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第39話 サイレント、連れ込む

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生と合流する。

 院長先生、トレース魔法を使ったことを明かす。



 ボクが今にもケンカになりそうな雰囲気におびえていると、空から天使が近づいてくる気配がした。


「院長先生、アリアと喧嘩するのは後にして、とりあえず、木のうろの中に入ってください」

 そう伝えてから院長先生の手を引っ張る。


「こんな狭くて暗いところに連れ込んでどうしようというのよ?」

 顔を赤らめさせる院長先生。


「どうもしませんよ」

「信用ならないのよ」

 あ、これ、わざと言っているパターンだ。


「冗談を言っている場合じゃないんですよ。今、天使たちは人間を捕まえようとしているんです」

「どういうことなのよ?」

 ボクは必死に訴えかけで、真面目な顔になった院長先生は中に入ってくれた。


「まずは静かにしてください」

 ボクたちはまず、空の上の天使の会話を盗み聞く。


「聞いたか? 西区画で先ほどまで我々の運動会を観戦しに来ていた人間界の騎士団長が暴れているらしいぞ」

 男の天使の声だ。


「あの人類最強の騎士団長が?」

 今度は女天使の声。


「天使が攻撃してこないことを良いことに、捕まらないために攻撃をしているらしい」

 おいおい、野蛮な騎士団長様だな。

「私たちは東区画の担当で良かったわ。今のところ暴れまわるような人間はいなかったしね」


「まったくだ。捕まえた牢屋に入れても暴れなかったどころか喜んでいたもんな」


 捕まったら牢屋送りなの?

 しかも暴れないどころか喜ぶってどういうこと?


「犯罪者でもないのに、天界の豪華な牢屋が見学できる……なんて喜ぶんだもの。今度、天界の牢屋ツアーでも企画すればいいのに」

「ははは、違いない」


「それより、はやく次の人間を捕まえて、牢屋にいれないと、長官……いえ、アゲハ様に………………怒られるわ」

「アゲハ様? 何を言っているんだ、お前? ……いや、そうだな、アゲハ様に………………怒られるな」


「ここいらでは物音がしないから………………行きましょう」

「………………そうだな」


 天使たちはボクたちに気が付いていないようで、どこかへと飛んで行った。

 ふう、気づかれなくて良かった。


「あのですね、今年の『ドキッ、天使だらけの大運動会』は、人間を捕まえる企画に変更されたんですよ」

 天使たちが完全に気配察知の範囲内にいないのを確認してから、ボクは口を開いた。


「ははーん、カバッカ町で司祭様がキャンドル祭りをサイレント追いかけ祭りに変更したみたいに、パルーンを捕まえるために企画を変更したってことなのよ」

「パルーン? なんの話ですか?」


「実はね、私が不正入島するためだけに、パルーンがこの島に入島したことにしちゃったのよ」

「ああ、だから、人間を捕まえるために、企画を変更したってことか……って、完全に警戒されているじゃないですか!!」


 今から神様が作った杖を盗みにいくんですよね?

 警戒されていたら、盗みなんかできないですよね?


「サイレントがこわいのよ、きゃー」


 全然感情のこもっていない叫び声をあげ、アリアに抱き着く院長先生。

 何かにつけて、すぐに抱き着くんだから……


「ちょっと、くっつかないでくださいデス」

「この木の樹洞が暗くて狭いし、サイレントは怖いから仕方ないのよ」


 ここが暗くて狭いのは確かだけど、まだ1人分くらいのスペースはあるはずだし、ボクのことを怖いなんて全然思ってないよね、院長先生。


「離れてくださいデス」

 さて、院長先生とアリアがもみ合っている状況だけど、どうしようか?

 ここはボクが間に入って仲をとりもつしかないんだけど、なんて声をかければいいんだ?


「たーすーけーてー」


 ボクが悩んでいると、外から甘ったるい女性の声。

 きっと天使に追われている人間だろう。


 いやいや、助けてほしいのはボクのほうなんですけど……


 あれ?

 ちょっと待って。

 この声ってもしかして……


 ボクは樹洞からそっと外をうかがうと、ぽよんぽよんと揺れる胸が目に入ってくる。

 間違いない、あれはフラットさんだ。


「フラットさん、こっちです!!」

 ボクは木のうろから半身を出し、フラットさんを手招きする。


「あー、サイレントさんー」

 ボクに気が付いたフラットさんは木のうろの中に入ってきた。


「げ、フラットなのよ。近づかないでほしいのよ」

 院長先生はフラットさんから離れて、アリアに近づく。


「えー、そんなに邪険にしないでくださいー。みんなにしているみたいに私にも抱き着いていいんですよー」


 狭い木のうろの中で手を広げるフラットさん。

 抱き着き魔の院長先生に自分から抱き着いていいと許可した……だと……


 正気か、フラットさん。

 そんなこと言った日には、院長先生は結婚しようなんて言い出すんじゃないか?


「頼まれたってお断りなのよ。抱き着くどころか触りたくもないのよ」

 嫌な顔を隠そうともせずに前面に押し出してくる院長先生。


 何……だと……

 あの誰にでも抱き着いてくる院長先生が断るなんて姿なんか、初めて見た。


 本当にフラットさんとは仲が悪いなんて初めて知ったよ。

 院長先生とフラットさん、昔、何かあったのかな?


「あははー、嫌われちゃいましたねー」

「アリアは初対面デスが、フラットさんのこと好きデス。フラットさんがいれば、院長先生はアリアに抱き着いてこないデスから」


 アリアは院長先生避けとして、フラットさんを盾代わりにする。


「あははー、そうですねー」

 アリアに盾代わりにされたのが気になってのか、肩を落としながら笑うフラットさん。


「ちょっと、アリア、フラットさんを盾代わりにするのは失礼だよ」


 ボクはアリアに注意する。

 初対面の人を盾代わりなんかにしたら嫌われちゃうよ。


「そうなのよ、アリアちゃん。フラットを盾代わりなんかにせずに、私の腕の中に来るのよ」

「くっつかないでくださいデス」

 院長先生を遠ざけようとするアリア。


「仕方ないのよ、4人も入っているんだから今度は本当にスペースがないのよ」

「それはそうデスけど……って、ちょっとどこ触っているんデスか?」


「これも仕方のないことなのよ」

「狭いから体が触れるのは仕方ないかもしれないデスが、手で体中を触るのは絶対に仕方なくはないはずデス!!」


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、院長先生とフラットさんを木のうろの中に連れ込む。

 サイレント、院長先生がフラットさんを嫌っていることを知る。



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