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第25話 サイレント、アリアにウソをつく

これまでのあらすじ

 サイレント、女兵士に疑われまくる。

 サイレント、女装をし続ける。



 今、まさに気配を消して、誰にも見つからずに過ごす予定だったのに……

 タイミングが悪いと嘆いていても、事態は好転するわけじゃない。


 何とかごまかさないといけないぞ。


「あ、ちょうちょ!!」

 ボクは蝶々を追いかけるフリをして、フラットさんと距離を取り、他人のフリをする。


「あれ? 師匠は一緒じゃないんデスか?」

 なんて質問をするんだ、アリアは。


 ここでフラットさんが正直に答えたら、一発で女装していることがばれてしまう。

 お願い、女装していることを言わないで。


 ボクは蝶々を言追いかけるフリをして、アリアの背後に立ち、アリアの死角から腕でバツ印を作って、フラットさんに言っちゃダメだと必死に伝える。


「そうですねー。一緒というかー、一緒じゃないというかー」

 ボクが腕でバツ印をしているのに気づいたフラットさんがあいまいにこたえてくれた。

 ありがとう、フラットさん。


「どっちなんデスか?」

「どっちでもないといいますかー」


「くんくん、あれ? 近くで師匠の香りがするデス」

 アリアに言われ、ボクは自分で自分のにおいをかいでみる。


 うん、全然分かんないや。

 いや、そんなことよりも、ここはそっと立ち去ろう。

 抜き足差し足でその場から離れようとした瞬間である。


「ちょっと、そこのあなた、待つデス」

 アリアはボクを引き留めた。

 ああ、なんという嗅覚なんだ、アリアは。


「ボクですか?」

 ボクは振り返らずに、あえて裏声の高い声を出してこたえた。


「そうデス、あなたデス」

「ボクに何か用ですか?」

 アリアはボクの正面に回り込んでボクの顔を覗き見ようとしたので、とっさにカツラで顔を隠しながらこたえた。


「あなた……」

 言いながら顔を近づけてくるアリア。

 そんなに接近されたら、ボクが女装していることがバレちゃうよ。


「なんですか?」

「あなたから師匠の香りがプンプンするデス」


 香り?

 いやいや、ボクはカサブランカの香水をしているんだよ?

 ボクの香りは消えているはずだけど……


「ああ、それは、きっと、ボクが師匠の妹だからじゃないですか?」

 とっさに姑息なウソをついてしまった。

 ボクに妹なんかいないのに。


「ああ、だから、あなたから師匠の香りがプンプンしていたんデスね」


 信じた。

 アリアが信じてくれた。

 なんて純粋なんだ。


「そうなんです」

「師匠に妹がいたというは初耳デス。お名前はなんというんデスか?」


「サイレン……コです」

『ト』と言おうとしてしまったので、慌てて最後の文字だけ変えた。


「へー、サイレントに妹がいるなんて初耳なのよ」

 こちらの顔を覗き込んでくる院長先生。


「それは……隠し子ですからね」

 いたたまれなくなったボクは視線を空の方へと向けながらこたえた。


「ああ、隠し子だったから気づかなかったのよ」

 笑いをこらえながら、わざとらしく大げさに、ぽんと手を打つ院長先生。

 うん、これは絶対にボクが女装していることがバレているね。


「サイレンコさんデスね。アリアはアリアというデス」

「うん、知ってる」


「アリアとは初対面デスよね? 何でアリアのことを知っているデスか?」

 アリアは不思議そうに小首をかしげてきた。


「あ、いや、うん、お兄さんから話は聞いているからね」

「師匠はアリアのことをどんな風に話していたデスか?」

 目を輝かせて聞いてくるアリア。


「どんな風にって、そりゃあ、誇れる弟子だって話していたよ」

「そうなんデスね」


「どうしてそんなに肩を落としているの?」

 褒めたのにアリアが肩を落としたので理由を聞いてみる。


「いえ、何でもないデス。それよりもサイレンコさん、師匠を知りませんか?」

「ああ、今は気配を完全に消してアーノム・ギトーゲの町に隠れているんだよ」

 女装していることを気づかれたくないために、ボクはウソをつく。


「指名手配されているのだから、堂々と歩くわけにはいかないデスよね」

 アリアは素直に納得してくれた。


「そうですね」

「それなら、気配察知で師匠を探すデス!!」


 いやいや、見つけようとしても見つかるわけがないんだよ。

 だって、ボクはアリアの目の前にいるんだもの。


 気配察知をして、アリアの魔力を無駄にさせたくないし……

 だからといって、ボクがサイレントなんだ……とカミングアウトするわけにもいかない。


「完全に気配を消しているので、弟子のアリアちゃんでも分からないだろうと兄は言っていました」


 ボクはこの町のどこかで完全に気配を消しているということにしてしまおう。

 そうすれば、アリアも諦めるだろう。

 我ながらナイスな作戦だ。


「アリアの気配察知でも見つけられないデスか?」

「ええ、そう言ってましたね」


「絶対に見つけてみせるデス」


 頬を膨らますアリア。

 ありゃりゃ、ボクの作戦がアリアのやる気スイッチを押してしまったみたいだ。

 ……逆効果!!


「くんくん、におうデス」

「兄は近くにいるからね」

 ボクはフラットさんからもらっていたカサブランカの香水を自分に振りまきながら答えた。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、女装したことを隠したくて、逃げ出そうとする。

 アリア、サイレントを逃がさない。

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