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第45話 院長先生、サイレントに回復魔法をかける!?

これまでのあらすじ

 アリアが苦戦しているので、サイレントが戦おうとする。

 院長先生、カナエルと戦おうとするサイレントを止め、自分が戦おうとする。





 


 さてと、うまくサイレントを気絶させることができたけど、これからどうしようか?


「師匠を裏切ったんデスか?」「神の杖の窃盗犯の首謀者を差し出して自分だけ許してもらおうという魂胆っすか?」


 左の方向から大鎌をかまえたアリアちゃんが、右の方向からは両腕を広げたカナエルが2人同時に話しかけてきたが、これくらいの情報処理なら朝飯前だが、なんて返答するべきか迷うところだ。


「ごめんなさいなのよ、でも許してほしいのよ」

 右か左かどちらを向くか悩んだあげく、私は二人の中間地点の方向で頭を下げる。


「許してあげないデス!!」「許すわけないっす!!」

「それならどうしたら許してくれるのよ?」


 私は頭を下げたまま、上目遣いで尋ねた。


「まずは、師匠を回復させるデス!!」「もう一人の仲間も差し出せば考えなくもないっす!!」


 なるほど。

 二人の要求はわかった。


「分かったのよ、要求通りにするのよ」

 うなずきながら、私はカナエルに視線を送る。


「天使に視線を送ったということは、やはり天使と通じていたデスね」


 人は自分の信じたいものを信じるというけれど、魔族でも同じみたいだ。

 アリアちゃんは私を信じきれないから、カナエルに視線を送っただけで通じ合ってると言ったに違いない。


 大鎌を持ち直し、私を警戒するアリアちゃん。

 私って、そんなに信頼がないんだな。


「ヒール!!」

 私は少しだけがっかりしながら、その場にしゃがみ込み、サイレントの体に触れながら叫んだ。


「院長先生、師匠に回復魔法をかけてくれたんデスか!?」

 アリアちゃんはびっくりしながら、尋ねてくる。


「そうなのよ、アリアちゃん」


「それなら、どうして、師匠に攻撃したんデスか?」

「私がカナエルと戦おうとしたときに、心底安心した顔をしたものだから、私イラっときちゃって、思わず手刀を入れちゃったのよ。ごめんなさいなのよ」


「それなら、院長先生はアリアたちの仲間ってことだったんデスよね?」

 アリアちゃんは鎌を持っている手に力をいれながら、私に確認をとってきた。


「そうなのよ」

 私はニッコリと笑いながらうなずく。


「疑って、ごめんなさいデス」

 アリアちゃんは私に頭を下げてくれた。


「いいのよ、アリアちゃん。私がサイレントに手刀をいれたのが良くなかったのよ」


 アリアちゃんは魔族だけど、本当に素直で良い子だ。

 素直で良い子すぎて、抱き着きたいくらいだ。

 ここでアリアちゃんに抱き着いたら怒るからしないけど。


「やはり、我々にたてつく気っすか、インフィニティ・インテリジェンス!! こうなったら、そこに倒れている人間もろとも牢屋に入れてやるっす!!」

 激昂するカナエル。


「アリアちゃん、直にサイレントが目を覚ますはずだから、それまではこちらに来て、カナエルからサイレントを一緒に守ってほしいのよ」

「分かったデス! 瞬動!!」

 アリアちゃんは一瞬でこちらに来てくれた。


「ありがとう、アリアちゃん」

 私は丁寧にお礼を伝える。


「お礼なんかよりもカナエルを警戒するのよ」

「分かったデス」

 アリアちゃんは私に背を向け、カマエルと対峙した。


「ふっふっふっふっ」

 カマエルが突然笑い出す。


「何がおかしいデスか?」

「そりゃあ、おかしいっすよ。だって、インフィニティ・インテリジェンスは私側なのに、あなたはインフィニティ・インテリジェンスを信じて背中を向けているんっすから」


「そんなことないデス。院長先生はアリアたちの仲間デス」


 必死に否定してくれるアリアちゃん。

 あなた、本当に良い子なのよ。

 魔族とは思えないほどまっすぐなのよ。


「インフィニティ・インテリジェンスは神様も裏切るくらいのどっちつかずのコウモリ女っすよ。どうして仲間だと言い切れるっすか?」

「院長先生は師匠に回復魔法をかけてくれたからデス」


「インフィニティ・インテリジェンスがその人間に回復魔法をかけたっすか? そんなはずないっす」

「あなた、目が悪いデスか? アリアの目の前で師匠に回復魔法をしたのを見たデス」


「本当に気づいてなかったっすか? インフィニティ・インテリジェンスは『ヒール』と叫んだだけで、回復魔法をかけたわけじゃないっすよ」

「本当デスか?」


 アリアちゃんは私の方を振り返ろうとした瞬間、私はアリアちゃんの首に手刀をいれた。


「何でデスか?」

 驚きの声をあげるアリアちゃん。


「サイレントにもこたえたけど、私は常に優しいものの味方だからなのよ」


 私がこたえると同時に、アリアちゃんは気絶してぱたりとサイレントの隣に倒れこんだ。

 よし、うまくアリアちゃんも気絶させられた。


 あとは、このカナエルとうまく交渉するだけなのよ。


「天使長官様、今回は首謀者の二人を気絶させたので、今回はどうか見逃していただけないデスか?」

「さすがのあなたも、私と戦って、天界を敵に回したくないってことっすか?」

「そうなのよ」


「仕方ないっすね、今回だけ特別っすよ」

 あきれ口調で私の提案をあっさりと飲んでくれるカナエル。


 天界を追放される前の彼女なら『私の足を舐めたら見逃してあげるっす』……とか言い出すタイプだったが、どうやら私がいない間に性格が変わったようだ。


「ありがとうなのよ」

 私は頭を下げて、カナエルに微笑んだ。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、サイレントに回復魔法をかけたフリをしてアリアの信頼を得る。

 院長先生、信頼を得たアリアを気絶させる。



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