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第40話 サイレント、神タワーへ行く

これまでのあらすじ

 院長先生、フラットさんをまく。

 院長先生、アリアに寝返る。




「何の罪もないフラットさんに罪をなすりつけようとしていたのに、何を言っているんデスか」

院長先生にものすごく冷たい目を向けるアリア。


「違うのよ、アリアちゃん。無罪のフラットに罪をなすりつけてでも、私はサイレントを止めたかったのよ!!」


 …………どういうこと?

 何か良いことを言っている雰囲気を醸しだしているけれど、全然意味がわからないよ、院長先生。


 そもそも、院長先生は純真にフラットさんに罪をなすりつけようとしていただけだよね?

 さすがにこんな雰囲気だけのウソ、アリアも信じないだろう。


「そうだったんデスね」


 信じるんかいっ!!

 純真すぎるよ、アリア。


「当たり前なのよ、盗みはいけないことなのよ」

 どの口が言うんだ。


「そうデス、院長先生が言うように、盗みはいけないことデス。やってはいけないデス」

「そうだね」

 アリアの強い語気に圧倒されこくりとうなずくボク。


「分かってくれたんデスね、師匠。それなら、豪華景品をもらいにいくデス」


 いやいや、ボクたちはもらいには行けないんだよ。

 ボクは『どうするんですか?』……と院長先生に口パクをする。

 院長先生はあごに拳を当てて考え始めた。


「アリアちゃん、私とサイレントはちょっと行くところがあるから行ってくるのよ」

「どこに行くんデスか? もしかして、さっきの話はウソで神の杖を盗みに行くつもりデスか?」


 するどい、アリア!

 その通り!!


「違うのよ」

「それじゃあ、どこへ行くデスか?」


「実はね、アリアちゃん。神タワーの警備がきちんと警備されているかどうか、天使の長官から依頼がきていたのよ。そうなのよね、サイレント?」

 アリアにウソをついた上に、ボクを共犯にしたがる……


「そうなんだよ、アリア」

 ボクはしぶしぶうなずいた。


 あーあ、院長先生と共犯になっちゃった。


「神タワーに侵入することは、天使たちの警備の脆弱性を指摘することでもあり、天使に見つからないようにするための修行でもあるのよ、アリアちゃん」

「修行!? それならアリアも行くデス!!」


 目を輝かせるアリア。

 アリアに修行というワードはNGなんだよ、院長先生!!


「だめなのよ、アリアちゃん。フラットが今、サイレントのために何か食べ物を持ってくるはずだからここで待っていてほしいのよ」

 優しく諭す院長先生。


「分かったデス」

 分かってくれたか、アリア。


「フラットさんには置手紙を書いておくデス」

 うん、分かってくれていなかったね、アリア。


「置手紙を書く時間なんかないのよ」

「もう書き終わったから大丈夫デス!!」


 早っ!!


「さあ、行くデス!! 目指すは神タワーデス!!」


 アリアはすでに走り出していた。

 こうなってしまっては誰もアリアを止められない。


「ちょっと待つのよ、アリアちゃん。あなた、気配を消しながら走らないと、大変なことになるのよ」


「待つんだ、アリア」


 もしも、天界に魔族がいるなんてことが知られたら、大混乱だ。

 ボクたちは全力でアリアを追いかけ、気配を消してもらった。


 …………

 ……


「着いたデス、神タワー!!」

 アリアが嬉々として叫ぶ。


「しー、アリア。誰が見ているか分からないんだから」

「そうでした、天使に見つからない修行ということを忘れていたデス」


 ボクに指摘され、アリアは声をひそめる。


「分かればいいんだけどね……って、神タワー高いっ!!」


 ボクはタワーを見上げながら声を荒らげてしまった。

 全然てっぺんが見えない!!


「師匠、声が大きいデス」

「あ、ごめん」


「右手に見えますのが、神タワーなのよ。以前、神様が建てたタワーで、777階まであって、高さは約2000メートルもあるのよ」


 2000メートルがどれくらいか分からないけど、ボクがジャンプしても頂上には届かないだろう。


「神タワーは白を基調とした大理石で作られていて、とても厳かで聖なる雰囲気を醸し出しているのよ」


 へー、観光するならいいところなんだろうな、神タワー。

 ちょっと興味があるかも。


「中には1階から777階まで、うじゃうじゃと屈強な警備天使たちが待ち構えているのよ」


 前言撤回。

 全然興味ないです、神タワー。


 むしろ、入りたくすらない。

 今からなら逃げようか……


 ボクは回れ右をする。


「サイレント、どこに行くのよ?」

「ちょっとトイレに」


「トイレなら神タワーの中にいっぱいあるのよ」

「さようでございますか……」

 逃げようとしたら、院長先生に回りこまれてしまった。


「アリアちゃんにサイレント、偽造……じゃなかった、この入館許可証を持つのよ」


 ボクとアリアに紙切れを渡してくる院長先生。

 院長先生、今、偽造って言いかけたよね?


「それでは、サイレントご一行の皆様、こちらに来て、門の前の魔法陣に触るのよ」


 どこから出したのか、天界のペナントを持ちながらボクたちを誘導する院長先生。

 ツアーガイドかっ!!


「分かったデス」

 素直に返事をするアリア。


「アリアに院長先生、忍び込むんだからもうちょっと緊張感をもちましょうよ。もしもその魔法陣に触ったら、目の前に警備天使がいるかもしれないんですよ!!」


 アリアも院長先生もなんでそんなに軽いノリなんだよ。

 物見遊山かっ!!


「警備の脆弱性を指摘するだけデスから、見つかったらすぐに逃げればいいだけデス」


 純真な笑顔を向けてくるアリア。


 あ、そっか、アリアは院長先生のウソを信じて、警備だと思っているからそんなに軽いノリなのか。

 うん、納得。


「そうなのよ、サイレント。警備の脆弱性を指摘するだけなのよ」

 純真な笑顔を向けてくる院長先生。


 なんでウソをついているのに、まっすぐな目でボクを見てこれるの、この院長先生は。

 全然納得いかないんですけど。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、院長先生のウソに乗っかり、共犯となる。

 サイレント、神タワーへ行く。

 



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