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第23話 サイレント、指名手配されていることがフラットさんにばれる。

これまでのあらすじ

女兵士、最近忙しいとフラットさんに愚痴をこぼす。

サイレント、墓穴を掘って、ミスをするがウソでカバーする。




「カサブランカの香水をつけているのは、もしかして枯れてしまったカサブランカの哀悼の意を捧げるためですか?」

「そうなんです。哀悼の意を捧げていたら、なんだか悲しくなってしまって……おいおい……」

 ボクは泣きまねをする。


「『じょそう』した意味がなかったなんて言うので、私はてっきり、女装して入国しようとしているのかと思ってしまいました」

「あはは、そんなわけないじゃまいですか」


 その通りだよ!!

 ……言えないけど。


「そうですよね、こんなに可愛い方が女装なわけないですもんね」

「あははは、そうですよ、こんなに可愛いのに、男のはずないですよ」


 おえー、自分で言っていて気持ち悪くなった。

 本当は女装しているんだもの。


「やはり、詳しい入国審査は必要なさそうですね」

「ちょっとー、もっとしっかりと審査してくださいよー」


 そうだよね。


 フラットさんの後輩がいるんだから、しっかりと入国審査しないといけないよね……って、いやいや、ボク、しっかりと入国審査なんかされたら、絶対にボロが出て、偽物だってバレちゃうよ。


 今だって、女装したのがバレそうだったし。

 なんでそんなボクが疑われるようなことを言ったの、フラットさん。

 まさか、ボクを入国させる気がないんじゃないか?


「ふふふ、もしも、偽物を連れてきたのだとしたら、しっかりと審査してほしいなんて言うわけないじゃないですか」


 笑顔でボクを疑おうとしない女兵士。

 なるほど、これは、フラットさんの作戦だったというわけか。


 確かに、もしも仮に、フラットさんが連れてきた後輩が本人じゃなかったら、門番にここにいる後輩は本人だと主張して、さっさと入国させろ……ってごねるよね。


 でも、それをしていないということは、潔白の証拠だということですね?

 さっきは疑ってごめんなさい、フラットさん。


「それは分からないですよー。指名手配犯を連れてきて、きちんと入国審査しろと言う可能性もありますよー」


 実際は本物のフラットさんの後輩じゃなくて、指名手配犯のサイレントだからね。

 ……って、ボクが指名手配されているのを知らないとはいえ、その話題はまずいよ、フラットさん。


「ふふふ、指名手配犯って、タイムリーな話ですね」

「タイムリーですかー?」


 あ、この話の流れは非常にまずい。


「ええ。今日、王様がフランケン・シュタインという魔物とサイレントという青年を全国指名手配したんですよ」

「へー、そうなんですねー」


 うなずきながら、こちらを見てくるフラットさん。

 どうして教えてくれなかったんだとういう表情だ。


 ボクはフラットさんがこちらを見ていることを気づかなかったことにして、フラットさんから目をそらした。


「指名手配された人って、身分を偽って密入国するから、警戒しなければならないと言われたところだったんですよ」

「それならー、なおさらー、私の後輩を調べてほしいですねー」


 ボクが目をそらしたせいだろうか?

 フラットさんはボクをもっと調べろとおっしゃった。


 ごめんなさい、フラットさん。

 隠すつもりはなかったんです……というわけではなく、できれば一生、墓場まで隠し通そうとしていました。


「フラットさんの紹介する人が、密入国なんかするわけないじゃないですか」

 本当にフラットさんは信頼されているんだな……


「そうですよ。ボクは全然怪しくないですよ」

 ボクは胸を張った。


「果たして本当に怪しくないのでしょうか?」

 女兵士はボクに向かって言ってくる。


「え?」


「最初、あなたの声は高かったのに対し、今のあなたの声はまるで男の声のように低くなっていますから」


 先ほどとはうってかわって、ボクを疑うような目で見続ける女兵士。

 まずい、この女兵士、ずっとボクのことを観察していたのか……



「そんなことないですよ……ごほっごほっ!!」

 ボクは高い声を出そうとして、最後の方はむせてしまった。


「今、高い声を出そう無理としてませんでしたか?」

「そんなことないですよ!!」

 今度は高い声を出せたぞ。


「本当ですか? ここを通る貴族連中の知り合いは、貴族にポーターであることを秘密にして、貴族に近づき、密輸をしようとする輩が多いんですよね。あなたもその輩と同じで、フラットさんにポーターであることを隠しつつ、ここを通ろうとしているんじゃないですか?」


「ボクは、ポーターじゃないですよ」


 マジック・バックは使えるけど、ボクの本当の職業はアサシンでポーターじゃないからね。


「ウソを見分けることができる私に対してウソをつこうとしても無駄ですよ」


 え?

 もしかして、この女兵士、嘘発見調査官でもあるの?


 やたらなウソをつけば、すぐにバレちゃうってこと?

 それじゃあ、さっきついた女装のウソもすべてバレてるってこと?

 ボクは冷や汗が止まらなかった。


 ボクはチラリとフラットさんの方を見る。


「ウソはついてないですよー、彼女は私の後輩ですからー」


 あれ?

 フラットさんは普通にウソをついている。

 噓発見調査官の前でウソをついてもすぐにバレてしまうのに……


「そうですよね、フラットさんが言うなら間違いないですよね」


 あれ?

 また、フラットさんのウソがまかり通っている……


「それじゃあ通してもらえますか?」

 ボクはもみ手をしながらうかがう。


「良いですよ……と言いたいところですが、手荷物検査とボディチェックを最低限しないといけないですね」

 ……って、ボディチェックがあるの?


「私の後輩なのでー、お手柔らかに頼むのよー」

「フラットさんもですよ」

 フラットさんにくぎを刺す女兵士。


「えー、私ー、私密輸なんかしないですよー」

 フラットさんは頬をふくらませる。


「一応、念のためです」

 女兵士はそういいながら、フラットさんの体を服の上からぱしぱし体を叩き始め、簡単なボディチェックを始めた。


 次はボクの番だけど、大丈夫かな?


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、指名手配されていることがフラットさんにばれる。

 サイレント、女兵士に怪しまれる。

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