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第18話 サイレント、負傷する

これまでのあらすじ

 サイレント、アリアと院長先生とフラットさんが三角関係だと知る

 サイレント、フラットさんにウサギ肉を渡す



 そいつって、フラットさんのことだよね?

 フラットさんに料理させることの、何がダメだというんだろう?


 ボクは院長先生の方を見てからフラットさんの方を振り向くと、『ぱんっ』と乾いた音。

 ウサギ肉が爆発したかのようにはじけ飛んだかと思ったら、目の前に『何か』が飛んできた。


 ボクはとっさに首を横に向けて、飛んできた『何か』を避ける。

 ふう、ボクじゃなければ避けられなかったね。


「師匠、包丁が頭を刺さって血が噴出しているデス」

「なんだって!!」


 避けれていなかった。


「ヒール!!」

 院長先生がボクの頭部に回復魔法をかけてくれた。


「治りますか?」

「当然なのよ」


「あれー? おかしいですねー?? さっきまで手の中にあった包丁がなくなっていますー」

 不思議そうにフラットさんはじっと手を見る。


「それはあんたに料理の才能が、まったく、全然、これっぽっちもないからなのよ」

「うー」


 うなだれるフラットさん。

 こんなフラットさんは初めて見た。


 それにしても、意外だ。

 フラットさんに料理の才能が全くないなんて。


 何でもそつなくこなすタイプだと思っていたのに。

「そんなことないデス。お姉様はちょっとだけ料理をするのが苦手なだけデス。これから一緒に料理を覚えて才能を開花させるデス」

 気を遣ったアリアはフラットさんの手を取る。


「アリアちゃんー。私に料理を教えてくれるのですかー」

「もちろんデス」


「そいつは既に成長期を過ぎているから、料理の才能は1ミリも伸びないのよ。だから教えるだけ時間の無駄なのよ、アリアちゃん」

「成長期を過ぎているだって? いやいや、ボクとフラットさんは同じ年齢ですよ!?」


 ボクの記憶が確かなら、フラットさんはボクと同じ年で、同じ年にスクロールを一緒にもらったはずだ。


「こいつがサイレントと同じ年齢だなんてことくらい、知っているのよ」


 そっぽ向く院長先生。

 あ、分かったぞ、これは嫉妬だ。


「アリアとフラットさんが仲良くなると、自分がアリアに構ってもらえなくなるから、才能がないと言って、アリアとフラットさんが仲良くならないように仕向けているんですね?」

 ボクはアリアとフラットさんに聞こえないように、院長先生の耳元でささやいた。


「そういうのじゃないのよ!!」

 院長先生は顔を赤くしてむきになりながら、小さな声で叫んだ。

 この反応、おそらくボクの考えが正解だろう。


「分かりましたよ、院長先生。ボクは院長先生の味方ですから」

「きっと、全然分かっていないのよ」


「分かっていますってば……アリア」

 ボクは小声でそう言い切ってから、大声でアリアを呼んだ


「なんですか、師匠?」

「フラットさんに料理を教えるのもいいけどさ、そろそろアーノム・ギトーゲに入る算段を考えないといけないよ」


「あ、そうだったデス」

 そう、アリアの意識をアーノム・ギトーゲにどうやって密入国するかに意識を向ければ、フラットさんに料理を教えようとはしないはずだ。


「皆さんはアーノム・ギトーゲに行く途中ですかー?」

「途中といえば、途中ですね」


 うん、ウソではないよね。

 今、ボクたちはアーノム・ギトーゲに入ろうとしているんだし。

 ボクが指名手配されているから、堂々と入れないけど。


「それならー、私もご一緒してもよろしいでしょうかー?」

「ダメなのよ」「いいデスよ」

 正反対の意見を出す院長先生とアリア。


「あらー、アリアちゃんは良くてー、インフィニティさんはダメなんですねー。賛成・反対が1票ずつですねー。それなら、最終決定はサイレントさんに決めてもらいましょうー」


「きっちりと断るべきなのよ、サイレント」「いいえ、お姉さまを仲間に入れるべきデス!!」


「えっと、どう答えればいいのかわからないんですが……」

「何で即答してくれないんですかー? サイレントさんは私のことが嫌いになってしまったんですかー?」


 目を潤ませながら、上目遣いでこちらを見つめてくるフラットさん。


「嫌いになったわけではないのですが……」

「それなら、一緒に連れて行ってくれるってことで良いですかー?」


 フラットさんと行きたいんだけど、ボクが指名手配されているから、一緒には行けないんだよ。

 言いたいけど、そこまで言っていいものか……


「えっと、フラットさんが好きとか嫌いとかじゃなくて、とある理由でボクがアーノム・ギトーゲに入れないかもしれないので、別行動をしたほうがいいんじゃないかと思っているんです」

 ボクは話をあいまいにしながらこたえる。


「とある理由ですかー?」

「サイレントが門番に目を付けられちゃったのよ。それでどうやって密入国するかを考えていたところなのよ」

 さらっとウソをつく院長先生。


「密入国なんて悪いことはダメデス!!」

「そうですねー、密入国はいけないことですものねー」

 フラットさんはアリアの意見に同意する。


「さすがはフラットお姉さまデス。どこかの誰かさんとは大違いデス」

「本当に、どこかの誰かさんとは大違いなのよ」


 ボクの方を見てくる院長先生。


 ん?

 密入国を提案したのは院長先生だよね。


「サイレントさんー、密入国を考えていたんですかー?」

 あれ?

 なんで、ボクが密入国を考えている首謀者になってるの。


「違うんですよ、フラットさん」

「分かっていますよー、サイレントさん」


 フラットさんはじっとこちらを見つめてきた。

 ボク、この眼、知ってる。


 ボクが騙された時に向けてくる憐みの眼だ。


「だから違うんですって!! 誤解ですからね」

 ボクは必死に訴えた。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、フラットさんの料理の巻き添えを食らって負傷する。

 負傷したサイレント、院長先生の魔法で回復する。

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