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第11話 サイレント、壁に気づく

これまでのあらすじ

 サイレント、ニージュー・チョーボーに捕まる。

 サイレント、勝ち宣言をする!?




 えーーっ!?


 格好いいことを言って、立ちさろうとしたら、ニージュー・チョーボーの腕から大量に血が噴き出しているんですけど……


「何が起こったんだ?」


 自分の腕を見ながらボクに尋ねてくるニージュー・チョーボー。

 こっちが訊きたいよ!!


 おっと、ここできょとんとすると、ボクが何もしていないことがバレてしまうぞ。

「ふふふ……」

 ボクは不敵に笑ってみせた。


「なるほど、サイレントの奥の手ってわけか……」

 いや、全然そういうわけではないんだけど……

 まあ、そういうことにしておこう。


 ニージュー・チョーボーに影がかかる。


 ……ん?

 いや、違うぞ。

 ニージュー・チョーボーに影がかかっているんじゃなくて、ニージュー・チョーボーの後ろに壁ができたんだ。

 壁の影がニージュー・チョーボーにかかっているんだ。


 あんなのあったか?

 いや、さっきまであんな壁はなかったはずだ。


 もしかしたら、あの壁がニージュー・チョーボーに何かしたのかもしれないぞ。


「ニージュー・チョーボー、後ろ、後ろ!!」

 ボクはニージュー・チョーボーの後ろを指さす。


「ふん、そうやって、後ろを注目させて、攻撃する気だろう、お前の魂胆は分かっているんだ」

 流血しながらも、ボクから目を離そうとしないニージュー・チョーボー。


「いやいや、本当にニージュー・チョーボーの後ろにいつの間にか壁があるんだって!!」

「そんなわけないだろ!!」


「まったく、わいが来たのにも気づかんとは、ほんまに愚かやな」

「壁がしゃべった!?」


 ボクは瞬きをして、もう一度低くしわがれた声でしゃべり始めた壁を凝視する。

 いや、落ち着け。

 壁がしゃべるわけない。


 これは……人の体だ。

 壁ではなく、がたいの良い男がボクの視界を遮っていたのだ。


 いや、どれだけデカいんだよ!?


「この声はフランシュ様!?」


 ニージュー・チョーボーは慌てて振り返る。

 ニージュー・チョーボーが壁を見上げたので、ボクもおそるおそるゆっくりと首を上に向けた。


 フランシュと呼ばれた男の首にはボルトが何本も刺さっていた。

 そのボルトが血行を悪くしているせいなのか、肌は死人のように青い上に、男の唇も、曲がった鼻も顔のパーツはすべて傷だらけだ。


 男は、眉間にしわを寄せながら、腫れぼったいまぶたから細く鋭い眼光でボクをぎろっとにらみ続けている。


 ものすごい威圧感だ。

 見なきゃ良かった。


 冷や汗が顔からたらりと流れるのを感じた。


「まさか、俺に攻撃したのはフランシュ様か?」

「その通りや」


「冗談はよしてくれ、フランシュ様!! 俺はあんたの仲間だろ??」


 振り返りボクに背を向けてフランシュのリーダーに尋ねるニージュー・チョーボー。


「仲間やない。わいのことをペラペラとしゃべり、筋肉量を約20倍にする丸薬を飲んだにも関わらず、冒険者一人止めることができないようなやつは仲間やない」


 そういいながら、何もないところでフランシュはパンチをしたかと思ったら、ニージュー・チョーボーはばたりと倒れた。


「ただの風圧やけど、何されたか分からんかったやろ?」

 筋肉ムキムキの元Aランク冒険者のニージュー・チョーボーを風圧の一撃で伸すなんて、どんだけ強いんだ、フランシュは。


 うん、ボクは関係ないから、このまま逃げた方がいいよね。

 戦うという選択はありえない。


 ボクはフランシュと目を合わせたまま、音を立てないよう、静かに一歩だけ後ずさった。


「どこに行くつもりや?」

「えっと、どこにも行きませんよ?」

 ダメだ、逃げようとしたらやられる。


「そうか、それは良かったわ」

「何が良いんですか?」


「目撃者は始末することにしとるから、追う必要がなくなるやん」

「ボクは何も見ていませんよ、フランシュ様」

 揉み手をしながら、ボクは巨体を見上げる。


「こんだけ間近におって、見ていないわけがないやろ」

「ワタシ、ジツハ、メガミエマセン」

「ほう、目が見えんのか?」


 もちろん、目が見えないなんて、真っ赤なウソだ。


「そうなんです」

 フランシュ様はバキバキと指の骨を鳴らした後、ボクに殴りかかってくる。

 凶悪そうなメリケンサックで心臓を狙われたら、間違いなく心臓震盪しんぞうしんとうを起こして死んでしまう。


 ボクはダとっさにダガーで自分の心臓をガードした。

 ガキン。

 無機質な金属音が響く。


「わいのパンチが見えているやないか」

「いや、たまたま偶然ですよ」


「ほう、偶然でわいの風圧さえも切ったと?」

「あはは……」

 ボクは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。


「わいのナックルを止めるとは思わへんかったな。あんちゃん強いやろ?」

 あんちゃんってボクのこと?


「強くなんかないですよ。ボクはFランク冒険者ですから」


「いいや、あんちゃんは強いんや。だから本気を出さなあかんな」

「いやいやいや、本気なんか出さなくていいですから」


「それじゃあ、いくで、あんちゃん」

「来ないで!!」

 ボクが叫んだ瞬間、フランシュ様の動きが止まった。


「む、この気配……神殺しがこちらに近づいてきているやんけ」

 神殺しの気配?


 ボクも気配を探るが、これといって強い気配は見当たらない。

 近くにある気配と言えば、アリアとアリアをストーキングしている院長先生らしき気配だけ。


 何を言っているんだ、フランシュは。

 そして、どうしてアリアをストーキングしているんだ、院長先生は。


忙しい人のためのまとめ話

 ニージュー・チョーボー、フランシュにやられる。

 サイレント、神殺しのおかげで命拾いする。

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