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第43話 アリア、カナエルと戦う

これまでのあらすじ

 院長先生、天使長官カナエルに捕まる。

 サイレント、院長先生を助けようとするが、カナエルがAランクと聞いて、降参する。





「あれ? かかってこないっすか? もしかして、この天使長官カナエルの強さにビビッてるっすか?」


 カナエル様はボクをあおってくる。

 誰がお前なんかにビビるか……と言い返せるはずもなく黙りこくるボク。


「違うデス! Aランク程度の弱さだと分かった師匠は、あなたの相手をアリアに譲ってくれたんデス」


 それも違うよ、アリア。

 ボクにも勝てないアリアにAランクを譲るわけないじゃないか。


「あなたが私を倒すっすか? 冗談はよして欲しいっす」

「冗談じゃないデス」

 アリアは大鎌をかまえ、カナエル様と対峙する。


「やれるものならやってみるといいっす!!」

「それじゃあ、お言葉に甘えるデス。瞬動!!」


 カナエルがまばたきをした一瞬で距離をつめるアリア。

 相手のスキをついた見事な動きだ。


 でも相手はAランク。

 すぐに対応してくるに決まっている。


「え? 何で、さっきまで遠くにいたあなたが今、ここにいるっす?? 一体何が起きたっす??」


 ……って、対応していないんかい!


 アリアの速さを目で追えていないって、どんだけ動体視力がないんだよ!!


 顔に大量の返り血を浴びているのに、何が起こっているかすらわかっていないって、本当にAランクなの?


 怪しいな、院長先生の情報。

 ウソの可能性がおおいにある。


「カナエル様がまばたきをした瞬間、アリアが瞬動のスキルでカナエル様と距離を詰めた後、大鎌を振り下ろして、カナエル様の右手を手首から斬りおとしたんですよ」


 カナエル様の強さを疑いながらも揉み手をしながら解説をするボク。


 べ、別に、カナエル様が強さを隠しているかもしれないから下手に出たわけじゃないんだからね。

 勘違いしないでよね。


「本当っす。私の右手がなくなっているっす!! 痛いっす」

 カナエル様は自分の右手がないのに驚いた声をあげる。


「言われてから気づくなんて弱すぎデス」


 アリアはもう一度大鎌を振り下ろす。

 今度はカナエル様の左手が斬りおとされた。


「ぎゃー、痛いっす、痛いっす」


 カナエル様は自分の腕を見続け、絶叫し続ける。

 うん、たった今、間違いなく確信した。


 カナエル様……いや、カナエルはAランクなんかではないと。

 絶対に、Fランクだ。


 ボクが『弱い者いじめをしたくない』なんて言ったもんだから、ボクをたきつけるために、院長先生がAランクだとウソをついたのだろう。

 まったく、人騒がせな話だ。


「院長先生、今のうちに逃げるデス」


 両手が斬りおとされたので、院長先生に逃げるように促すアリア。

 アリアに促され、院長先生はボクに向かって走ってきた。


「サイレント!!」「院長先生!!」

 感動の再会場面だ。


「どうして、助けてくれなかったのよ! この薄情者!!」

 ボクの顔面をグーでパンチしてくる院長先生。


 それは、院長先生がカナエルはAランクだなんてウソをつくからでしょ。


「さあ、人質も解放したことデスし、おとなしく負けを認めるデス」

 そうだ、そうだ!!

 Fランクのカナエルなんて怖くないぞ。


「痛いっす、痛いっす、痛いっす、痛いっす、痛いっす、痛いっす、痛いっす」

 アリアの話も聞かずに、可愛い少女のような顔を歪ませ、独り言をつぶやき続けるカナエル。

 怖いよ。


「でも、その痛みは生きている証拠っす。生きるって最高っす。つまり痛みは最高ってことっす!!」


 痛みが最高?

 何を言っているんだ、カナエル。


「痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす!!」

 可愛い顔してマジでやばい天使なんじゃないか、カナエル。


「訳の分からないことを言っていないで、さっさと降参するといいデス!!」

 アリアも怖くなったのか、眉をひそめながらカナエルに降参を促す。


「ヒールっす!!」

 カナエルが叫ぶと、斬りおとされたはずの手がきれいさっぱり元通りになっていた。


 ん?

 ヒールできれいさっぱり元通り?


「院長先生、聞いてもいいですか?」

 ボクはカナエルとアリアの戦いを見ながら尋ねる。


「どうしたのよ、サイレント」

 院長先生も戦いを見ながら、こちらに顔を向けさえせずにこたえてくれた。


「ヒールって、軽いすり傷を治す程度の魔法でしたよね?」

 少なくとも、昔のパーティーメンバーのブリジットのヒールでは軽いすり傷程度の傷しか治していなかったはずだ。


「そうなのよ。消費魔力が少ないから、普通はその程度しか治せないのよ」


「ヒールで斬りおとされた手が元に戻るものなんですか?」

「ふつうは戻せないのよ」

 ですよね。


「でも、カナエル様は戻しているじゃないですか」

 ボクの所見では傷口すら見当たらない。


「さすが、私の後釜カナエルなのよ、ただのヒールでそこまで回復させちゃうとは。以前よりだいぶ強くなっているのよ」


 うん、ボクは知っていた。

 カナエル様はAランクで間違いないって。

 カナエル様はFランクだ……なんてバカにしたやつの顔が見てみたいくらいだ。


「えっと、アリアさんでしたっけ、何か私にしたっすか?」

 今まで何事もなかったかのようにひょうひょうとした態度で小首をかしげてくるカナエル様。


 ぶちり。

 アリアから何かが切れる音がした。


「小間切れにしてやるデス!」


 アリアは瞬動を何度か使い、大鎌でカナエル様をものすごい速さでめった刺しにする。

 あまりにも速くて、まるで分身が攻撃しているかのようだ。

 成長したね、アリア。


「痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす、痛いのは最高っす!!」

 カナエル様は避けるでもなく、アリアの攻撃をすべて真正面から受け止める。


「ヒールっす!!」

 そしてアリアの攻撃が終わると最後にヒールだけを唱えた。


「はぁ、はぁ、私の攻撃がまるで効いてないデス」


 連続技をしたせいで、疲れてしまい、息も絶え絶えにつぶやくアリア。

 そりゃあそうだ。

 こんなに攻撃してれば、疲れもするよ。


「はぁ、はぁ、こんなに何度も何度も素早く攻撃をしてくる人は初めてっす」


 初めての経験に興奮して、よだれをたらーっとたらしながら息を荒らげるカナエル様。

 カナエル様からは疲れは微塵も感じさせていない。


 そりゃあ、そうだ。

 こちらはヒールを何回かしか唱えてないんだから。


「もっと、もっと私と戦うっす。私の魔力とあなたの体力、どちらが先に切れるか勝負っす!!」

「アリア、わざわざ魔力と体力の勝負に持ち込むんじゃない!! 絶対にこちらが不利になる」


 別に相手に言われた勝負で勝敗を決しなくていいんだ。


「分かっているデス、師匠」

 良かった。

 分かってくれていたか。


「そうは言うけどサイレント、それならアリアちゃんは何で勝負すればいいのよ?」

 確かに、院長先生が言うこともごもっともだ。


 何か良い方法を考えろ!

 考えるんだ、サイレント。


「そうだ、人ジゴクの幻覚を使うんだ!!」

「師匠、今から人ジゴクの幻覚を使うと相手にばらしたら、警戒されて幻覚魔法をかけられないデス!!」


 あ、しまった!!

 ボクのバカ!!


忙しい人のためのまとめ

 アリア、カナエルと戦い、楽勝かと思いきや、苦戦する。

 サイレント、アリアに作戦を授けるが、失敗する。



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