと??」
「そう。そして、その男の子が人間界にマジック・バックの魔法を広めることで、どのように工夫し、どのような社会になるかの実験をしたかったのさ」
「え? ちょっとまって。確か、あの時、フランちゃんはボクに絶対に口外するなって口止めしていたよね??」
「その通り」
「誰にでも使えると伝えたかったなら、なんでボクにマジック・バックのことを口止めさせたの? 普通逆じゃない??」
「人間は約束を守らない生き物だと思っていたからね。あえて、『絶対に秘密だよ』と言えば、必ず誰かに話すと思っていたんだ」
「つまり、ボクが約束を守らずに、誰かに話すと思っていた……ということ??」
「そうだよ。普通の子どもなら、絶対に言っちゃダメなんて言われたら誰かに言っちゃうんだよ。本当のおバカでもない限りね」
「あはは、ごめんね。本当のおバカで」
「そのせいで僕の実験は台無しさ!! 人間がマジック・バックをどんなふうに工夫して使うか見たかったのに!!」
フランケン・シュタインは怒りながら、空動を使い距離を詰めると、ボクのお腹を拳で叩いてきた。
フランケン・シュタインの拳が当たりそうになった瞬間、ボクは空動を使って、上空へと逃げる。
「亜音速まで出せる僕から逃げようっていうのは愚策だと思わないかい??」
ボクの速度についてきたフランケン・シュタインはボクに耳元で囁いた。
「いいや、逃げ切ってみせる!!」
「本当におバカだね!! まあ、バカは死んでも治らないから仕方ないけどね」
フランケン・シュタインはまたもボクのお腹めがけて拳を繰り出してきた。
ボクは空動を使おうとする。
「バカの一つ覚えで、また逃げるのかい?? その程度の速さじゃ、逃げられないってば」
よし、かかった。
ボクは空動を使うフリをして、フランケン・シュタインの拳にダガーで斬りかかった。
「へえ、逃げるフリして反撃もできるってところを見せたいのかい?? でも、遅すぎるよ」
フランケン・シュタインはボクのダガーを避ける。
「残念だね、せめて君に僕以上の早さがあれば勝てるんだろうけどね。でもそれは無理かな」
「どうしてさ??」
「亜音速の僕より速く動くためには、目に見えない空気をなんとかしないといけないもの」
「空気だって??」
「そう、速く動きたくても動けないのは空気が邪魔をしているのさ。そんなことも分からずに、僕より速く動こうとしていたのかい??」
空気が邪魔している……
ん?
ちょっと待てよ……
ボクがフランシュに勝てたのって、もしかして……
うん、きっとそうだよ、そうに違いない。
ボクは空動をやめて地上へと降り立った。
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、フランケン・シュタインがマジック・バックを教えてくれた子だと思い出す。
サイレント、妙案を思いつく。