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第33話 サイレント、悪い冒険者じゃないと主張する

2024/8/13(水)~2024/8/15(金)まで諸事情によりお休みします。

次回は2024/8/16~です。


これまでのあらすじ

 サイレント、誘拐犯と勘違いされる。

 サイレント、女装だけは絶対にバレたくない。





 来てしまった、王城に。

 ボクはこんなところ、来とうはなかった。


 女装がバレてしまったら、捕まってしまうかもしれないのに……


「すみません、緊急の案件があるので、お姫様にあわせてください」

 お城の門では、町民らしい中年男性が門番に頼み込んでいた。


「ダメだ、ダメだ!! 予約をしていないんだろ? 予約をしてからだ!!」

「なんとか、なりませんか?」


「ならないな。これ以上駄々をこねるようなら業務執行妨害で牢屋いきになるぞ!!」

「そんな……」


 とぼとぼと帰っていく中年男性。


 うん、そうだよ。

 いくらフラットさんのコネがあるからとはいえ、予約なしに入城なんかできないだろう。


 今日のところはボク達も門前払いされてしまうに違いない。

 ボクは心の中でガッツポーズをとる。


「すみませんー、お姫様に緊急の案件があるんですけどー、入ってもいいですかー?」

 フラットさんは城門に立ちふさがる門番兵士に声をかける。


「この忙しいのに、姫様に緊急の案件だって? 予約はしてあるのか?」


 城の門番は眉間にしわを寄せて、ボクたちをにらみつけてきた。


「予約はしていないですねー」

「予約をしていない……だと? 予約もせずに姫様に謁見しようというのか?」


 門番兵士は凄みを増して尋ねてくる。

 今にもボクたちに攻撃してきそうな雰囲気だ。


「そうですねー、緊急の案件ですからー」

 フラットさんはいつものように和やかに返答した。


「そうでしたか。緊急の案件なら、そういう時もありますよね。どうぞ、どうぞ、お入りください」


 門番兵士はうやうやしく頭を下げ、丁重にボクたちを出迎えてくれた……って、飛び入りで来たのに、入っていいんかい!!

 こっちは入れないことを期待していたのに……


「どうしたんですかー、サイレンコさんー、そんなに肩を落としてー」

「いえ、なんでもないです」


「そうですかー。迷子にならないように、ちゃんとついてきてくださいねー」

「分かりました」

 ボクは肩を落としながら、フラットさんについていく。


「お城に入ったら、敵意を示さないためにも、スキルは絶対に使用しないでくださいね」

「分かりました」


 ボクは気配察知をやめて、促されるまま、フラットさんの背中だけを見ながらついていった。

 どれくらい歩いたかは覚えていないが、いつの間にかフラットさんの脚が止まっていたので、ボクも歩みを止めた。

 どうやら、ここが謁見室のようだ。


「直に王族の方がお越しになるかと思うのでー、地面に右ひざをついて待っていてくださいー」


 ボクは言われたとおりのポーズをとってから思う。

 どうして王族ってのは、お客様用の椅子を用意してくれないのかと。

 自分たちは玉座にふんぞり返っているくせに。


「姫様のおーなーりー」

 どこかからか男の声が響いたかと思うと、カツカツというハイヒール音が響き渡ったが、すぐにその音はやんだ。


「面をあげるのじゃっ!!」


 そう命令されたので、ボク達は顔を上げると、水色のドレスを着た女性が玉座にふんぞり返っていた。

 見た目からして、ボクやフラットさんと同じくらいなのに、とても偉そうだ。



「ルゥ姫、今日もご機嫌麗しくー……」

「良いよい、フラットっ!! そういった堅苦しい正式な挨拶はっ!! それよりも、お前のそばにいる者は誰じゃっ?」

 まるでボクたちを汚物扱いしているかのように、玉座からこちらを見下してくるお姫様。


「こちらは、カバッカ町の孤児院で院長先生をしているインフィニティさんですー」

 隣にいた院長先生を紹介し始めるフラットさん。


「初めまして、インフィニティと申します」

 フラットさんがコクリとうなずいたのを確認してから院長先生は自己紹介をはじめ、最後に会釈をした。


「ふむっ、憶えておいてやるのじゃっ!!」

 ボクも院長先生の自己紹介の仕方を覚えておかないといけないぞ。


「そして、インフィニティさんの隣にいるのが、冒険者のアリアさんですー」

「初めましてデス」


 フラットさんがコクリとうなずいたのを確認してから、アリアも院長先生に倣って会釈をした。


「ふむっ、可愛いのじゃっ!!」


 きっと次はボクの番だ。

 院長先生やアリアと違って、ボクは礼儀なんか学んでないけど、真似をすればいいのだから楽勝だ。


「そして、最後に冒険者のサイレント……じゃなかった、サイレンコさんですー」

 手の平をボクの方に向けて、丁寧にボクを紹介してくれるフラットさん。


「まさかっ、この者がっ!?」

 コクリとうなずくフラットさん。


「ただいま紹介にあずかりました、冒険者のサイレンコです。アサシンをしています」


 ボクは院長先生とアリアがやったように、最後に軽く会釈をした。

 ふふふ、非の打ちどころがない挨拶とはこのことだ。


「妾はそなたが嫌いじゃっ!!」

 えー!?


 ここは『かわいいのじゃっ』……とかなんとか言って、ボクを褒めるのが普通じゃないの?

 どうして、ボクのことを嫌いだ宣言するのさ?


 もしかして、ボク、自己紹介に失敗したのかな?

 いやいや、院長先生とアリアの自己紹介を完璧にまねてみせたんだから、失礼はなかったはずだ。


 つまり、他に原因があるに決まっている。

 考えろ、考えるんだ、サイレント。


 ……あ、そっか。

 分かったぞ。


 きっとお姫様はボクの名前が全国指名手配されている悪い冒険者と名前が似ているから、ボクのことを誤解しているんだ。


 ここは、ボクが無害だということを主張しなくては。


「ボクの名前はサイレンコだよ。全国指名手配されているサイレントって冒険者と関係ないよ。つまり、ボクは悪い冒険者じゃないよ!!」


 明るい声で笑顔を作り、ダブルピースで無害を主張する。


「分かってるのじゃっ! あなたが悪いんじゃなくて、最悪の冒険者ってことくらいっ!!」


「そうそう、ボクは悪いんじゃなくて、最悪の冒険者で……って、違うから! ボクは最悪の冒険者なんかじゃないから!!」


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、お城でお姫様に謁見する。

 サイレント、悪い冒険者じゃないと主張する。



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