表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

249/372

第5話 サイレント、気配察知をする

これまでのあらすじ

 サイレント、信じられるのはアリアだけだと再確認する。

 アリアがサイレントについていくので、院長先生もついていくことを決める。



「もう話がないなら、そこをどいてほしいデス」

「あら? もしかして、お邪魔だったのよ?」


「もしかしなくても邪魔デス。はやくあなたは戦略的撤退でもなんでもすると良いデス」

「アリアちゃん、話を聞いていなかったのよ? 私もこのパーティに残るのよ」


「そうなんデスか、師匠?」

「うん、そうなんだ」

 ボクはこくりとうなずく。


「そうなんデスね」

 アリアは明らかにげんなりとイヤそうな顔をする。

 表情でもウソをつけないんだね、アリア。


「これからもよろしくなのよ、サイレント、アリアちゃん」

 院長先生はボクとアリアが握っていた手を握ってきた。


 お、これはいい感じだぞ。

 パーティとして、全員がまとまり始めている。


「気安くアリアの手を握らないでくださいデス!!」

 急に怒り出すアリア。


「そうなのよ、サイレント。アリアちゃんの白くてすべすべの手を握るのは良くないのよ」

 え、ボクが責められていたの?


「ごめん、アリア」

 ボクは握っていたアリアの手をぱっとはなした。


「師匠じゃなくて、院長先生に言ったデス」

「あら、そうだったのよ? ごめんなさいなのよ」

 ごめんなさいと言いながらも、悪びれる様子もなく、院長先生はアリアの手を離した。


「せっかく師匠と手を握っていたのに、あなたのせいデス」

 小さい声で呟きながら、院長先生をにらみ続けるアリア。


 パーティーの雰囲気は一転して険悪なものになってしまった。


「ボクが全国指名手配犯になってしまったので、今後の方針を考えましょう、アリア、院長先生」

 険悪な空気を一掃するために提案をする。

 そう、これからどうするかが大切なのだ。


「それなら、アリアにいい考えがうかんだデス」

「いい考えって何?」

 ボクは期待してアリアに尋ねる。


「地中……つまり、魔界に行くんデス」

「魔界だって? いやいや、そんなの無理だよ。魔界なんかに行ったら最後、魔族に殺されちゃうよ」


 魔界、ダメ、絶対。


「師匠が完全に気配を消せば、気づかれないデス」

「確かに、ボクのスキルなら魔族から気づかれないだろうけど……魔界なんかに行ったら、毎日、毎日、気配を消し続け、びくびくと生きなければならないじゃないか」


「師匠、魔界でびくびくせずに生きる方法があるデス」

「そんな方法があるの、アリア!?」


「簡単デス。魔界に行って、気配を消したまま、魔王を倒せばいいだけデス」

「そうなのよ。神様の作ったバリアさえも壊すことができたんだから、その調子でサイレントが気配を消して魔界に行って、魔王を倒せばいいのよ」


「確かに、その通りだ」

 そうだよ、アリアと院長先生の言う通りだよ。

 天界では神様の作ったバリアを壊したんだ。

 だから、魔王も倒せるはずだ。


「……って、何で、神様の作ったバリアを壊せれば、魔王を倒せることになるんですか!!」

 そもそも、論理が変なんだよ。

 すでに亡くなっている神様が作ったバリアと、生きている魔王は全然違うんだから。


 あぶない、あぶない。

 危うく、アリアと院長先生の口車に乗って、魔王を暗殺しに行くところだった。


「師匠ならできるデス」

「そうなのよ、サイレントならできるのよ」


「行きませんよ。魔王を暗殺しになんて」

「それなら何か他に案があるのよ?」


「それは……ないですね」

 ボクは堂々と誇らしげに言い放つ。


「それなら、今のところアリアちゃんの案がベストな案なのよ。もう魔王を暗殺するしかないのよ」

「もう少し良い案を考えましょうよ」

 ボクが提案すると、ぐぅーというおなかの音が聞こえた。

 院長先生のおなかの音だ。


「そもそも、おなかがすいていたら、いい考えが浮かぶはずもないのよ。これからどうするかは、ご飯を食べてからにするのよ」

「意義なし!!」

 ボクは院長先生の意見に乗っかる。


「デスが師匠、手持ちの食材がないデス」

「そうだった」

 天界で特に買い物はしていなかったからな……


「あると言えばニック村でもらった麦くらいだ」

 ボクはマジック・バックを持つと、バッグをさかさまにして、入れていた麦をすべてとり出す。


「小麦粉に挽いてもいない麦だけじゃ、腹の足しにもならないのよ……って、何年分の麦があるのよ?」

 ボクが取り出した麦の量に驚く院長先生。


「知らないですけど、ニック村でたくさんもらいました」

「もらいすぎなのよ。これだけの量を運んで、あなた、魔力大丈夫なのよ?」


「え? これくらい大丈夫ですよ?」

「衝撃すぎて言葉も出ないのよ……ポリポリ」


「言葉が出ないのであれば、挽いてもいない生麦をポリポリと食べないでください」

 ドン引きなんですけど。


「言葉が出ないから生麦と一緒に飲み込んでいるのよ」

「生麦をそのまま食べて後でおなか壊してもしりませんよ」


「生麦なんかで壊れるようなおなかじゃないから大丈夫なのよ」

 ポンとおなかを叩く院長先生。

 確かに、院長先生なら毒キノコだって、毒も栄養だ……とか言って食べてしまいそうだ。


「でも、さっきも言ったように、生麦なんて軽くてカロリー0だから、食べても食べてもおなかがいっぱいにはならないのよ」

「えっと、どういうことですか?」

 麦を食べているんだから、おなか一杯になりますよね?


「カロリー0のこんにゃくをたくさん食べても、おなかがいっぱいにならない理論と同じなのよ」

「何を言いたいのか、さっぱりわからないですよ」


「とにかく、生麦以外にも、他に何か食べ物を持ってないか確認しているのよ。何かないのよ? 肉とか……肉とか……肉とか!!」

「持っていたら、出していますよ」


「本当なのよ? ちょっとそこでジャンプするのよ」

「ジャンプしたらポケットからお肉がでてくるなんてことありませんから。なんで、カツアゲみたいになっているんですか?」


「ないなら、捕まえるしかないのよ」

 あ、院長先生がハンターの眼になってる。


「近くに野生のイノシシでもいればいいんですけど……」

 ボクは気配察知のスキルを使った瞬間、背筋がぞっとした。


「どうしたのよ、サイレント?」

 ボクの体のこわばりに気づいた院長先生が声をかけてくれた。

「あ、いや、気配察知をしたら、誰かにつけられている気がしたんです」


忙しい人のためのまとめ話

 院長先生、生麦をぽりぽり食べる。

 サイレント、誰かにつけられている気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ