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第38話 サイレント、どうして小麦の値段が下がらないかの理由を知る

これまでのあらすじ

 サイレント、お城で女装がバレそうになる。

 噂を流して一晩経ったが、小麦の値段は下がらない。



「院長先生、小麦の値段が上がっているんですけど、どうしてですか??」


「どうしてかを考えるよりも先に、姫様への報告をした方がいいのよ!!」

「分かりました」

 ボク達は急いでお城へととんぼ返りし、姫様に小麦が値上がりしているという報告をした。


「何っ!? 麦の価格が下がっていないどころか上がっているじゃとっ!? お主ら、ちゃんとウソの噂を流したのかっ!? もしも、ウソの噂を流していなかったら、死刑じゃっ!!」


 普通はウソの噂なんか流したら、捕まって死刑だというのに、ウソの噂を流さないと死刑だなんて、無茶苦茶だなこのお姫様。

 でも、ここは言わぬが花だ。


「流しましたよ!! 町の中は備蓄麦を売る噂でいっぱいです」

 ボクは正直に答えた。


「これだけ噂は流れているのに、まったく値段が下がらないなんておかしいのじゃっ!!」

「確かにそうなのよ。きちんと噂が広まっているか偵察をしてくるのよ、サイレン……コ」


「ボクですか?」

「あなた以外に偵察なんて、誰ができるのよ?」


「アリアもできるじゃないですか」

「それなら、アリアちゃんの代わりにあなたが作戦を考えるのよ??」


「考えないです」

 ボクに頭脳労働は無理なんだからね。


「それなら、すみやかに偵察してくるのよ」

「分かりましたよ」

 ボクは気配を消したまま、町へと向かった。


 …………

 ……


「号外、号外!! 国が備蓄麦を売るらしいぞ!!」

「分かってるよ」「そんなの、常識だぜ!!」「子どもだって知ってるさ!!」


 お城で出された朝ごはんを食べたあと、市場に向かう途中で、ビラをばらまく人がいて、そんなの常識だと揶揄する人がいて、さっきと同じ風景だ。


 気配を完全に消して町を適当に歩き回りながら、噂がきちんと流れているかどうかを確認しているけど、やっぱり国が小麦を売るらしいという噂ばかり……


 ボクは仕方なしにお城に戻ろうとした。


「国が備蓄麦を売るなら、値崩れしないうちにはやく小麦を売らないと……」


 道すがら、大量の荷物を積んだ荷車を先導する貴族のつぶやきが耳に入ってきた。

 あれは……もしかして小麦を運んでいるのか?


 もしかして、噂の効果があったのか??

 お、これなら、小麦の値段が下がるかもしれないぞ。

 気づかれないように、荷車をひくご一行について行くことにした。


「どこに行くんだぞ??」

 荷車を先導する貴族の行先を手を広げて邪魔する人があらわれた。

 遠くにいるから顔が見えないけどどこかで聞いたような声なんだよな……


「今から小麦を売りに行くんだよ!! 国が備蓄麦を売るらしいからな。はやくそこをどいてくれ!!」


「同志よ、良く聞くんだぞ!! もし、本当に備蓄麦を売るんなら、もっと王城は騒がしいはずだぞ!!」

 売りに行く貴族を引き留めた男は王城のほうを指さした。


「確かに」


「全然売る気配がないから静かなんだぞ!!」

「いやいや、密かに売るつもりなのかもしれないじゃないか!!」


「密かに売るのなら、小麦は値崩れをして、市場は大パニックになっているはずだぞ!! だが、喧騒は聞こえるんだぞ??」

「いや、騒がしい感じはしないな」


「それが何よりの証拠だぞ」

「だが、しかし……」


「そんなに疑うなら、小麦の値段を確かめてからでも遅くはないぞ。ただ、小麦の値段は昨日よりも上がっているんだぞ。それはつまり……明日まで持っていれば、もっと高くなるかもしれないぞ」


「それは本当ですか??」

「嘘だと思うなら市場に行って確認するといいぞ。もし、本当だったら、他の貴族にも今売るのは損だと教えてあげるんだぞ」


「分かりました!!」


 なんてこった。

 こうやって、小麦を売りそうな人を止めて、小麦の値段をつりあげていたってことか。


 ボクは急いでお城に戻り、姫様に今あったやりとりを報告した。

「つまり、噂だけじゃ、足りないということじゃなっ??」


「そういうことみたいですね」

 ボクはコクリとうなずく。


「何とか、次の手を考えるのじゃっ!!」

「いや、そんなこと言われても、いいアイディアなんかすぐには出ないのよ」


「はやく何とかしないと、死刑じゃっ!!」

 本当に無茶苦茶だな、このお姫様。


「そう急かされても、出ないものは出ないのよ……」

 ぐー。


 誰かのお腹の音が鳴り響いた。


「もう、院長先生、何もアイディアが出ないからって、お腹の音を出さないでくださいよ!!」

「生理現象だからしかたないのよ」


「なんじゃっ!? 朝ごはんなら城で出したはずじゃっ!?」

「麦の食事がなかったから、あれだけじゃ足りないのよ」


「すみません、院長先生の食欲はあの程度の食事じゃ満たされないんです」

 ボクは平謝りをしておいた。


「とりあえず、サイレント、小麦を出すのよ」

「仕方ないな……どれくらい食べるんですか?」

 ボクはマジック・バックからたくさんの小麦をとり出す。


「それじゃあ、いただきますなのよ」


「院長先生、お祈りは??」

「おやつを食べるときはお祈りを省略しても良いという法律があるのよ」

 サムズアップする院長先生。


「そんな法律、聞いたことないデス」

「食べたい時が食べ時なのよ!! いただきます!!」

 両手で小麦をわしづかみする院長先生。


「食べるのは待つのじゃっ!!」

 生麦を食べようとする院長先生を止めるお姫様。


「人が食べようとしているのに、なんなのよ?」

「お主、どれくらい麦が持っているのじゃ?」


「まあ、それなりにありますよ」

 言いながら、ボクはマジック・バックから小麦を取り出す。


「良い案を思いついたのじゃっ!!」

 お姫様は大きな声を出した。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、どうして小麦の値段が下がらないかの理由を知る。

 姫様、作戦を考える。

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