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第24話 サイレント、謎の美少女の正体を推理する

前回のあらすじ

サイレント、謎の美少女に襲われる。

サイレント、美少女に勝つ。




 

 それなら、ボクの名前を知っていてもおかしくないぞ。

 そうだ、そうだよ。

 この子、職場体験に来た院長先生の教え子に違いないよ!!


「君は何しにボクの家まできたの?」

『職場体験に来たんデス』という答えがもらえれば、院長先生の教え子で確定だ。


「サイレントさんを屈服させるために、命を取る覚悟で来ました」

「そっか……職場体験じゃなくて、ボクを屈服させるために命を取る覚悟で来たのか……って、えーーーー、ボクの命!!」


 物取りじゃなくて、本当にボクの命を取ろうとしてたよ、この少女。

 だいぶ危ない子なんですけど。

 できれば関わっちゃいけない子なんですけど。


 いや、でも、魔王軍に親の命を奪われたんだ。

 まっすぐに育たずに、性格がひん曲がって育ったのかもしれない。


 孤児院では、院長先生がまっすぐ奮闘していたけど、まっすぐに育たずにひねくれてしまった子もだいぶいたからな。

 きっと、彼女もその一人なんだろう。

 ここは、大人として、毅然とした態度で接しないといけないな。


「そうデス。寝たふりをしているところを一撃で仕留めるつもりだったのデスが、まさか鎌を蹴り飛ばすとは思いませんでした」

「その程度の力でボクを倒そうなんて、一年早いよ」

 一年はボクの命を取られないように、強がっておこう。


 あれ? 一よりも百の方が大きいんだっけ。

 しまった。

 百年って言っておけばよかった。

 でも、今更訂正するのも変だし、まあいっか!


「さすがデス。負けた相手に情けは無用デス。何がお望みデスか? 命デスか?」

 負けたので、命を取ってくださいって、性格曲がり過ぎでしょ。

 ちょっとドン引きなんですけど。


「いやいや、ボクは君の命が欲しいわけじゃないし」

 魔物でもないんだから、殺すなんてことはできないよ。

 ましてや、院長先生の教え子ならなおさらね。

 なんでこんな突飛ずれたことを言うんだろう……


 ボクは少女の目線の先にあるものを見た。

 これは、ボクのダガー……

「あ、これは本当に君の命を取りたくてつきつけたわけじゃないからね」

 ボクは喉元にあったダガーをすっとおろした。


「そうデスか……それじゃあ、どうするつもりデスか?」

「うーん、どうするって言われても、院長先生からは、君には冒険者ギルドの受付になりたくなるように、きつい修行を頼まれているからな……」


 ……って、しまったー。

 院長先生と話したことをそのまま伝えたら、意固地になって、冒険者になるって言い出しかねないじゃないか。

 どうしよう……

 ボクは冷や汗を出しながら、少女の様子をうかがう。


「院長先生?」

 少女は聞き慣れない言葉に困惑する。


 良かった。そっちの方に食いついてくれた。

 そうだよね、院長先生って呼んでいるのはボク位だもんね。

 他の人は院長先生のことを『インビジなんたらかんたら』……っていう、長い本名で呼ぶもんね。


 院長先生の名前を知らなくてよかった。

 これならうまく話を逸らすことができそうだ。

「えっと、職場見学したいって言っていた孤児院の子だよね?」

 そういえば、院長先生が就職に迷っている子がいるって言ってたっけ。


「孤児院?」

 少女は、何の話ですか……というように、小首を傾げる。

 院長先生のことは知らなくても、孤児院のことも知らないなんてことはないだろ。

 少しの間かもしれないけど、孤児院に住んでいたんだし。


 ……あ、分かった。

 これ、わざと孤児院について知らないフリをしているんだ。


 ボクにもこういう経験あったな……

 孤児院で院長の鏡にいたずら書きをするために部屋に忍び込んだ際、院長が忘れ物を取りに部屋に戻った時には、イタズラ書きをしに来たんじゃないって即座に否定したことがあったっけ……

 きっと、その時と同じだ。


 この少女の場合、こんな真夜中に訪ねてきて、しかも鎌まで向けて、ボクの力を試すために、命まで取ろうとしたんだから、院長の教え子だと言いづらいんだ。


 もしも後日、ボクが院長先生にこのことを話したら、この少女は滅茶苦茶怒られるだろう。

 普段は優しそうに見えるけど、怒ると怖いからな。院長先生。


「分かったよ。職場見学じゃないんだね?」

 ボクは確認をとる。

「はい、そうデス」

 すぐさま返事をして安心しながら、にっこりとする女の子。


 うん、これは、絶対職場見学に来たんだ。

 そうと悟らせないために、職場見学じゃないと、すぐさま返事をしたんだ。


「分かったよ。そういうことにしておくよ」

 大丈夫だよ、職場見学に来て、命を取りに来たなんてことは、ボクの口から絶対に言わないからね。


「はぁ、そうデスか」

 うん、少女の曖昧な返事からしても、間違いないだろう。

 やはり、職場見学にきたに違いない。


 おそらく、少女の行動はこうだ。


 ボクが院長先生と別れた後、この少女が孤児院に帰ってくる。

 その時に院長先生がこの少女にボクのことを話したんだ。


 この少女は魔王軍に恨みがあるから、すぐにでも職場見学がしたいと思った少女は、その足でボクの家を探しに来たに違いない。


 聞いた住所を探すが、日が落ちた上に、雨が降りはじめ、なかなか見つからない。


 諦めて孤児院に帰ろうとしたところ、道に迷ってしまい、帰ることも出来なくなってしまったんだ。


 路頭に迷っていたところ、たまたまボクの家を発見。


 ボクの実力を試すために、寝ているボクに襲い掛かった……うん、そんなところだろう。


「それじゃあ、別の質問良いかな?」

「何デスか?」

「どうして、ボク襲われてるの? こんな真夜中に」

 ボクの推理が正しければ、冒険者サイレントさんの実力を試したかったからって答えが返ってくるはずだ。


「寝込みを襲ったほうが良いと助言されたので」

「そっか、寝込みを襲った方が良いと助言されたんだね」

 ボクの予想通りの返答じゃない……だと?


 寝込み……

 そいういえば院長先生、お嫁さん候補だとか言ってたっけ……

 大方、院長先生がサイレントなら寝込みを襲っても大丈夫……と、この女の子に吹き込んだんだろう。


 うん、寝込みを襲うの意味が違う気がするけど、きっと、この子は意味が分からなかったのだ。


忙しい人のまとめ話

サイレント、謎の美少女の正体を推理する。

サイレント、職場体験に来た子だと推測する。




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