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第47話 院長先生、カナエルに提案される

これまでのあらすじ

 院長先生、カナエルを油断させるためにサイレントたちを裏切ったフリをしていた。

 院長先生、カナエルに攻撃され重傷を負う




 カナエルの微笑みにイラついた私は、右手に激痛が走っていることも忘れ、左手でカナエルに殴りかかる。


 私の攻撃に気づいたカナエルは背中の羽を羽ばたかせ、天井近くへと飛び、私と距離をとった。


「攻撃魔法が使えないからって、素手で攻撃とは、野蛮っす。堕ちるところまで堕ちたっすね」


 上空から残念なものを見るような目で見てくるカナエル。


「何を言っているのよ? 堕天使になっても攻撃魔法は使えるのよ」

「言い方を間違えたっす。今のあなたは攻撃魔法が使えるほど魔力が回復していないって言いたかったっす」


「魔力が回復していないのはあなたじゃないのよ? 今、私に全力でホーリィを唱えたのよ」


 私の魔法防御を破ってくるくらいの威力だ。

 私と同じくらい、かなりの魔力を消費したはずだ。


「おやおや、とんちんかんなことを言ってくるっすね。右手が痛すぎてこのペンダントが目に入っていないっすか?」


 カナエルは自分の胸元にある金色のペンダントを触わってみせた。


「魔力を貯めることのできるアーティファクト・魔畜のペンダントをしていたのよ」


「そうっす。さっきのホーリィはペンダントに貯めていた魔力を使ったので、私自身はまだ魔力を全然使っていないっす。それに比べて、あなたの魔力はカラカラっす」


「あら? 私はまだあなたの前で魔法を使っていないのよ。どうしてカラカラだと言い切れるのよ?」


 私は残っている自分の全魔力を左手に集中させる。


「魔力が残っているフリをする必要なんてないっす。あなたはユニコーンを倒すためだけに、森を平地にするくらいの膨大な魔力を使い果たしたはずっすから」

「なんで知っているのよ?」


 私は恐怖で恐れおののいたかのように左足を一歩ひき、半身になって左手をカナエルから死角になるように隠した。


 カナエルが視線を少しでも私から逸らせば、カナエルに気づかれることなくサイレントとアリアちゃんに回復魔法・ヒールをかけられるだろう。


「ここはあなたが攻撃魔法で破壊した森の近くに浮かぶ天界っすよ? 気づかない方がおかしいっす」


 やれやれ、こんなことまで説明しなくてはいけないのかと、両手を天井に向け、首を振りながらあきれるカナエル。


 カナエルの視線が私から外れた瞬間、私は即座に二人に無詠唱で必要最低限の魔力でヒールをかけた。


 これで二人ともじきに気絶から回復するだろう。


「あらら、ちょっと目立ちすぎちゃったのよ」


 私は自然な会話を意識しながらカナエルの顔をちらりとだけ覗き込む。

 どうやら、私を不審には思っていないようだ。


「そこで魔力が戻っていないインフィニティ・インテリジェンスに良い提案があるっす」

「提案? 聞いてあげるのよ」


 私に攻撃しておいて、今更どんな提案をする気だ?


「今回の窃盗事件、なかったことにしてあげるので、そこの人間たちとは縁を切って、天界に帰ってこないっすか?」

「私が天界に戻る? そんなの、他の天使たちが許さないのよ」


 私のせいで神様が亡くなったようなものなのだ。

 許されるわけがない。


「大丈夫っす。現天使長官のこのカナエルが頭を下げて、元天使長官の先輩を参謀として雇うと説明すれば、みんな納得するっす」


「ああ、結局、あなたは私の持つ知識が欲しいってことなのよ?」


 欲しいのは私じゃなくて私の持つ知識。


「そりゃあそうっすよ。先輩は神様から膨大な知識を賜っているっすから」


 なるほど、私が神様から賜った知識を知っていたのか。


「私の知識であなたは何を為したいのよ?」

「侵攻してくる魔族を逆に進行して支配下においてやるっす」


 無邪気ににこりと笑うカナエル。


「なるほどなのよ」

「納得してくれたっすか? それなら手を取ってほしいっす」


 カナエルは高い場所から手を差し出してくる。


「お断りなのよ」

 私は静かに笑顔でこたえる。


「聞き間違いっすかね? 今なんて言ったっすか?」

「お断りだって言ったのよ!!」


 今度は叫んでいた。


「ふざけるなっす!! どうしてその膨大な知識を天界のために使わないっすか??」

「私は神様との約束を守るだけなのよ!!」


「約束? 神様の作ったルールを破ったくせに、何が約束っすか? 全知全能なる神様はどうして私じゃなくて、こんな天使に天使長官を任せていたっすか?」

「あんなやつが何を考えていたかなんてわかるわけないのよ!!」


「全知全能なる神様をあんなやつするやつは許さないっす。熱いお灸をすえてあげるっす」

 カナエルは魔力を両手に集め始めた。


 しまった、カナエルを怒らせてしまった。


 おのれ神様。

 死んでなお私を苦しめるとは……


 私は残っていた全魔力を左手に集める。


「その程度の魔力で私のホーリィが防ぎきれると思っているっすか? そこで気絶している人間と共に、天国で神様に謝ると良いっす!! ホーリィ!!」


「二人は絶対に守ってみせるのよ。ホーリィ!!」


 カナエルのホーリィを打ち破られないと悟った私はホーリィを唱えたあと、サイレントとアリアちゃんに累が及ばぬように覆いかぶさった刹那、激痛が全身を襲った。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、カナエルに天界に戻ってこないかと提案される

 院長先生、断った結果、カナエルに攻撃される





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