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第10話 サイレント、ニージュー・チョーボーに捕まる

これまでのあらすじ

 サイレント、ニージュー・チョーボーから逃げようとする。

 サイレント、ニージュー・チョーボーを挑発する。

 ニージュー・チョーボーはボクに殴りかかってきた。


「ふふふ……」

 ボクはニージュー・チョーボーの拳を避け、こみ上げてくる笑いを必死に抑えた。


「頭が悪すぎて、気でもふれたかサイレント?」

「『俺の筋肉に絶望しろ』……だなんて君が言うからだよ」


「事実、お前の未来に絶望以外の選択肢などない」

「それはどうかな? ボクは君に一度、勝っているのを忘れていない?」

 そう、ボクはこのニージュー・チョーボーに一度勝っているのだ。


「俺は魔法学校を首席で合格した超エリートだぞ。落ちこぼれのサイレントなんかに負けるわけないだろ」

 そう言いながら、自分の筋肉を見せつけてくる。


 魔法学校首席で卒業したんなら、筋肉を見せつけていないで、せめて魔法で攻撃してきてほしい……


「いやいや、ボクに負けたでしょ。もう覚えていないの?」

「あの時は俺が酔っぱらっていた上に、カバッカ町の警備兵を味方にしていたからだろ」

「あ」


 そうだった。

 今、ニージュ・チョーボーは酔っぱらっていないし、ここには警備兵もいない。


「お前、忘れているかもしれないが、俺は元Aランク冒険者だぞ」

「あ」


 そうだった。

 すっかり忘れていた。

 てへぺろ。


「ふふふ……」

 ボクはもう一度笑ってみせた。

「何がおかしいんだ?」


「教えるわけないでしょ!!」

 おかしいのは、ボクの頭のできだよ!!

 心でツッコみながら、ボクは敵に背を向け、敵前逃亡をはかった。


「逃げるのか?」

「そうだよ、逃げるんだよ」

 Fランクのボクがドーピングしている元Aランク冒険者に勝てるわけないじゃないか。


「なんという愚かな選択をするんだ、サイレント。この筋肉ムキムキでマッチョな俺から逃げ切れるとまさか本気で思っているのか?」

「当然だよ。筋肉はムキムキだけど、しなやかさが足りないからボクにはついてこれないでしょ」

 ボクは瞬動を使って、ニージュー・チョーボーと距離をとる。


「確かに、しなやかな筋肉ではないという点では、その通りだ……だが……」

「え? うそでしょ?」

 ボクが瞬動を使ったにもかかわらず、ニージュー・チョーボーはボクの速さに追いついていた。


「ふはは、俺の方がはやいってことだ、サイレント。俺からは逃げきれないぜ!! 『フランシュ』入団を断ったんだ。生きて帰れると思うなよ、サイレント」

「いいや、逃げ切ってみせる。空動!!」

 ボクは空気を蹴って、空へと逃げようとした。


「遅い、遅すぎるぞ、サイレント」

 ボクが空動で空へ行く前に、ニージュー・チョーボーは、ボクの両足をがしりと掴んできた。


「マジか!?」

「分かっているぞ、サイレント。お前は悪くない。悪いのは、お前のこの脚がいけないんだ。罰として、地面へダイビングをさせてやろう」


 ニージュー・チョーボーはボクの右脚をがしりと掴むと、そのままボクの体を振り回し、地面へとたたきつけようとした。


「脚が悪いと分かっているなら、脚に懲罰を与えるのでは?」

「いいや、その脚に命令を出しているのはお前の脳だろ? 結局、お前の脳が悪いんだ」


 なるほど、確かに……って、納得している場合じゃない。

 このままだと、頭が勝ち割られて大ダメージだ。


 ボクは地面に当たるすれすれのところで左脚だけで上空に向かって空動を使う。

 うまく空気を蹴れたようで、間一髪のところで、地面へとはたたきつけられなかった。


「ふん、うまくスキルを使って、衝突を回避したか……それなら、もっと強い力でお前を地面にたたきつけるまでだ!!」


 ニージュー・チョーボーは右脚を掴む力をさらに強くし、ボクの体を振り回す。

 このままだと、まずいな……


 ボクは振り回されながらも、腹筋で上体を起こすと同時に脚からダガーをホルダーから出し、ニージュー・チョーボーの手に思い切り突き刺そうとした。


 攻撃に気づいたニージュー・チョーボーは、右脚を掴んでいた手を離し、ダガーを避けながらボクの両手首をがっしりと握ってきた。


「ふはは、まさか、まだ俺に勝つつもりでいるのか?」

「そうでしょ!!」


「勝てないということを悟れ、サイレント!!」

「ボク、バカだから全然悟れないや」

 握られた手首は痛かったが、ボクはあえて軽口を叩く。


「それなら教えてやる! お前の体にな!!」

 ニージュー・チョーボーは、ボクの手首を握ったまま、ヘッドバットを繰り出してきた。


「教えてもらわなくて結構だよ。授業料も払えないからさ」

 ボクはヘッドバットを避けつつ、握っていたダガーを手放すほどに脱力をしたあと、ニージュー・チョーボーの手をからめとる。


「俺のヘッドバットを避けた上に、握っていた手からも逃げただと……」

「見たか、ボクのオリジナルスキル・手抜け。このスキルは自分があえて脱力をすることで、相手の力技から逃れることができるんだ。これで力がすべてじゃないと分かったでしょ?」


 まあ、魔法学校出身のニージュー・チョーボーには理解できないかもしれないけどね。


「お前のオリジナルスキル? スキル・手抜けは冒険初心者の技じゃないか」

「ふふふ……その通りだよ」

 あっちゃー、オリジナルスキルじゃないってバレちゃった。


 もしもバレなければ、

『何!? オリジナルスキルだって!? こいつはただのFランク冒険者じゃないぞ!? 逃げよう!!』

 ……ってなるシナリオだったのに……


 まあ、オリジナルスキルじゃないって知っていて当然か。

 冒険者ギルドで最初に教わる技だもんな。


「さあ、次はどんなウソが飛び出すんだ?」

 口ではボクの次の攻撃を待つそぶりをしているが、徐々に間合いを詰めてくるニージュー・チョーボー。

 これは、何か仕掛けてくるぞ。


 その前に攻撃しなくては……


「それはね……」

 ボクは不敵に笑いながら、しびれる手で落ちたダガーを拾って、すぐさまニージュー・チョーボーと距離をとった。


「もう終わっているんだよ、ニージュー・チョーボー」

「は? 終わっているだと? 何を言っているんだ?」


 ニージュー・チョーボーが聞き返した後、彼の両腕から大量の血液が噴き出した。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、ニージュー・チョーボーに捕まる。

 サイレント、勝ち宣言をする!?

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