第69話 サイレント、王都に入る!?
2024/7/11 後書きを消しました。(本文に修正はありません)
これまでのあらすじ
サイレント、天界を脱出する。
アリア、いつ門番天使がヴァンパイア・あげはに噛まれたかが気になる。
「もっと気になることがあるのよ、サイレント」
「なんですか、院長先生?」
「地上に戻るのはいいけど、今度はどこに行く予定なのよ?」
院長先生はボクの落下スピードに合わせながら、尋ねてきた。
「えっと……それは……」
まずい、この後どこに行くか、何も考えずに飛び降りちゃった。
それをそのまま正直に伝えれば、バカにされてしまう。
なんてこたえるべきか。
「師匠は、誰もいないような人の少ない場所でスローライフをするつもりデス」
ナイスだ、アリア。
そうだよ。
人知れずスローライフをすることが、ボクの当初の目標だったじゃないか。
「アリアの言った通り、ボクは人知れず、スローライフがしたいんです」
「天界を敵に回したのだから、人の少ないところはおすすめしないのよ」
「どうしてですか?」
ボクはひっそりと暮らしたいだけなのに。
それさえも叶わないというのか。
「天界を敵に回したのだから、全天使からあなたは狙われてしまうのに、人が少ないところでスローライフなんかしたら、すぐに天使に見つかって、ヴァンパイア・あげはと一緒の牢屋に入れられちゃうのよ」
「そんな人生はイヤだ!!」
何で、ヴァンパイア・あげはと一緒に生活をしなければならないんだ。
「それなら逆に人の多い都や町に行くしかないのよ!!」
何を言っているんだ、院長先生は。
「いやいや、人の多いところに行ったら、すぐに見つかっちゃいますよ」
「『木を隠すには森の中』と言うように、人を隠すには人の中が一番なのよ。サイレント」
「なるほど、そういうことですね。それなら、次の目的地は人の多いところにしようと思います」
ボクは大きくうなずいて、知っているフリをしてから、院長先生の意見に同意する。
「どうせなら、一番人が多いところに行くのよ」
「それってどこですか?」
「人間界で一番人が多いところと言えば、王都アーノム・ギトーゲなのよ」
「いいですね、王都!!」
何がいいかって、王都っていう響きがいい。
「即決していいデスか? 貧富の差が激しい上に、カジノもあるから、治安はピンキリだと聞いたデスよ?」
「良いに決まっているじゃないか!!」
カジノがあるなら、遊びたいしね。
「でも、師匠は指名手配されているでデスよね?」
「指名手配されていると言っても、カバッカ町とホバッカ村とニック村と天界だけだよ」
「かなり多いデス」
確かに、アリアの言う通りだ。
「でも、王都アーノム・ギトーゲでは指名手配されていないから、大丈夫!!」
「行き先が決まったならついてくるといいのよ」
「院長先生、場所が分かるんですか?」
「一度行ったことがあるのよ」
黒い羽を羽ばたかせ、ボクを先導してくれる院長先生。
「分かりました」
ボクは空動を駆使しながら、院長先生についていった。
…………
……
「ほら、見えてきたのよ!!」
「へー、大きなお城があるんですね」
堀と巨大な塀に囲まれた中に立派なお城がたっていた。
「王都だから当然なのよ、サイレント」
「まさかとは思いますが、あのお城、ハリボテなんてことはないですよね?」
「あれは本物なのよ。天界の入口とは違うのよ」
「そうですよね」
「このまま空から不法侵入しちゃうのよ……」
まずいという表情をして、アリアの方を振り向く院長先生。
そうだよね、不道徳的なことを言えば、アリアが反対するに決まっているもんね。
「すー、すー。おのれ、魔王め!!」
アリアは院長先生の背中の上で寝ていた。
院長先生の背中の上とは言え、よく空を飛びながら眠れるな。
アリアには、大物になる素質があるんじゃないか?
「ヴァンパイア・あげはと戦って、疲れちゃったんですね」
「それに、魔王に対して並々ならぬ恨みをまだ持ち続けているのよ」
院長先生もそう思いますか、ボクもそう思います。
「一体、魔王と何があったんですかね?」
「冒険者には過去を話そうとしない人には無理に聞いてはいけないという暗黙のルールがあるのよ。聞くのは野暮ってものなのよ」
「そうですよね」
アリアにも言いたくないことくらいあるよね。
「アリアちゃんが寝ているなら都合がいいのよ。アリアちゃんを起こさずに空から入国しちゃうのよ」
悪い顔をする院長先生。
「そうですね。アリアが寝ているんだから、入国した方がいいですよね」
アリアは魔族だから、普通に入国すると、アリアの素性がバレてしまうかもしれないしね。
きっと今のボクも、院長先生と同様、鏡で見たら悪い顔をしているんだろうな。
「さあ、いくのよ」
ボクと院長先生は、空から入国しようとした瞬間である。
「また、天使か。空からの入国は禁止だと、何回も言っているじゃないか!! いいか、この国に入国したければ、地上で身体検査を受けてからだ!! まったく、何度同じことをいわせるんだ!!」
空から不法入国しようとしているボクたちに気づいた門番兵士が、塀の上を走りながら、怒鳴ってきた。
ん?
今、この門番兵士、『また』って言った?
「ボク達、この国に入るのは初めてなんだけど」
「おお、そりゃ、すまないな。ここ最近、毎回同じ天使が我が国に空から入ろうとしていたから、またそいつかと思ってな。とにかく、入国したいなら、門から入ってくれ!!」
「分かりました。すみませんでした」
へー、ボク達と同じく、空から不法入国する天使がいるんだなぁ……
「それじゃあ、門の方へいくのよ」
ボクたちが門へと向かう途中、塀の上の兵士たちがあわただしくなる。
「緊急伝令! 緊急伝令!!」
何が起こったのだろう?
ボクは聞き耳をたてた。
「王様が先ほど、お触れを出されて、サイレントという冒険者をデッド・オア・アライブの全国指名手配犯になさったぞ!!」
「は?」
何で、ボクが?
第4章 完
忙しい人のためのまとめ
行く当てがないサイレント、院長先生に王都に行くように勧められる。
サイレント、王都で全国指名手配犯になったことを知る。
第4章を読んでいただき、ありがとうございました。