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第53話 アリア、ヴァンパイア・あげはと戦う

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生の結界が切れたら、天使たちから追いかけられることを知る。

 サイレント、ヴァンパイアと対峙する。



「四天王だって!?」


 ボクは驚く。

 四天王って言葉が、なんだったか覚えていないことに。

 聞いたことはあるんだけどな……


「そうデス。デスので、彼女はSランクデス」

「なるほど、そういうことか!!」


 思い出したぞ!!

 四天王っていえば、Sランクの魔物だ。

 つまりはFランクのスライムより弱いってことじゃないか!!


 それもそうだ。

 この魔族は、警備天使に囲まれた時、すぐに降参していたもの。

 きっと自分は弱いと自覚しているから降参したんだろう。


 あれ?

 でも、さっきとっても速かったよね?


 あ、分かった。

 この魔族は足が速いだけなの魔物なんだ。


「もう、Sランクってことをはやく言ってよ、アリア。この魔物は足が速いだけなんでしょ?」


「師匠、足が速いだけじゃないデス。相手はヴァンパイアデスよ」


「そうだよね、相手はヴァンパイアだもんね。ところで、ヴァンパイアって何?」


「師匠、ヴァンパイアを知らないデスか?」


「うん、聞いたことないな」


「ヴァンパイアにかまれて、血とヴァンパイアの唾液が混ざると、ヴァンパイアに魅了されて、一生奴隷になってしまうデス」

「あ、言われてみれば、あの魔族がとても魅力的に感じてきたぞ」


「師匠はどこも噛まれていないから大丈夫デス!!」

 あ、そうだった。


「ああ。だから、アリアはさっきあんなにも首筋に傷がないか確認していたのか」

「そうデス!! デスので、絶対に噛まれたり、傷口を舐められたりしないでくださいデス」


「了解!! 奴隷になんかなりたくないしね」

「絶対に、うちの奴隷にしてやるし」

 八重歯を見せながら笑うヴァンパイア。


「絶対イヤだ! ボクは奴隷になんかならないからね」

「その反応、めっちゃ良いし!!」


「え?」

 ぺろっと舌なめずりをしながら、目をハートにしてボクの顔をじっと見つめてくるヴァンパイア。


「奴隷になることを拒む男を無理矢理服従させるのって、ぞくぞくするし」

 ヴァンパイアの心の中にあるやる気スイッチを押してしまったみたいだ。


「師匠の血が欲しいなら、まずは、アリアを倒してからにするデス、ヴァンパイア・あげは!!」

 アリアはヴァンパイアとボクの間に割って入ってきた。


「ヴァンパイア・あげは?」

 ボクは尋ねる。


「この魔族の本名デス」

 へー、このヴァンパイア、あげはって名前なんだ。


「……っていうか、なんで貴女、うちの本名まで詳しく知っているんだし? 出会った人間はことごとく奴隷になるか死体になるかのどちらかのはずだし」


「それは企業秘密デス」

「うちの質問に答えないとはいい度胸だし!」


 ヴァンパイアが殺気を出したせいで、周りがピリピリとした空気になった。

 立っているだけでも、体に電気が走っているみたいだ。


「大丈夫、アリア?」

 ボクの前に立っているアリアに話しかける。


「大丈夫デス、師匠。あいつはアリアに倒させてください」

 口では大丈夫というものの、アリアの脚は確かに震えていた。


 震えているアリアに代わって、ボクが自分でこのヴァンパイア・あげはを倒そうかとも思ったが、アリアが自分から倒したいと志願したんだ。


 Sランクなら、ボクが出る幕もなく、アリアだけでも十分倒せるだろう。

 ここはアリアに譲っておこう。


「分かったよ、アリア。でも、無理はしちゃいけないよ」

 ボクは優しく声をかけた。


「ありがとうございますデス、師匠。さあ、勝負デス、ヴァンパイア・あげは」


「……っていうか、ウチがちょっと殺気をまき散らしただけで、子犬のように震えちゃっているのに、勝負とかどの口が言っているんだし」


 ああ、これは完全に相手を怒らせてしまった。

 ごめんね、アリア。


 ボクのせいで……


「これは武者震いというやつデス」


「きゃははは、武者震いとかウケるし。お望み通り、貴女から相手してあげるし」


 アリアが武者震いなんて強がりを言うから、さっきまで怒っていたヴァンパイア・あげはは、目をハートにして舌なめずりをしてるよ。


 これ、完全にアリアを奴隷にしようとしているよ。


「来るよ、アリア!! 気を付けて」

 ボクがアドバイスした瞬間、ヴァンパイア・あげはは、とんでもない速さでアリアの周りを走り始めた。


「なるほど、攻撃風魔法・ウィンド・ブレードをあえて自分にかけることで、速さをブーストしているデスね?」


 すごい、アリア。

 もうヴァンパイアの攻撃を理解している。

 さすが魔眼持ち。


「へー、うちの速さのからくりが分かるとか、すごいし。でも、からくりが分かっただけじゃ、うちへの攻撃の対処ができないし」


 そう言いながらアリアへと詰め寄るヴァンパイア・あげは。


「危ない、アリア!!」

 ボクはとっさに叫んでしまう。


「見えているデス!!」

 アリアは向かってくるヴァンパイア・あげはに大鎌を振り下ろしていた。


「あら? 貴女、思ったよりできるし」

 アリアの大鎌をヴァンパイア・あげははバク転しながら避ける。

 なんて身のこなしをするんだ。


「アリアをなめないで欲しいデス」

「なめるに決まっているし。だって、なめないと、あなたを奴隷にできないし」

 ヴァンパイア・あげはは舌なめずりをする。


「奴隷になるのはお断りデス」

 アリアは瞬動を使って、一気にヴァンパイアに詰め寄り、大鎌で斬りかかる。


「遅いし!」

 ヴァンパイアはすり抜けるようにアリアの大鎌を躱すと、アリアの懐に入ってきた。


「それも見えているデス!!」

 アリアは大鎌を放した手でヴァンパイア・あげはのお腹にグーパンをかますと、あげはは後ろに吹っ飛んだ。


「よし、クリーンヒットだ!! よくやったアリア」

「いえ、当たっていないデス。あげはは自分にウィンド・ブレードをかけて、アリアのパンチを緊急回避したデス」

 そうだったのか。


「危ないところだったし、でも、貴女の弱点が分かったかもしれないし」

「アリアの弱点だって!?」

 ボクは声をあげてしまっていた。


忙しい人のためのまとめ

アリア、ヴァンパイア・あげはと戦う。

ヴァンパイア・あげは、アリアの弱点を見つける。



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