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第49話 神様、持ち上げられない重たい岩をプレゼントする!?

これまでのあらすじ

 院長先生、走馬灯を見て、天界で神様と会話をしていた時のことを思い出す。

 院長先生、神様に無理難題を吹っ掛ける。










「その岩が全知全能の神でさえ持ち上げられない重たい岩だ。君にプレゼントしよう」

「この岩、どう見ても重そうには見えないのよ」

 私でも持ち上げられそうだ。


「見た目じゃ分からない」

「持ち上げてみたら分かるのよ?」

 私はしゃがみ込み、岩を両手で抱えて持ち上げた。


「なんだ、持てるじゃないのよ、この岩。私が持てるんだから、当然神様だって持てるに決まっているのよ。インチキなのよ」


「インチキではない。よく見ろ」

「よく見ろって言われても……」

 私は持っていた岩を床において、まじまじと見た。


「この岩、私にも解析できない魔法が施されているのよ」

「その通り。その岩をオレが持ったら、オレと君以外のこの世のすべての物が崩壊するようにした」


「………………は?」

 私は聞き返す。


「その岩をオレが持ったらこの世界が崩壊する」

 世界が崩壊?


 理解が追いつかない。


「何でそんな岩を作ったのよ? 私が言ったのは神様でも持ち上げられない岩なのよ」


「だから、これがオレでも持てないほどの重い岩だ」

「どこが重いのよ? ただの危ない岩じゃないのよ」


「それならば問おう。もしも、付き合って日が浅い男性が誕生日プレゼントに、母親の形見のペンダントを渡してきたら君ならどう思う?」

「それは重いのよ」


「それと同じだ。神様が好意を寄せる天使に、二人きりになりたくて世界を崩壊させる岩を渡してきたら君ならどう思う?」

「重すぎるのよ!!」


「やはりオレは全知全能。神様でも持てない重たい岩を作った」

「重たいって、そういう意味じゃないのよ!」


「だが、神様でも持てない重い岩だろう?」

「持とうと思えば神様だって普通に持てるのよ!!」


「そんなに持ってほしいなら仕方がない。その岩を持とう。今すぐにだ!!」

 神様はしゃがみ込み、岩を持とうとした。


「お願いなのよ。持たないでほしいのよ」

 神様と二人で過ごすなんて絶対に嫌だ。


「なぜだ? オレがこの岩を持ちさえすれば、君の勝ちだ。オレは全知全能ではないと証明されるんだぞ」


「私がその代わりに世界で神様と私だけという最悪なシチュエーションになるのよ、絶対に持たないでほしいのよ」

 私は頭を下げた。


「そこまで君にお願いされたなら、この岩は持てないな。……ということで、オレの勝ちだ」

「こんなのずるいのよ」


「ずるくはない。なぜならオレは全知全能だから」

「神様にも持ち上げられない岩じゃなくて、もっと矛盾したものを提案すればよかったのよ」

 激しく後悔。


「君、オレが最初に創ったものを知っているか?」

「藪から棒に何なのよ?」


「いいから、こたえろ」

「闇と光を同時に作ったのよ」


「それなら光の特性を知っているか?」

「当然なのよ。光はうねうねとした波を作りながらまっすぐ進むのよ」

 私は、はっとさせられた。


「気づいたか。その通り。光は波を作りながらまっすぐ直進に進む。つまり、光そのものが矛盾した存在なんだ。オレは、すでに矛盾したものは作ってしまっているんだ」


 はぁ……とため息をつく神様。

 そうだ、神はすでに矛盾を突破していたのだ。


「矛盾したものも作ろうと思えば秒で作れると断言する。これでも君は負けを認めないつもりか?」

「私の負けなのよ」


 やっぱりこの神様には敵わないのよ。


「それでお願いは何なのよ?」

「そうだな……」


 顔を近づけてじっと私の瞳を覗き込んでくる神様。

 最初からお願い事は決めているくせに、考えているフリはやめろ。


 こういうところがマジで鬱陶しい。


「オレの考えたルールに縛られすぎるな」

「ルールに縛られすぎるな…………って、どういうことなのよ?」

 私は神様の真似をしながら尋ねる。


「確認するまでもないが、俺が作った天使のルールは覚えているな?」

「人を助けるときは、因果律を読み、世界との調和に影響がない人間しか助けてはいけない……なのよ?」


「その通りだ。天使がAさんを助けて幸福にさせた結果、Bさんを不幸にしてしまっては本末転倒だからな」


「だから天使は、困っているAさんを助ける前に、Aさんを助けたら今後どのような結果になるか未来を魔法で確認するのよ。確認した結果、誰にも何の影響も及ぼさなければ、Aさんを助けることができるのよ」


「このオレの作ったルールに縛られすぎるな」

「縛られすぎるな……とはどういうことなのよ?」


「自分の心の思ったとおりに行動しろってことだ」

「そんなのありえないのよ」


「なぜありえないと言い切れる?」

「私はインフィニティ・インテリジェンス。神様から賜った知識のおかげで、感情よりも理性が優先するのよ」


「なるほど。だが、約束しても問題ないだろ?」

「分かったのよ、約束するのよ」


「それともう一つ」

「まだあるのよ?」


「もう一つは、豆腐の角で頭を打って混乱するかどうかの議論で私が勝った分だ」

「分かったから、さっさと言ってほしいのよ」


「例えば、近い未来、君がコソ泥をしようとして、ピンチに陥って、走馬灯を見るようなことになったとしても、決してあきらめるな」

「そもそも、私がコソ泥なんてするわけないのよ!!」


「ああ、分かっている。だが、忘れるな。君の本当の武器は、その膨大な知識を使って、工夫してピンチを切り抜けるところだ」

「そんなの、言わなくたって分かっていることなのよ」


「そうか…………あ、豆腐が空から落ちてきた!!」

「豆腐が空から落ちてきたんだとしたら、それは神様の仕業なのよ!!」

 私が叫んだ瞬間、目の前が白くなっていった。


 どうやら、豆腐の角に頭をぶつけたらしい。


忙しい人のためのまとめ

 神様、院長先生との賭けに勝つ。

 院長先生、神様と2つの約束を交わす。

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