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第55話 サイレント、勝利宣言をする!?

これまでのあらすじ

 ヴァンパイア・あげは、血の霧で視界を悪くさせる。

 ヴァンパイア・あげはの攻撃をかろうじて避けるサイレントとアリア。




「こうなったら、最後の手段だ!!」


「最後の手段があるデスか?」


「そう、ヴァンパイア・あげはに追いついて、直接攻撃する!!」


 気配察知のスキルで、ヴァンパイア・あげはがどこにいるかは分かっているんだ。

 追いかけっこするしかない!!


「師匠、あげはの速度は師匠の瞬動よりも速いんデスよ。どうやって追いつくデスか?」

「ヴァンパイア・あげはは、ウィンド・ブレードで速さを上げているんでしょ? それなら、こちらも速さを上げればいいんだよ!!」


「師匠、ヴァンパイア・あげはの技は自爆技デスよ」

「自爆技?」


「ウィンド・ブレードで自分の脚を傷つけながらスピードを上げているデス」

「そうなの? 全然傷つけているようには見えなかったけど」


「それもそのはずデス。ヴァンパイアはものすごい回復力があって、致命傷以外はすぐに回復するデスから」

「つまり、ヴァンパイア・あげはは、回復力が高いことをいいことに、ウィンド・ブレードで自分の脚を傷つけながら速く動いているってこと?」


「そういうことデス。もしもアリアたちがあげはの真似をしようとしたら、脚の骨は複雑骨折するデス」

「それなら、アリアのウィンド・ブレードなしで追いついてみせる!!」


「やってみるといいし」


「お望み通り、やってやる!!」

 瞬動!!


「ウィンド・ブレードだし!!」

 瞬動を使って、猪突猛進するボクに、ヴァンパイア・あげははウィンド・ブレードの魔法を唱えた。


「師匠、直撃するデス!!」

「いや、避けてみせる!!」


 ボクは上半身の力を利用して、体をひねった。


「よし、うまく避けた……って、うわー」

 ひねった体に風圧があたり、ボクは空中へと吹っ飛び、床へと落ちた。


「大丈夫デスか、師匠」

 アリアは瞬動でボクの吹っ飛んだところに追いつくと、ボクに背中を預けてから尋ねた。


「うん、受け身をとったから大丈夫。もう一度だ」


 ボクはまたヴァンパイア・あげはに向かって瞬動をする。


「ウィンド・ブレードだし」


 また、同じように吹っ飛ばされた。


「きゃはは、さっきの二の舞だし。これじゃあ、うちを捕まえるなんて、夢のまた夢だし」


「くそっ、打つ手なしじゃないか!!」


 アリアの遠距離攻撃もダメ。

 直接追いつくこともダメ。


 どうやって、勝てばいいっていうんだ。

 分からない。


 もう、逃げたい。


 でもまさか、Fランク冒険者のボクが、スライムより弱いSランクの魔族から逃げるなんてことできない。


「打つ手はないけど、勝つのはボク達だ!! 覚悟しろ、ヴァンパイア・あげは!!」

 Sランクの魔族だというのを良いことに、かっこいいポーズをとりながら、勝利宣言をするボク。


「師匠、おかしいデス」

「やっぱり、カッコいいポーズをとりながら勝利宣言するのはおかしかったかな?」


「そうじゃないデス。いつの間にか、ヴァンパイア・あげはの気配がなくなっているデス」

「ヴァンパイア・あげはの気配がなくなってる? いやいや、そんなはずないよ。ここは戦場だよ……って、本当だ!! 気配察知に引っかからない」


 先ほどまで、確かにこの部屋の中を高速で移動していたヴァンパイア・あげはの気配はなくなっている。


「しかも、カリカリと何かを削るような音もなくなっているデス。もしかして、この最上階から外に出たんデスかね?」

「分かったぞ、ボク達に恐れをなして逃げ出したんだ!!」


「このまま戦い続ければ、ヴァンパイア・あげはの勝ち確定だったのにデスか?」

「ボクが鬼気迫る気合で勝利宣言をしたから、逃げ出したんだよ」


「なるほど、さすが師匠デス!!」


 よし、ヴァンパイア・あげはが逃げている間に、神の作った杖を使って、ボクとアリアの婚約破棄をしてしまおう。


 ボクは神の作った杖に向かって、走りだす。


「デスが、師匠、ヴァンパイア・あげはが逃げたのに、どうして赤い霧は出ているままなんデスか?」


 確かに、アリアの言う通りだ。

 逃げたのなら、赤い霧もひっこめればいいのに。


「こうするためだし」

 声のした方を見ると、女ヴァンパイアが床から出てきて、アリアの背後に立っていた。


「何で急にヴァンパイア・あげはの気配が現れたデスか?」

 混乱するアリアの首元にヴァンパイア・あげはは噛みつこうとしていた。


「アリア、とにかく逃げるんだ!!」

「そうだったデス、瞬動!!」


 ボクの声に反応したアリアは瞬動をしようとする。


「させないし」


 ヴァンパイアあげはは、アリアの腕をつかみ、社交ダンスをするかのように、アリアにまとわりつくと、アリアの首元に噛みつき、傷口をぺろっとなめた。


「きゃはは、なめちゃった、貴女の傷口」

 唇についたアリアの血を手の甲で拭きながらにやりと嗤うヴァンパイアあげは。


「やっぱり、貴女の弱点は目に頼りすぎているところだし。音だけでは、ウィンド・ブレードで床を掘って、床下から出てくるとは思わなかったしょ?」


「さっきのカリカリと何かを削るような音は、床を削る音だったデスか?」

「そうだし」


「気配が消えたと思ったのは、床下にいたからってことデスか?」

「そういうことだし」

「あ、ああ……」


 ヴァンパイア・あげはがうなずいたとたん、アリアは大鎌を投げ捨て、自分の喉を手で押さえ、声にならない声をあげた。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、勝つ方法も分からないのに、ヴァンパイア・あげはに勝利宣言をする。

 アリア、ヴァンパイア・あげはに噛まれる。

 


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