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第59話 サイレント、形勢逆転される!?

これまでのあらすじ

 アリア、サイレントにヴァンパイアは太陽の光に弱いことを伝える。

 サイレント、太陽が出るまで時間を稼ぐ。


「うぉー!!」

 ボクは勝利の雄たけびをあげる。


「何をそんなに喜んでいるし?」

 不思議そうに訊いてくるヴァンパイア・あげは。


「そりゃあ、喜ぶよ。お日様が出ているってことは、ボクたちの完全勝利ってことだもん……って、なんでピンピンしているのさ。ヴァンパイアってお日様に弱いんじゃないの?」

 日の光を浴びても全然弱っていないじゃないか。


「お日様なんか、すでに克服しているし」

「克服しただって? 話が違うじゃないか、アリア」

 ボクは振り返って、座っているアリアを見る。


「そんなはずないデス。ヴァンパイアは太陽を浴びると溶けてなくなるはずデス!!」

 アリアは座りながら大声をあげる。


「そうだ、そうだ!! アリアが言うなら、君は溶けてなくなるはずだ。アリアはウソをつけないんだからね」


「……っていうか、貴方は、うちが真昼間に連行されているのを見ているはずだし」


「あ、そうだよ、アリア。このヴァンパイア、確かに昼休みの後に天使たちに連行されたんだ。本当に克服しているんだよ」

 ボクは、納得して、ぽんと手を打つ。


 うっかりしていた。

 ボクは確かに今日、ヴァンパイア・あげはが日の光の下で自由に動いているのを見ていたじゃないか。


「師匠がそう言うなら、ヴァンパイアがお日様を克服したと、認めざるを得ないというわけデスね。ごめんなさいデス!!」

 気持ちのいいくらいに素直に謝ってくるアリア。


「……っていうか、ウチの健康的な褐色の肌が見てもなお、お日様が弱点とか、マジであり得ないし」

「それは、その生まれつきなのかな……って思っていたデス」


「生まれつきなわけないし。魔王様が健康的な肌をした魔物が好きだっていう噂を耳にしたから、毎日、苦手な太陽を浴びる時間を延ばして、白い肌を少しずつ焼いたんだし」

「そんなことまでしてお日様を克服したデスか?」


「へー、それって、大変なの?」

 あまりにもアリアが驚愕していたので、ボクは訊かずにいられなかった。


「ヴァンパイアがお日様を浴びれば、人間が全身をやけどするような苦痛を伴うはずデス」

「え? 全身がやけどする苦行を毎日毎日少しずつ時間を増やしていったってこと?」


「そういうことデス」

 こくりとうなずくアリア。


「魔王様のために、全身やけどをする思いをして、お日様を克服したっていうの? めちゃくちゃ健気じゃん」

 素直に感心してしまう。


「いやいや、そんなことないし」

 ヴァンパイア・あげはは顔を赤らめながら否定する。


「謙遜しなくていいよ、君はとても健気で、努力家だから」


「うちを認めてくれるし?」

「うん、認めちゃう!!」


「それなら、魔王様は天界をご所望だから、うちがその神様の杖を使って、天界を支配するのも認めてほしいし」

「それは、認められないかな」

 杖はボクの願いを叶えるために使うんだから。


「それなら、うちの奴隷になるといいし」

 ヴァンパイア・あげはは、ウィンド・ブレードでボクに高速で近づき、噛みついてきた。


「絶対に捕まらないからね、空動!!」

 ボクはヴァンパイア・あげはから目を離さずに、バックステップと空動を組み合わせて逃げる。


「ぐへっ!!」

 院長先生のうめき声。


「あ!! すみません、院長先生!!」

 初めてバックステップと空洞を組み合わせたため、着地地点が定まらず、床に寝かせていた院長先生のお腹に両足着地してしまった。


「…………もうダメなのよ」

 目を白くする院長先生。

 あ、これは完全に気絶した。


「おのれ、ヴァンパイア・あげは! 院長先生を気絶させるなんて!!」

 ボクはヴァンパイア・あげはをにらむ。

 院長先生のお腹の上で。


「うちのせいじゃないし!!」

 ヴァンパイア・あげはは怒りながら、ボクめがけて突進してきた。


 まずい、逃げないと……と思うのだが、今は院長先生のお腹の上。

 さすがに、院長先生のお腹を蹴って移動したら、命に関わるかもしれない。


 一度、床の方に降りないと……と思った瞬間にはもうヴァンパイア・あげはは近づいていた。


「うわぁ!!」

 声をあげたボクの脚はもつれ、院長先生の上にあおむけで倒れてしまう。


「形勢逆転だし!!」

 倒れたボクのお腹の上に乗り、両腕をがしっと掴んで、マウントをとってくるヴァンパイア・あげは。


 まずい、このままだと、首をかまれて、奴隷になってしまう。

 はやく何とかしないと!!


 何か、何か方法はないのか?

 ボクはアリアの方を見た。


「師匠、逃げるデス」

 アリアはまだ回復していないみたいで座ったままだ。


 アリアに助けを求められないと思ったボクは反対に、院長先生の方を見た。

 完全に気絶したまま目を覚ましそうにない。


 うん、打つ手がないね!!

 もう、諦めるしかないね。


「大丈夫………………でありますか?」


 ボクが諦めかけた時、どこかで聞いたことある声が耳に入ってきた。


 あれ? この声ってもしかして……

 ボクは声のする方へと視線を向ける。


 そこには門番天使が、朝日を浴びながら立っていた。

 門番天使の背後にもたくさんの天使たちが並んでいる。


 なんで、天使たちがここにいるんだ?


 ……あ、そっか。

 神タワーの頂上には、院長先生の魔法で天使が入ってこれないようにしていたんだっけ。


 でも、院長先生が気絶したから、魔法が解けたんだ。

 だから、たくさんの天使たちがこの神タワーに入ってきたんだ。


 それならやることは一つしかない。


「助けてください!! 魔族に襲われているんです!!」

 ボクは大声で叫んだ。


「魔族に襲われている………………でありますか?」

 確認をとるかのように訊いてくる門番天使。


「そうです、だからはやく助けてください!!」

 ボクは必死さを出しながらSOSを出す。


「ふふふ、形勢逆転だよ、ヴァンパイア・あげは。院長先生を気絶させたのは失敗だったね。天使が神タワーに入りたい放題じゃないか」

 ボクはヴァンパイア・あげはだけに聞こえるように小声でつぶやいた。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、ヴァンパイア・あげはは日の光を克服していることを知る。

 サイレント、追い詰められるが、第3勢力の天使たちを味方につけようとする。


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