表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

211/372

第37話 サイレント、大木のうろで隠れ続ける

これまでのあらすじ

 院長先生、自分の攻撃魔法を隠ぺいするために、ロシナンテに伝言を頼む。

 院長先生、入島審査を終え、天界に行く。





 

 ――天界にて――


 さて、とりあえず、見つからなかったが、これからどうしようか……

 院長先生を待つこと以外、何もすることがないな……


「みなさま、『ドキッ、天使だらけの運動会』を楽しむ覚悟はおありか?」


「アリア、どうしたの、いきなり?」

 ボクはアリアの方を見る。

「この声はアリアじゃないデス! 外からデス!!」


 外から?

 ボクは木のうろから耳だけ出す。


「さあ、入場行進の始まりだ!!」

 声を風魔法に乗せているのだろうか?

 先ほどアリアと聞き間違えた声が、天界を響き渡る。


「「「「うぉー!!」」」」

 外では歓声が湧き上がっていた。


 開幕の合図とともに盛大な音楽がかかる。

「「「「うぉー!!」」」」


「今年のコスプレテーマは真面目な会社員。そして、テーマカラーは白……ということで、天使はみんな白いスーツ姿で空からの入場だ!! 真面目さを演出するために、眼鏡代わりにゴーグルをつけているぞ!!」

「「「「うぉー!!」」」」


「観客は大盛り上がりだ!! ここで、観光に来ていた人間を解説席に呼んでいるから、インタビューをしてみるぞ。今年のテーマはどうですか?」

「スーツ姿にゴーグルをつけた天使は、初めて見たでござる。とても似合っているでござる!!」


 いやいや、白いスーツにゴーグルって、全然マッチしないじゃないか……

 ま、実物を見れないボクには関係のないことだ。


「ありがとうございます。さあ、そうこうしているうちに入場が終わったぞ。これからプログラム順に選手宣誓…………と言いたいところだが、今回はなんと、この選手宣誓で重大発表が行われるらしい!! みんな聞いてくれ!!」

 ほう、サプライズイベントとな……


「選手宣誓、我々は天使シップにのっとり、正々堂々と人間を捕まえることを誓います!!」

「「「「うぉー!!」」」」


 ん?

 今、人間って言った?


「私から説明しよう!! 今年はなんと、観光に来ている人間の皆さんにも協力していただき、人間を捕まえるイベントへと変更だ!!」

「「「「うぉー!!」」」」


「安全性には考慮してあるから、人間のみなさんは、この天界の中を全力で逃げてくれ。もちろん、隠れるのもありだ。制限時間は日没まで。なお、捕まらなければ捕まらないほど、豪華な景品がもらえるから、がんばってな!!」

「「「「うぉー!!」」」」


 そっか、そっか。

 天使が天界の中を探し回るのか……って、ボク達も見つかってしまうじゃないか!!


 何で、こんなことになってるの?

 おとなしく運動会していてよ!


「アリア、聞こえていたかい?」

「はい、聞こえていたデス」


「それなら話は早い。ボクたちは天使に見つからないように、ずっと息を殺して隠れているんだ」

「どうしてコソコソと天界に入島した挙句、天使から逃げているか不思議だったんデスけど、師匠はこのイベントがあることが分かっていたからだったんデスね?」


「え? あ、うん、まあね」

 本当はアリアを不正入島させたからなんて言える雰囲気じゃないよな……


「分かったデス!! 天使から逃げ切って豪華景品をゲットするデス」

「そうだね、隠れ続けて豪華景品をゲットだよ!!」

 ボクは話を合わせる。


「それなら、もっと奥まで入って隠れるデス」

 アリアはボクの手をひく。


「いやいや、大きい樹洞とはいえ、そんな強い力でひっぱったら……」


 勢いでボクとアリアの鼻と鼻がくっつくと同時に目と目があうボクとアリア。

 いつの間にか心臓がバクバクと音を立て始めていた。


 この心臓の高鳴りは、恋なんかじゃないんだからね。

 唇と唇じゃなくて良かった……っていう安堵なんだからね……

 ……って、ボクは心の中で誰に言い訳をしているんだろう……


「ごめんなさいデス、師匠。ケガはないデスか?」

「え? あ、いや、大丈夫だよ」

 ぶつかったのはアリアの鼻くらいだしね。


「良かったデス」

 近すぎて口元は見えないが、きっと笑っているのだろう。


「おい、近くで何か音がしなかったか?」「聞こえた、聞こえた」

 空の方から声が聞こえたので、ボクはとっさにアリアの口を手でふさぎ、アリアから顔を離すと、木のうろの隙間から息を殺してそっと外を窺った。


 声の先には天使たちがいた。

 アナウンスの通り、白いスーツ姿にゴーグルをかけている。


「そこにいるのは分かっているから、手を挙げて出ておいで!!」


 天使とゴーグル越しに目が合った気がした。


 まずい、このまま手を挙げて出た方がいいのか?

 アリアには気づいていないはずだから、言われたとおりにボクだけ出ていけば、アリアは助かるはずだ。


 ボクが出ていこうと判断した矢先、

「くるっぽー」

 木の上の方から鳥の鳴き声がした。


「この鳴き声……鳩か」「残念、人間じゃないみたいだな」


 ポキン。

 かなり遠くで木の枝を踏んだ音。


「あちらに人がいるようだ」「ああ、そうだな、捕まえてやる」

 天使たちは音の方へと飛んで行った。


 なるほど、なるほど。

 今までのやり取りで色々と分かってきたぞ。


 天使は気配察知をボクのように使えていない。

 ボクのように気配察知を使えれば、木のうろの中にボクとアリアがいることはすぐにわかったはずだ。


 そして、音には敏感すぎるほどに敏感だが、目は良くない。

 すべての天使に当てはまるかどうかは分からないが、音を出さずにこのまま隠れていた方がよさそうだ。


「アリア、院長先生と合流するまで、このまま静かにしているんだ」

 ボクは耳元でとても小さな声でささやく。


「分かったデス」

 アリアはこくりとうなずいた。


忙しい人のためのまとめ

 ドキッ、天使だらけの運動会が人間を捕まえるイベントに変更される。

 サイレントとアリア大木のうろで隠れ続ける。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ