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第46話 院長先生、カナエルと戦う

これまでのあらすじ

 院長先生、サイレントに回復魔法をかけたフリをしてアリアの信頼を得る。

 院長先生、信頼を得たアリアを気絶させる。






「いえいえ、お礼を言われるまでもないっす。それよりも、この2人を牢に入れる手伝いをして欲しいっす」

「もちろん、手伝わせていただくのよ」


 笑顔を保ったまま、後ろに手を組んで私はこたえた。


「私はこの男を抱えるので、インフィニティ・インテリジェンスは女の方をお願いできるっすか?」

「分かったのよ」


 私はカナエルから目を離さずに、アリアちゃんの体を丁寧に抱え上げる。

 私がアリアちゃんを抱えるのを確認してから、カナエルは気絶しているサイレントにゆっくりと近づき、しゃがみ込んだ。


「本当に気絶しているっすね」

「私が首に手刀を入れたんだから当然なのよ」


「芝居かと思ったっす」

「疑っていたのよ?」


「もちろんっす」

 カナエルは即答すると、床に落ちていたサイレントのダガーを拾い上げ、私ののど元に突き付けた。


「サイレントとアリアちゃんを気絶までさせて裏切って、カナエル側についたというのに、これは一体どういうことなのよ?」

「のど元にダガーを突き付けられているのに冷静っすね」


「冷静に見えるだけなのよ。内心ではドキドキしているのよ」

 私は少し大げさにこたえる。


「白々しいっす。最初から人間の仲間を裏切ったフリをして、私に攻撃する気満々だったっすよね?」


「根拠もないのに、どうしてそんなことを言うのよ。ショックなのよ」

「根拠ならあるっす。私から目を離さずにずっと見続けているっすよね?」


「それはあなたも同じなのよ。ずっと疑いの目でこちらを見てくるから警戒しているだけなのよ。根拠としては薄いのよ」

 そう、これはお互い様だ。


「それなら、どうして、人間たちを気絶させたっすか? 昔のあなたなら、ホーリィの魔法で脚を狙っていたっすよね?」

「それは2人だったからなのよ。私のホーリィは1槍しかでないから、1人を槍で刺したら、1人が逃げちゃうのよ。そうなったら、捕まえるのも大変なのよ。それなら、最初から手刀で気絶させたほうがいいのよ」


「確かにそうっすね」

 どうやら納得してもらえたようだ。


「誤解が解けたのなら、そろそろダガーを降ろして欲しいのよ」

 私はお願いするが、カナエルはまったくダガーを降ろそうとはしない。

 まだ何か疑っているのだろうか?


「最後に訊いてもいいっすか?」

「何なのよ?」


「どうして、あなたは私にバレないように密かにアンチ転移魔法を使って、777階への入室を禁止させているっすか?」


 私はカナエルの言葉を最後まで聞く前に、後ろへと逃げていた。


「無言で逃げたってことは、やはり人間側についているってことっすよね?」


 私が動いた刹那、カナエルはサイレントのダガーを投げつけていた。

 飛んでくるダガーを目にあたる寸前で右手の指で人差し指と中指ではさんで受け止める私。


「その通りなのよ。いつから気づいていたのよ?」

 私はこくりとうなずき、時間稼ぎのために会話を無理やり広げる。


「あなたが出張ってきたときからっす。人間じゃ天使の私に攻撃しても、すぐに回復してしまうので、体力ばかりが削られ、じり貧で負けてしまう。だから、堕天使であるあなたが私に攻撃することができれば、回復できずにすぐに決着はつけられると思ったはずっす」


「その通りなのよ」

 私はあえてこくりとだけうなずく。


「そこであなたは一計を案じて、人間たちを裏切ったフリをして私の油断を誘ったっす」


「その通りなのよ」

 私はあえてこくりとだけうなずく。


「でも、私は油断しなかったっす。それどころか、より警戒していることに焦ったあなたは、仲間を呼ばれぬように気づかれないように魔法を唱えていたっすね?」


「その通りなのよ」

 私はあえてこくりとだけうなずく。


「さっきから同じように『その通りなのよ』しか言っていないってことは、ここにいるインフィニティ・インテリジェンスは幻覚の類っすね?」


「その通りなのよ」

 私はあえてこくりとだけうなずく。


 よし、幻覚だと気づいてくれた。

 そのまま幻覚じゃない本体を探しはじめろ。


「私の目の前のインフィニティ・インテリジェンスが幻覚なら、ホーリィで攻撃をしても逃げないはずっすよね?」


 自分の魔力を高めながら尋ねてくるカナエル。


 もしかして、探りをいれているのか?

『その通りなのよ』とうなずく私が幻覚のフリをしている本体だと確信を持っているのだとしたら、こんな探りなどいれずに、即座にホーリィで串刺しにすればいいのだ。


 でもあえて探りをいれているということは、目の前の私が本物かどうか確実にわかっていないということだろう。

 これは心理戦になりそうだ……


「その通りなのよ」

 私はこくりとうなずいた瞬間、カナエルの視線が床に向いていることに気づく。


 床の先にはサイレントが倒れていた。

 しまった。

 最初からカナエルは私ではなくサイレントを狙っていたってことか。


「私を油断させるためだけに人間たちを気絶させたのは悪手だったっすね。ホーリィ!!」

「させないのよ」


 魔法での相殺が間に合わないと思った私は、前に出てサイレントの代わりに光の槍ホーリィを右手に食らう。


「ぐっ」

 血液がドバドバと流れ出る。


「痛いっすか? 私のホーリィ。痛いなら魔法で回復したらどうっすか?」

「その必要はないのよ」


 私は服を破り、右腕を口と左手でしばって止血をする。


「そうっすよね。天使が堕天使の攻撃をくらったら魔法で回復できないように、堕天使も天使の攻撃をくらったら魔法で回復できないっすもんね」

 カナエルは腕を広げ、私を見下ろしながら静かに微笑んだ。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、カナエルを油断させるためにサイレントたちを裏切ったフリをしていた。

 院長先生、カナエルに攻撃され重傷を負う



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