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第52話 サイレント、神の作った杖の使い方を聞く

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生は裏切っていないことをアリアに説明する。

 サイレント、院長先生が倒れているのはドッキリだと勘違いする。




「全身の痛みがひどくて、そのうち私は気絶するのよ。もし気絶したら私の結界魔法も切れちゃうのよ」


「結界魔法ですか?」


「そうなのよ。私の結界魔法は神タワーの最上階に天使を寄せ付けていない魔法なのよ」

「もし、その結界魔法が切れたら?」


「天使長官カナエルを気絶しているのを見た天使たちは怒り狂い、私たちを捕まえに来るのよ。おそらく数にして千以上の天使たちが」

「千以上ってことは、カバッカ町で追いかけられた人数よりも多いデスね!!」


 目を輝かせるアリア。

 カバッカ町で追いかけれた人数よりも多い!?


 あの時はほとんど町の人ばかりだったけど、今回は戦闘のプロに追いかけられるってことだよね?

 いやいや、死んじゃうって!!


「天使は全員回復魔法が使えるから、絶対に大変だと思うけど、がんばるのよ」

「分かったデス、天使たちの魔力が尽きるまで、アリアたちが攻撃し続ければいいということデスね?」


 やる気満々すぎるだろ、アリア。


「いやです、気絶しないでください、院長先生!!」

 ボクは院長先生に詰め寄り、手を握る。


「そのまま聞くのよ、サイレント」

 院長先生はボクだけに聞こえるようにささやいてくる。


 声を小さくしているとことはきっとアリアには聞かせない方がいい話だろう。

 ボクはこくりとうなずいた。


「私が盗もうとしていたのが神の杖なのよ。あの杖を持って、『アリアちゃんと結婚するのは無理。何とかして』と願えば、願いを叶えてくれるのよ」


 分かりましたという意味を込めて、ボクはもう一度こくりとうなずく。


「いい、サイレント。あの杖の蓄えられている魔力の量からして願いは1回だけだから、絶対に失敗しちゃいけないのよ」

「何をこそこそ話しているデスか?」


「ちょっと……神の杖のことについて話していたんだよ」

 アリアにウソをつこうかとも考えたけど、ボクは正直にこたえる。


「神の杖って、たいていのことを叶えてくれる伝説の杖デスよね?」

「うん、そうだね」


「神の杖があれば、魔王も倒せるデス!! もしかして、さっき院長先生がとろうとしていたものデスか?」

「そうらしいよ」


「そうなんデスね」

 ボクの返事を聞いたアリアは杖に向かって走り出した。


「何やってるのよ、サイレント。このままだとアリアちゃんが魔王を倒すって願っちゃうのよ」


「何だって、魔王を倒すなんて願ったら、世界が平和になっちゃうじゃないか……って、世界が平和になるんだからいいんじゃないですか?」

 魔王を倒せば、一件落着だ。


「魔王を倒すなんて願い、魔力が足りなさすぎて、不発に終わるのよ。杖の無駄遣いなのよ。それなら、サイレントの願いを叶える方が有意義なのよ」


「院長先生の話を聞いた、アリア??」

「何か言ったデスか、師匠?」

 院長先生の声を聞いていなかったアリアは、すでに杖に手をかけようとしていた。


「はやく止めるのよ!!」

「待つんだ、アリア!!」

 ボクは叫ぶ。


「どうしたデスか?」

 アリアは杖を持とうとした手を止める。

 うん、素直。


「あ、もしかして、魔王討伐を師匠が願うデスか?」

「……ってゆーか、その杖で魔王様を討伐を願われたら困るんですけど」

 聞きなじみのない声が背後から聞こえてきた。


「そうそう、困るんだよ、アリア」

 ボクの願いが叶えられなくなっちゃうじゃないか……って、誰?

 ボクは振り返る。


 そこには、白いワイシャツに紺色のミニスカにルーズソックスを履いた姿の女性がいた。


 もしかして、院長先生が気絶して、天使入ってきたのか?

 ボクは院長先生のほうを見る。


「どうしたのよ、サイレント?」

 まだ院長先生の意識は途切れていない。


 ボクはもう一度まじまじと女性を見る。

 あれ?

 この人、どこかであったよな……

 あ、お昼にあった陽キャラ魔族だ!!


「どうして魔族がここにいるんだ?」

 ボクは脚のホルダーからダガーを取り出して構える。


「どうして……って聞かれても、転移魔法で転移してきただけだし」

「ここは、院長先生の結界魔法で転移できないはずなんじゃないの?」


「師匠、院長先生の結界魔法は天使だけにしか効かないんデス」

 あ、そっか、目の前にいるのは魔族だから、入ってくることができたのか。


「……ってゆーか、うちがここに転移できたかどうかよりも、何でうちが魔族だって知っているし?」


 ものすごい目つきでにらんでくる陽キャラ魔族。


「いやいや、今日、警備天使たちに捕まっていたじゃないか」

「……ってゆーか、あんた、あの場にいた人だし?」


 あ、ボクのこと憶えてないんだ。

 ボクから恥ずかしい看板をとったのに。

 さてはこの魔族、ボクよりも記憶力がないんだな。


「そうだけど」

 ボクはうなずく。


「……ってゆーか、うちが魔族だって知っている敵はいちゃいけないし」

「いちゃいけないって、どうする気だ? もしかして、殺すつもりか?」


「殺す……ってゆーか、仲間にするし」

 背後から聞こえた声。


 ボクはとっさに振り返るが、そこには誰もいなかった。

 この魔族、相当素早い。


「……ってゆーか、若い男の血液、美味しそうだし」

 また背後から耳元で囁かれたと思った瞬間、首筋に固い感触がした。


 まずい、血管を切られる!

 咄嗟に動こうとした刹那、左腕をがっしりと掴まれた。


「師匠から離れるデス!!」

 アリアがボクの背後を目掛けて大鎌を振り下ろす。


「……っていうか、大鎌で攻撃してくるとか、怖いし」


 口では怖いと言っているものの、全然怖がっているようには聞こえない。

 むしろ、余裕綽綽といった態度だ。


「ありがとう、アリア。助けてくれて」

「ケガはないデスか?」

 アリアはボクの首筋にケガがないか入念に確認する。


「もちろんだよ」

 心臓をバクバクさせながら、ボクはアリアを心配させないように微笑みかける。


「良かったデス」

「うん、あやうく死ぬところだったよ」


「いえ、彼女は師匠を殺す気は全くなかったデス」


「え? でも、さっき首筋に硬いものがあたったよ? ボクからは見えなかったけど、刃物か何かで命をとろうとしたんじゃないの?」


 どういうこと?


「師匠の首筋に当たったのは、刃物じゃなくて歯デス。命じゃなくて、師匠の血を採ろうとしていたんデス」

「ボクの血? 何でまたボクの血を?」

「彼女は魔王軍の四天王の一人で、ヴァンパイアデスから」


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、院長先生の結界が切れたら、天使たちから追いかけられることを知る。

 サイレント、ヴァンパイアと対峙する。

 



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