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第39話 サイレント、寝返られる

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生とフラットさんを木のうろの中に連れ込む。

 サイレント、院長先生がフラットさんを嫌っていることを知る。



 院長先生がアリアにセクハラをしているみたいだけど、院長先生を止めるとボクにセクハラの矛先が来そうなので、今は放っておこう。

 それよりもフラットさんだ。


「どうしてフラットさんが天界にいるんですか?」

「えっとー、視察のお仕事ですー」


「視察って何の視察ですか?」

「これは他の人には内緒なんですけどー、新しく冒険者ギルドの天界支店を作るかもしれないんですー、それで、視察のために来ていたら、天界のイベントに参加したらと勧められて、参加したんですー」


「それで今、逃げているところだったんですね?」

「そうなんですー」

 大声を出しながら逃げていたにも関わらず、今まで捕まらなかったんだね、フラットさん。


「それよりもー、どうしてー、サイレントさんたちは天界に来ているんですかー?」

「そ、それは……」


 言えない。

 アリアとの婚約を解消するために神の杖を盗みに来た……なんて。


「私たちは『ドキッ、天使だらけの運動会』を見に来たのよ。ところが、企画が変更になってしまったから、とりあえず隠れているところなのよ。そうなのよね?」

 平然とフラットさんにウソをつき、ウィンクをしてくる院長先生。


「違うデ……むごっ」

「そうなんですよ」

 ボクはアリアの口をふさぎ、大きくうなずく。


「そうだったんですねー」

 良かった、納得してくれて。


「豪華景品をもらうために隠れぬきましょう!!」

「そうですねー」


 にっこりと笑うフラットさん。

 よーし、このままこのきのうろで隠れ続けるぞ!!


 …………

 ……


 ピッピー!!

 笛の音が鳴り響く。


「おおっと、ここで、追いかけっこ終了のホイッスルだ!! まだ捕まっていない人間の方はセントラル競技場まできてくれよ!! 豪華景品が待ってるぜ!!」

 風魔法に乗せた声がうろの中まで聞こえてきた。


「サイレントさんー、やりましたー。豪華景品ゲットですー」

「やりましたね」


「さあ、景品をもらいに行きましょうー!!」

 木のうろから出ながらフラットさんはボクの服の裾を引っ張った。


「引っ張らなくてもすぐに出ますから」

「ちょっと待つのよ、サイレント」

 外に出ようとするボクの裾を引っ張り返す院長先生。


「どうしたんですか、院長先生?」

「どうしたもこうしたもないのよ。アリアちゃんと私は不正入島しているのよ。景品をもらいになんていったら、すぐに捕まるのよ」


 院長先生はフラットさんに聞こえないように小声で耳元に話してくる。

 あ、そうだった。

 ボク達、追われているんだった。


「サイレントさんー? もうイベントは終わりですよー。どうしたんですかー?」

「えっとですね、あ、急におなかが……」

 ボクはおなかをさする。


「おなかが痛いならー、トイレに行きましょうー。ここからならセントラル競技場がちかいはずですー」

 違うんだよ、ボクはそのセントラル競技場に行きたくないんだよ。


「そうじゃなくてですね……」

「あ、分かったー。腹痛ですね? それなら院長先生に治してもらえばいいんですよー」


「違うんですよ。おなかがすいてしまって」

「それならー、すぐに食べに行きましょうー。セントラル競技場に屋台がありましたよー」

 あ、墓穴を掘っちゃった。


「違うのよ。サイレントはおなかがすきすぎて動けないのよ。一歩も」

 院長先生が助け船を出してくれた。


「それなら、アリアが師匠を運んで……もごっ」

 ボクはアリアの口をふさぐ。


「まー、それは大変ですー。すぐに屋台から何かを買ってくるので待っていてくださいー」

「その必要はないですよ」

 ボクが止める前にフラットさんは駆けだしていた。


「フラットさん、行っちゃった」

 ボクはフラットさんを見送りながらつぶやく。


「さあ、今のうちに神タワーに不法侵入するのよ!!」

 院長先生は意気揚々とタワーの方向を指さす。


「え? 今からですか? すぐにフラットさんをおいていくんですか」


「当然なのよ。今から神タワーの最上階にある神様の作った杖を盗むのよ。フラットも共犯にするつもり……って、それ、いいのよ!」

 悪い顔で口角を片方だけあげる院長先生。


「え?」

「神の杖を盗んで、全く関係のないフラットのせいにすればいいのよ!! ナイスアイディアなのよ、サイレント」


 考えが悪役令嬢。

 どんだけフラットさんのことを嫌いなんだ、院長先生。


「いやいや、ダメですよ。ボクの勝ってな願いをかなえるために杖を盗むのに、フラットさんを巻き込んじゃ」

「師匠、本当に神の杖を盗みに行くんデスか?」


 ボクたちの会話のやりとりを聞いていたアリアは、ゴミを見るような軽蔑の目でこちらを見てくる。


「違うのよ、アリアちゃん。サイレントは純粋な願いをかなえるために神の杖を盗むつもりなのよ」


 うん、フォローになっているようで、フォローになってないよ、院長先生。

 ボクが神の杖を盗むのに変わりはないじゃないか。


「師匠の願いなら、アリアがかなえてあげるデス。だから、窃盗はやめてほしいデス」

「私もサイレントに神の杖を盗むなんてバカなことはやめなさい……と注意するところだったのよ」


 あ、院長先生がアリアに寝返った。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、フラットさんをまく。

 院長先生、アリアに寝返る。


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