第31話 サイレント、解決策を考えつく!?
これまでのあらすじ
サイレント、どうして小麦の値段が高くなったのか院長先生に説明を求められる。
サイレント、どうして小麦が高くなったのか理由を知る。
「それなら何が悪いのさ?」
「最初から、買い占めをした貴族たちが悪いのよ」
そうだった。
「そもそも、何で貴族たちは買い占めをして小麦の値段を上げたんですか?」
「それは自分たちが良い思いをできるからなのよ」
「どうして良い思いができるんですか? 小麦の値段が上がれば、結局食費が上がるんだから、貴族も損をするのではないですか?」
「食費が高くなることなんて、貴族にとったらたいした損じゃないのよ」
「でも、損はしてるんですよね?」
「損以上に得の方が大きいのよ」
「そこが分からないんですよ。どうして、得なんですか?」
「小麦の値段が上がれば、お金か土地か労働力が手に入るからなのよ」
「どういうことですか?」
「この国では、お金のない人は貴族に借金をするしかないのよ」
「あ、さっきの人みたいにですね」
「借金をすれば必ず発生するものと言えば、なんなのよ?」
「利息です!!」
「利息とはなんなのよ?」
「借りたお金以上にお金を支払わないといけないことでしょ?」
「まあ、ほぼ正解なのよ」
そりゃあ、そうだよ。
以前、騙され続けて利息を支払い続けていたんだから。
……って、胸を張れる記憶じゃないな……
思い出したくもない苦い記憶だ。
「つまり、利息つき借金の返済額で、貴族はお金を得ることができるってことですね」
「そういうことなのよ」
「それは納得しましたが、土地と労働力はどうやって手に入れるんですか??」
「もしも、毎月の返済額が返せなくなってしまった場合、貴族たちは土地または労働力として差し出す契約を結んでいるのよ」
「あ、さっきの借金男とナ・リキンのやりとり!! 確か、お金が払えなければ、土地を差し出すか、子どもを差し出すか決めろって言ってましたね」
「そうなのよ。土地も労働力である子どもも相場よりも安値で買いたたかれ、借金を返すことになるのよ。そうすれば、貴族たちは大儲けを出すことができるのよ」
「なんて恐ろしいシステムなんだ!!」
お金を返せば利息でもうけられ、もしも、お金を返さなければ、土地や労働力である子どもを安値で買い取って大儲けするなんて……
「月々の返済でお金を工面できればいいけど、もしも、土地や労働力である子どもで支払ったとしたら、このシステムの恐ろしさはまだ序章なのよ」
「え? 借金を返せば、問題は解決じゃないの?」
「違うのよ。もしも、農地を持っていた農民が土地を売った場合、来年から悪循環に陥るのよ」
「悪循環?」
「そうなのよ。自分の農地がなくなるわけだから、土地を貴族から借りることになるのよ。そうなれば、自分の所有していた土地を貴族の言い値で借りることになり、今よりさらに貧乏になるのよ」
「なんて恐ろしいシステムなんだ」
「それなら、土地じゃなくて、労働力として子どもを差し出せばいいじゃないか」
「そっちは悪循環よりもひどい、最悪な結果になる可能性が高いのよ」
「最悪な結果だって!?」
「その通りなのよ。貴族に差し出された子どもに未来はないのよ。奉公先で一生過酷な奉公することになるのよ。一生親には会わせず、過酷な労働に耐え、恨むなら親を恨めと教えられることになるのよ。実際に親を恨んでナイフで刺した事件もあるのよ」
「なんてことだ……」
ボクは開いた口がふさがらなかった。
「以前にも神様がいなくなったときに似たようなことがあったんですよね? その時はどうやって解決したんですか?」
「あの時は、3年間大混乱が続いたのよ」
院長先生はボクのほうを見ずにこたえた。
「え? つまり、借金で首が回らなくなった農民たちは、土地を手放すか、子どもを奉公に出して、耐え続けなければいけなかったってことですか?」
「そうなのよ。奉公に出すにはあまりにも幼い子は、貴族にも引き取られず、孤児院に預けた人もたくさんいたのよ」
院長先生はボクに憐みの眼を向けてきた。
「それじゃあ、今回も時間でしか解決できないんですか?」
「そういうことなのよ」
悔しそうに唇を噛む院長先生。
「あ、そうだ、ニック村でたくさんの小麦粉をもらったから、困っている人にあげれば助けられるじゃないか!!」
「サイレンコさん、小麦を持っているデスか?」
「持っているよ。これはニック村でもらったんだ」
「師匠と同じデスね」
あ、しまった、今のボクはサイレンコだったんだ……
「あ、これは、アーノム・ギトーゲに入る前に、サイレント兄さんからもらったものなんだよ」
「そうだったんデスね」
「それよりも、この小麦を農民に寄付すれば、助けられますよね?」
「それはいい考えなのよ……と言いたいところだけど、それじゃあ、根本的な解決にはならないのよ」
「どうしてですか?」
「今あなたが持っている小麦粉でお金に困っている全員を助けるのは難しいのよ」
あ、そっか。
この人と似たような境遇の人は多くいるんだ。
ボクの持っている小麦だけじゃ足りないのか……
「でも、助けないよりは助けた方がいいと思うんですよ」
「仮にあなたの持っている小麦で助けられる人だけを助けるとして、どうやって、助ける人を選ぶのよ?」
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、小麦の値段があがることで、貴族の利益が半端ないことを知る。
サイレント、解決策を考える。