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第15話 サイレント、アーノム・ギトーゲに入る方法を思いつく!?

これまでのあらすじ

 サイレント、光より速い速度で走っても、過去には行けずにあの世に行くことを知る。

サイレント、密入国するか悩む。




「アーノム・ギトーゲに入国するにしてもしないにしても、考える時間はあるのよ。ゆっくり考えればいいのよ。まずは、剥いだウサギの皮を焼いてしまうのよ」


「冒険者ギルドで売らないんですか? ウサギの皮なら、冒険者ギルドに売ればそれなりの値段になりますよ」


「誰が冒険者ギルドに売りに行くのよ」

「ボクがいるじゃないですか」


「あなた、全国指名手配されている自覚あるのよ?」

「あ、そうだった」


「捨てるならアリアがもらっていいデスか?」

「いいけど、どうするの?」


「それは、秘密デス」

 そう言いながら、アリアはウサギの毛皮をマジック・バックに収納しはじめた。


「あ、分かった」

「何が分かったデスか?」


「アーノム・ギトーゲ国に入る方法だよ」

「どうするデスか?」


「アリアがマジック・バックを唱えて、ボクがマジック・バックの中に入ればいいんだよ。そうすれば、検問を通り抜けられる」

「さすが、師匠デス」

 目を輝かせるアリア。


「ちょっと、待つのよ。マジック・バックは、神様が亡くなってから新しく作り出された魔法で、歴史が浅く、まだ詳しく解明されていない魔法で私でも分かっていないことの方が多いのよ」


「つまり、マジック・バックの中に入るのは危険だということですか?」

「そうなのよ」

 こくりとうなずく院長先生。


「分かっていないことが多いなら、ボク達が解明すればいいんです!!」

「あなたにできるのよ?」


「やってみせましょう」

「不安でしかないのよ……」


「すでに解明されていることを教えてくれませんか?」

「マジック・バックの中には酸素がないはずだといわれているのよ」

「酸素がないなら、長くいるのは難しいデスね」


 院長先生の話を聞いて、うなずくアリア。

 うん、ボクにはさっぱり分からない。

 酸素って何? おいしいの?


「酸素なんかなくても、大丈夫ですよ」

 とりあえず、酸素を知っているフリをしておこう。


「デスが、師匠、本当にマジック・バックの中に酸素がないなら、入らない方がいいデスよ」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、アリア」

 酸素がないと何がいけないのか良く分からないけれども、多分大丈夫だ。


「分かったデス」

「分かってないのよ。酸素がないってことは、息ができないってことなのよ」

 何だ、酸素がないってことは息ができないってことなのか。


「大丈夫ですよ。ボク、暗殺をするために、息をせずに、魔物を待ちかまえるのなんかしょっちゅうありますし、水の中にずっと潜ってられますもん」

 ボクの肺活量を舐めちゃいけないよ。


「それはどのくらいの時間なのよ?」

「愚かな質問ですね、院長先生」

 数が分からないボクに、時間を聞くなんて。


「答えになっていないのよ。質問に答えるのよ」

 院長先生はうりうりとボクのほっぺにひとさし指を突き立ててきた。


「数が分からないボクが、時間が分かるわけないじゃないですか」

 アリアに聞こえないように、院長先生に耳打ちする。


「それなら、今、計ってあげるから、大きく息を吸って、鼻と口をつまむのよ」

「分かりました」

 ボクは院長先生に言われた通り、息を止めた。


 …………

 ……


「ぷはーっ」

 はぁはぁ、死ぬかと思った。


「さすが師匠デス。約10分も息を止め続けられるなんて」

「あなた本当に人間なのよ?」

 院長先生はあきれながらボクに尋ねてきた。


「ボクは人間ですよ。それよりも、これだけ息を止めることができるんですから、マジック・バックの中に入っても大丈夫ですよね?」

 良くは分からないけど、だいぶ息を止めたんだし。


「もちろん、おすすめしないのよ」

「そうですよね、こんなに息を止めたんですから、入っても大丈夫ですよね……って、おすすめしないって今言いましたか?」


「言ったのよ」

 にこっと笑う院長先生。


「どうしてですか? ボク、こんなに頑張ったじゃないですか」

「なぜなら、マジック・バックの中と外では、時空が歪んでいて、時間の進み方が異なると考えられているからなのよ」


「マジック・バックの中と外で時間の進み方が違うってどういうことですか?」

 そういう難しいことは全然分からない。


「つまり、マジック・バックの外で1秒経つと、マジック・バックの中では1日経っているという学者がいるから、最低でも1日は息を止められないなら入らない方が良いのよ」

「なるほど、1日ですか……って、1日!?」


 1日って、朝から晩までだよね?

 そんなに息を止められるわけないじゃないか。


「そうなのよ」

「その説は違う気がするデス」


「あら? どうしてなのよ?」

「マジック・バックは物を腐りにくくするデスよね?」

「そうなのよ」


「それなら、外が1秒経つ間に、マジック・バックの中では1日経っていたら、道理が合わないデス。どうして、マジック・バックの中に食べ物を入れても腐りにくいということデスか? 外よりも中のほうが時間の進みが速いなら、すぐに腐ってしまうはずデス」


「それは、マジック・バックの中は、空気がなくて真空状態になっている上に、温度変化もなく、腐敗菌が繁殖しないから、腐らないと予想されているのよ」


「なるほど、確かに筋は通っているデス」

「もちろん、逆に、マジック・バックの中に食べ物を入れておくと、腐りにくいはずだから、外では1日経っていても、マジック・バックの中では1秒も経っていないと予想する学者もいるのよ」


「どちらもあり得るということデスね?」

「そういうことなのよ」

 どういうことなんですか?

 まったく、ついていけないんですけど。


 もしかして、院長先生は、難しい話をして、ボクを煙に巻こうとしているつもりなのか?

 もしも煙に巻こうとしているなら、是が非でもマジック・バックの中に入ってやる。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、マジック・バックの中に入って密入国しようとする。

 サイレント、マジック・バックでの密入国は院長先生に無理だと言われる。


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