第52話 サイレント、アドバンテージを失う!?
これまでのあらすじ
サイレント、戦場を城の中庭に変える。
アリア、フランケン・シュタインと戦うがフランケン・シュタインが強すぎる。
アリアもフランケン・シュタインと同様、高速移動をする。
眼では追えない速度だったので、ボクはすぐさま、気配だけでフランケン・シュタインとアリアの位置を確認した。
アリアもフランケン・シュタインもだいたい同じくらいの速度だ。
良かった、アリアが高速移動をするまで、フランケン・シュタインは攻撃をせずに待っていてくれて……
ん?
待ってくれていた??
なんでわざわざアリアが動き始めるまで待っていたんだ??
待たずに攻撃をすればよかったのに……
「ねえ、アリアっち、まさかとは思うけど、僕が今、全速力で動いていると思っているのかい??」
え?
まさか、これ以上に速く動けるというのか??
「瞬動に加えて、風魔法も使っているのに、これ以上速くなるわけがないデス!!」
確かに、アリアの言う通りだ。
「そうだよね、これ以上速く動けるわけがないよね」
フランケン・シュタインは急に足の動きを止めた。
魔力でも切れたのだろうか??
あるいは、高速移動のしすぎで脚が痛くなったとか??
「アリア、チャンスだ!!」
何はともあれ、ボクは大声で叫ぶ!!
「分かっているデス」
アリアは大鎌でフランケン・シュタインに斬りかかる。
「遅い!!」
アリアの大鎌が当たろうとしたその瞬間、フランケン・シュタインはアリアよりもはやく動き、大鎌をかわす。
「何が起こったんだ??」
「風魔法に加えて、炎魔法のエクスプロージョンと、水魔法のスプラッシュ・ウォーターのトリプル詠唱デスか……」
魔眼でフランケン・シュタインの行動を見ていたであろうアリアがつぶやいた。
「その通りだよ、アリアっち!! トリプル詠唱をすることで、亜音速程度までスピードを上げられるんだ」
トリプル詠唱だって??
「トリプル詠唱なんてすごすぎですー。長く冒険者ギルドに務めていますがー、ダブル詠唱でも聞いたことがないですからー」
よくわかんないけど、フラットさんのおかげで、とにかくすごいということは分かった。
「ほら、アリアっち、コピーできるもんならコピーしてみなよ!!」
「そうだよ、アリア!! アリアには魔眼があるんだ。一度見た魔法はコピーできるんでしょ?? コピーしてそっくり返せばいいんだよ!!」
「トリプル詠唱はできないデス」
「なんだ、魔眼って言っても、僕のトリプル詠唱まではコピーできないのか……がっかりだよ。もういいや。興味が無くなっちゃった」
フランケン・シュタインはものすごい速さでアリアに近づくと、太ももを手で押した。
「いやーーーー!!」
太ももを押されたアリアは悲鳴をあげながら、その場でうずくまる。
「大丈夫か、アリア??」
「アリアっち、遅すぎ。僕の速さと比べると、止まっているかのようだったから、アリアっちの右大腿骨を折っちゃったよ!!」
ボクの質問にフランケン・シュタインがこたえた。
大腿骨って、脚の骨だよね??
脚を折られたなら、もう戦闘はできないじゃないか。
「院長先生、ヒールを!!」
ボクは大声で院長先生を呼ぶが、院長先生は城の中だ。
それなら、ボクがアリアを城の中に運ぶか??
いやいや、アリアを運びながらあの速さのフランケン・シュタインの追撃をかわすなんてことは不可能だ。
「さて、そろそろ、その眼を僕にくれないかい??」
「……絶対にあなたになんか……この眼を……あげないデス……」
痛みにこらえながら息も絶え絶えにフランケン・シュタインをにらみつけるアリア。
「ま、アリアっちの意志に関係なく、目は素手でえぐり取らせてもらうんだけどね」
アリアが立ち上がれないことをいいことに、フランケン・シュタインはゆっくりとアリアに近づく。
まずい、このままだと、アリアの眼がえぐられてしまう。
ボクはダガーを手に取り、フランケン・シュタインに攻撃していた。
「邪魔しないでくれるかい、人間。 僕は魔眼に興味があるんだ。君には全然全くこれっぽちも興味がないんだから!!」
ボクの攻撃を避けながらフランケン・シュタインは言う。
「まあ、そう言わずにボクと戦ってよ」
「どうせ、僕の速さにはついてこられずに、一瞬で倒されるのがオチだよ。時間の無駄だと思わないかい??」
「それはやってみないとわからないよね」
ボクは瞬動でフランケン・シュタインとの距離を一気に詰めた。
「瞬動に魔法付与ができないんじゃ、僕のスピードには追いつけないでしょ?? 勝ち目がないと思わないのかい??」
フランケン・シュタインは風魔法と瞬動の複合技でボクのダガーを避けたあと、ボクの体めがけてパンチを繰り出してきた。
「思わないね」
ボクはすぐさま、空動を使い、空へと逃げる。
「へえ、空気を蹴って、空を飛べるんだ。その考えはなかったな……うん、少し興味が出たかも」
「それはどうも」
「でも、少しだけだね。僕のスピードにはついてこれないんだから……って、いけないな、出力を上げすぎた」
ボクの遥か上空からフランケン・シュタインが頭をぽりぽりかきながらつぶやく。
「妹さん、気を付けてくださいデス。フランケン・シュタインは脚に風魔法をかけ、足から炎魔法で空気を爆発させて加速、手から水魔法のスプラッシュ・ウォーターで進む方向調節して疑似的に空を飛んでいるんデス」
痛みに耐えながら、必死に教えてくれるアリア。
なるほど、さっぱり分からない。
でも、分かったことが1つだけある。
「そのトリプル魔法で空を飛ぶのは初めてでしょ??」
「その通りだよ!!」
そうですよね。
見た感じ、空を飛び慣れていない感じだもんね。
よし、それなら、空中に出さえすれば、フランケン・シュタインがたとえどんなに速くても、ボクに分があるぞ!!
ボクは空動で、フランケン・シュタインと距離をとる。
しかし、移動したはずなのに、すぐそばにフランケン・シュタインがいた。
「え? 何でここにいるのさ」
「君の移動術を真似しただけだよ。けっこう難しいね」
「もしかして、君もアリアと同じで魔眼を持っているの??」
「魔眼なんかなくたって、一度見たらなんとなくでできるでしょ」
天才かよ!!
さて、空動のアドバンテージが無くなってしまった。
どうしよう……
忙しい人のためのまとめ話
アリア、フランケンシュタインと健闘するも、足の骨を折られる。
サイレント、空中戦で有利に戦おうとするが、すぐにアドバンテージを失う。