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第50話 院長先生、現実に戻る

これまでのあらすじ

 神様、院長先生との賭けに勝つ。

 院長先生、神様と2つの約束を交わす。




 気が付くと、目の前にはカナエルが羽を羽ばたかせ、ゆっくりとこちらに向かってきていた。

 神様と会話をしていたはずなのに、何でカナエルがいるんだ?


 …………そうだ、私はカナエルと戦っている最中だった。

 何とかカナエルに一泡吹かせたいが、魔力が空っぽだから、反撃もできない。

 さて、どうするか……


「まさかと思うっすが、先輩、絶命したっすか?」

「そうなのよ」

 私は全身の激痛に耐えながらなんとか声を出した。


「死人がしゃべるわけないっす。本当に、神様から知識を賜ったインフィニティ・インテリジェンスっすか?」


 カナエルはあきれ口調だ。

 私だって死んだふりをしたかったけど、神様に決してあきらるなと言われたら、がんばらないわけにはいかない。


「一度死んでしまって、頭の悪いゾンビになって戻ってきたのよ」

 時間稼ぎのためになんとか私は会話を続ける。


「ゾンビになったなら、ホーリィの聖なる槍でお清めしないといけないっす!!」

「ホーリィでお清めって、まだホーリィを唱えるほどの魔力が残っているのよ?」


 アーティファクトがあるとはいえ、2回もホーリィを唱えたのだ。

 すでに魔力が尽きていてもおかしくはない。


「もちろんっすよ。あと1回は唱えられるっす。持つべきものはアーティファクトっすね。魔畜のペンダントのおかげで、魔力が尽きずに済んでいるっす。アーティファクトに感謝っす」


 アーティファクトにキスをしながら自信たっぷりにこたえるカナエル。

 どうやら魔力が残っているというのはウソではなさそうだ。


 こちとら、魔力残量はほぼ0だというのに。

 ホーリィなんて唱えられたら、今度こそ三人ともあの世行きだ。


 うまく魔力を運用しないと、神タワーに天使を入れなくする結界魔法の魔力もなくなってしまうくらいだ。


 あ、そうだ。

 この塔から出るように誘導すればいいんだ。


 カナエルは天使だから、ここから追い出せば、私の結界魔法の影響でここに入れなくなる。

 そうなれば、作戦を考える時間が生まれる。


 よし、これだ。


「ホーリィでお清めなんかしないで、神タワーから出て行くという選択肢もあるのよ」

「その選択肢はないっす。結界魔法でここに入れなくなってしまうっすから」


 ちっ、私が結界魔法を使っているのを憶えていたか。


「さて、時間稼ぎの悪あがきはそろそろいいっすか?」

「そうね、こちらも準備が整ったのよ」


 全身に激痛が走る体を起こしながら、はったりをかます。

 どうしよう、全然何も準備なんかできていない。


「はったりなのがバレバレっすよ。魔力もなくて満身創痍じゃないっすか」

「ためしてみるといいのよ」


 ふふふ……となんとか笑ってみせる。


「それじゃあ、元天使長官の胸を借りるつもりで、ホーリィを唱えさせていただくっす」


 魔畜のペンダントの力を借りて、カナエルはみるみるうちに魔力を高め、いつでも光の槍を発動できるようにした。


 サイレントとアリアちゃんの方を見るが二人ともまだ目を覚ましそうにない。

 本当にどうすればいい。


「焦っているみたいっすね、インフィニティ・インテリジェンス。最後に訊いておくっす、私の部下にならないっすか?」

「ならないのよ」


「交渉決裂っすね。あなたの知識が天界で管理できないとなると、あなたは天界にとって脅威でしかないっす!!」


 叫びながらホーリィを投げつけてくるカナエル。

 私には魔力もないし、体も動かない。


 もうあきらめるしかない。

 このままだと、アリアちゃんもサイレントも巻き添えを食らってしまう。

 ごめんね、二人とも。


「永遠にさようならっす!!」

「ホーリィ!!」


 私は光の槍に当たる瞬間、カナエル以上の魔法量のホーリィを唱えて、カナエルの光の槍を吹き飛ばした。


「形勢逆転なのよ!!」

 満身創痍でボロボロではあるが、なんとかホーリィを投げることができた。

 全身激痛で、もう今にも気絶しそうだ。


「…………どこに……そんな魔力を隠し持って……いたっすか?」

 今にも気絶しそうな弱弱しい声で尋ねてくるカナエル。


「それは企業秘密なのよ」

「そうっすか……」


 がくっと倒れるカナエル。

 どうやら気絶してしまったようだ。




 ――時は数分前にさかのぼる――


 このままだと、アリアちゃんもサイレントも巻き添えを食らってしまう。

 ごめんね、二人とも。


 私はここまでなのよ、サイレント。

 遺言も残せないみたいだけど、せめて何か残しておかなければ……


 あ、そうだ、この子なら、孤児院にいたころ、遊びの一環と称して、魔力を同期して、送りあったことがある。


 残った私の魔力をサイレントに渡しておくのよ。


 魔力を相手に送ったら、送った魔力の80パーセントほどになってしまうけど、ないよりはましなはずだ。


 私はサイレントの手を握る。

 握った手に魔力を送るが、サイレントに魔力を送れない。

 なんで魔力を送れないんだ?


 もしかして、気絶させているから、サイレントの魔力の容量がいっぱいなのか?

 サイレントはアサシンだから、魔力の限界量が少ないのだろう。


 どれどれ、サイレントの最大キャパはどれくらいまで成長したのかな?

 私は手を握りながらサイレントの魔力量をはかる。


 ん? おかしくない?

 カナエルが今唱えているホーリィの魔力量の10倍はある。


 いやいや、そんなことありえるか?

 天使の平均魔力量は人間族の平均魔力量の10倍くらい。


 その天使の10倍くらいの魔力量を持っているっていうの?


 もう一度サイレントの手を握りなおす。

 間違いない。


 この子、めちゃくちゃ魔力を持っている。

 普段、気配を消しているから、当然魔力も感じられないけど。まさかこんなに魔力を持っているなんて……


 どんだけ苦労すれば、こんな量の魔力量を保有できるのだろう……

 いや、そんなこと今はどうでもいい。


 迫りくる脅威から身を守らなければ。

 ごめん、サイレント。


 魔力をちょっと借りるね。

 サイレントの魔力を私の魔力に変換して全力でホーリィを唱えた。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、魔力が空っぽだったので、カナエルを倒せないと諦める。

 院長先生、サイレントの魔力を借りて、カナエルを倒す。



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