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第8話 サイレント、仲間にならないかと誘われる

これまでのあらすじ

 サイレント、知らない人に会う

 サイレント、墓穴を掘って、自分がサイレントだと明かす


 



「相変わらず、バカだな、お前は」

「相変わらずって、もしかして、ボクのことを知っているの?」


「おいおい、俺の顔を忘れたのか?」

 男はボクに自分の顔を見せつけてきた。


「あ、お前は!! …………誰だっけ?」

 どこかで見たことはあるんだけど……


「おいおい、このニージュー・チョーボー様を忘れるとは言い度胸だなぁ」

「……え? あ、うん、ニージュー・チョーボーね、知ってる、知ってる」

 ボクは大きくうなずいた。


「嘘つくな。その反応は知らない反応なんだよ」

「いや、知ってるって。確か、ニック村でボクたちに石像のことを教えてくれた親切な人だよね?」


「違う。お前のせいでカバッカ町の警備兵に捕まったニージュー・チョーボー様だ!!」

 カバッカの町?


「あ、思い出した。所属していたパーティーのお金を着服して、パーティーを追い出され、泥酔した挙句、警備兵に暴力をふるったニージュー・チョーボーじゃないか」

「暴力をふるっただと? 警備兵に暴力をさせるように、お前が仕組んだんだろうが!!」


「人のせいにするのはよくないぞ、ニージュー・チョーボー!! そもそも、君がボクに絡まなければ、こんな大事にはならなかったんだ!!」


「むしゃくしゃしていたら、自分より弱い奴に当たるのは当然のことだろうが!!」

 この男、言うに事欠いて、暴論を振りかざしてきやがった。


「カバッカの町にそんなルールはないよ。あるのは、警備兵に暴力をふるったら、死刑宣告されるだけで……って、君、なんで死刑になってないのさ!!」


 そうだよ、カバッカ町で死刑宣告されたら最後、一生牢獄からは出られないはずなのに、どうして、カバッカ町の外にいるんだよ。


「何でだろうな?」

 にたぁっと笑うニージュー・チョーボー。


「まさか、警備兵にワイロか? ワイロを渡して逃れてきたのか?」

「ワイロ? 笑わせるなサイレント。カバッカ町の警備兵は三度の飯よりも死刑が大好きな筋金入りの猛者たちだぞ。ワイロなんかでなびくわけがないだろ」


「分かったぞ、人狼がニージュー・チョーボーに化けているんだ!!」

「人狼? なんだそれ?」

 そうだよね、人狼を知るわけがないよね。


「分かったぞ、ニージュー・チョーボー、お前幽霊だろ!!」

「そうそう、黄泉の国からサイレントを恨んでやってきた幽霊……って勝手に殺すな!! 俺は生きているぞ!!」


「生きているから問題なんだよ!! なんで生きているのさ?」

「死刑が執行される前に牢屋から逃げて来たからに決まっているだろ!!」


「はい、ウソ!! あの死刑大好き集団から一人で逃げてこられるわけがありません!!」

「一人でならな」


「まさか、協力者がいるの?」

「ああ、その通りだ。革命軍のフランシュにな」


「なーんだ、協力者の手を借りて、ここまで来たってことね」

 答えだけ聞くと、拍子抜けもいいところだ。


「そう、脱獄して、会いたかったお前と運命的に会えたんだよ、サイレント!!」

「会いたかっただって? まさかとは思うけど、カバッカ町からボクのことをずっと追ってきてた?」


「…………え? あ、うん、その通りだ」

 ニージュー・チョーボーは大きくうなずく。


 カバッカ町を出た時から、誰かに追われている気配があったけど、なるほど、ニージュー・チョーボー、お前だったのか。

 ……って、しつこすぎ。


「まさかとは思うけど、ボクに復讐しにきたの?」

「復讐か……それもいいな」


 しまった。

 言葉の選択を間違った。

『それもいいな』ってことは、他に目的があったってことだよね?


 何で自分から復讐しに来たなんて言っちゃったんだろ……

 本当にボクのバカ。

 いやいや、今からでも話の軌道修正ができるはずだ。


「それもいいなって答えたってことは、本当は別の目的があってボクの前に現れたってことだな!!」

 ボクは必死に復讐から話を逸らす。


「ああ、そうだ。本当はお前を仲間にしたいと思っていたんだ」

「え? ボクを仲間に?」


「聞いたぜ。お前も所属していたパーティーを追放された挙句、カバッカの町で指名手配されて、お前も逃げて来たんだろ?」

 にやりと笑うニージュー・チョーボー。


「それは……うん、そうだね」

 ボクはうつむいた後で、コクリとうなずいた。


「俺たちは同類だ。俺の仲間になれ、サイレント」

 ニージュー・チョーボーはボクに手を差し出してくる。


「君とボクは同類じゃないよ」

「同類じゃないだと?」


「そうだよ。だって、追い出された理由が違うもん。君はパーティーが受け取る報酬をちょろまかすという違法行為をしたから追い出されたんでしょ? ボクは違法行為はしていないもん。ただ弱いから追い出されたんだ」


「俺から言わせれば同じだけどな」

「同じって何が?」


「俺は違法行為をして仲間の信頼を裏切ったから、パーティーを追い出された。対してサイレント、お前は違法行為をしていないが、仲間はお前が強くなると期待していたのに、その期待を裏切り、弱いままで足手まといだったからパーティーから追い出された。つまり俺たちは裏切ったから、追い出されたんだ。な、同じだろ?」

「確かに、そうかもしれない」


「『そうかもしれない』じゃなくて、そうなんだよ。俺たちはパーティーメンバーを裏切ったんだ。そしてお前は俺と同様、元パーティーメンバーを恨んでいるんだろう?」


 ボクはその問いには答えられずに、その場で立ち尽くす。

 ボクは本当にラカン達を恨んでいるのだろうか?

 今まであえて考えないようにしてきたので、「はい」とも「いいえ」とも言えなかった。


「その沈黙、肯定ととらえるぜ。俺の仲間になれ、サイレント」

 ニージュー・チョーボーはボクに差し出した手で、ボクの手を握ろうとした。

 ここでニージュー・チョーボーの手に捕まれば、ボクは晴れて脱獄囚の仲間入りだ。


 さて、どうしたものか……


忙しい人のためのまとめ話

 知らない人はニージュー・チョーボーだと知る。

 ニージュー・チョーボーに仲間にならないかと勧誘される。


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