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第33話 サイレント、バリアのシステムを知る

2024/2/20 誤字を訂正しました。(話の内容に変わりはありません)


これまでのあらすじ

 サイレントとアリア、天界へ入島する。

 サイレント、天界から足を踏み外す。






 羽根のないボクが飛べるわけもなく、ボクの体はぴゅーと落下し始めた。


 四度しどあることは千度せんどある(注:二度あることは三度あるです。サイレントが間違っています)……とは言うけれど、これで何度目だよ……


 ボクは自分のバカさ加減にほとほとあきれながら、顔を下に向けて状況を確認する。


 落下予測地点は地面で、あたりに木々はない。

 木の枝につかまって、速度を遅くするのは無理だね。


 それなら、足場になりそうなものをマジック・バックから取り出すしかない!

 えっと足場になりそうなもの、足場になりそうなもの……中を見ても、袋詰めされた小麦だけ。


 こうなったら、袋詰めされた小麦を足場にするか?

 いやいや、こんなものを足場にしたら、袋が切れて小麦がバラバラになって、大ケガだ。


 うん、小麦は使えないな。

 それなら、どうする?


 考えながら下を見ると、人がちらほらと見えた。

 そうだ、困ったときの人頼みだ!!


 落下地点に近づいたら、『助けて』って叫んで、下にいる人に支えてもらおう。

 さっき院長先生に支えてもらったみたいに。


 ……って、いやいや待て待て。

 落下している人間を院長先生みたいに支えてくれる人なんかいるのか?


 ……うん、いるわけがないね。


 助けを求めるのもダメか……


 よし、諦めよう……って、こんな高さから落下したら、間違いなく死んじゃうよ!!


 もしもそんなことになったら、新聞の記事になっちゃうよ……

 見出しはこうだ。


『マヌケな人間サイレント、天界から落っこちて転落死』


 うっわー、最悪だ。

 転落死で片付けばいいけど、下手をしたら自殺として扱われるかもしれない……


『マヌケな人間サイレント、カバッカ町・ホバッカ村・ニック村から追放され、天界から飛び降り自殺か』


 うん、これもあり得る見出しだぞ。

 追放されたことは全然関係ないんだけど、マスコミは大げさに書くのが好きだからね。

 その程度ですめばいいけど、もしかしたら……


『人間サイレント、天界で観光中、魔族に殺されたか』


 ……みたいな記事になっちゃうかもしれないぞ。

 アリアと一緒にいたことはカバッカ町・ホバッカ村・ニック村で確認されているから、こんな記事でもおかしくはないよね。


 マスコミというのは自分の新聞を売りたいばっかりに、憶測だけで書く記事が多いからな……


 うん、こんな記事をマスコミに書かせちゃダメだ。

 なんとか生きる道を模索しないと!!


 ボクはもう一度脚に力を入れてジャンプをしようとした。

 お、やっぱり一瞬だけ、落下速度が止まった気がする……


 ぴゅーと落ちるボクの体。

 うん、やっぱり気のせいだった。


 どうしよう……

 ……と思った矢先、体がぽよんと何かに包まれた。


 これは……網?

 そうだ、これは網だ。


 ボクみたいに観光途中で天界から落ちる人間が後を絶たないから、落ちないように天使が網を設置してくれていたに違いない。

 良かった。


「師匠!! 大丈夫デスか?」

「大丈夫だよ、アリア。今そっちに行くよ」


 ボクはセーフティ・ネットを踏み台にして、アリアのいるところまでジャンプした。


「無事で良かったデス、師匠」

 アリアは涙目でボクに飛びついてくる。


「ごめん、心配かけちゃったね」

「アリアが一緒に落ちて、師匠に大鎌を渡せば師匠を助けられると思ったんデスけど、この目に見えないバリアのせいで落ちることができなかったんデス」

 アリアはバリアをぺしぺしと叩く。


「ボクは簡単に通り抜けられるのに、アリアは通り抜けられないのか……このバリア、いったいどういう仕組みなんだろうね?」

「さっぱりわからないデス」


 会話していると誰かの気配がした。

 上空のほうからだ。


 ボクはアリアに顔を近づけ、鼻の前に人差し指を出した後、草むらに隠れるように指で指示する。


 アリアは無言でコクリとうなずくと、ボクと一緒に草むらに隠れると、ボクはすぐさま聞き耳を立てる。


「ここらへんで『対・魔族用結界』が反応したって本当か?」

 男の声だ。


「ああ。しかも内側から反応したらしいですワ」

 今度は女の声。


 きっと、男の天使と女の天使がペアで会話をしているのだろう。

「内側から反応なんかするわけないだろ? 『対・魔族用結界』は、魔族の侵入を防いでくれるバリア魔法なんだぞ。内側から結界が反応したということは、魔族がこの天界に侵入しているということじゃないか。そんなことはありえない」


「ありえないとも言い切れないですワ。ついさっき、地上の城門に魔族が並んでいて、門番が捕獲したらしいですワ」


「実際には天界に入る前に捕まえて、今は牢屋に入れられているんだろ? それなら今、天界にいる魔族はそいつだけに決まっているだろ」

「牢屋に収監された魔族は陽動で、ほかにも魔族が潜入しているかもしれませんワ」


「そんなことありえないだろ!! ここは天界だぞ!! 最後に魔族がこの天界に潜入を許したのはいつだと思っているんだ?」

「神様が殺される30年くらい前だから……50年以上前だったと記憶していますワ」


「そうだ、50年以上前からここは今では門番ですら魔族を警戒していないくらい平和なんだ。ありえない」

「警戒を怠っていたことを逆手に取られた可能性だってありますワ」


「いいや、そんなことありえないね。絶対に誤作動に決まっている」

 断言する男の天使。


 ははは……

 ボクは心の中で乾いた笑い声をあげながら、目の前のアリアの姿を見る。

 ボクと目が合って、きょとんとして首をかしげるアリア。


 会話、聞こえてないね、アリア。

 うん、君は何も知らなくていいんだよ。


「誤作動かどうかを確認するのが我々の任務の一つですワ」

「ん? 誤作動かどうかを確認するだけじゃないのか?」


「話を聞いてなかったのですワ? セーフティ・ネットに誰かが落っこちたみたいだから確認しろとも言われましたワ」

「どうせ、物見遊山で観光に来ている人間だろ。マヌケな人間なんか後でいいよ。まずは魔族だ」


 天使たちとの会話で色々とわかってきたぞ!!

 アリアは魔族だから、バリアを抜けられなかったけど、ボクは人間だからバリアは素通りで落ちたということか……


 それでここに確認をしにくるってことか。

 なるほど、なるほど…………って、ここにいたらまずいね。


「アリア、ここに向かっている天使の話は聞こえた?」

 ボクは念のために尋ねる。


「いいえ、何も聞こえてないデス」

 首を振るアリア。


 うん。

 こういう時、アリアがウソをつかないのは本当にありがたいね。


「アリア、気配を消して、ボクについてきて」

「わかったデス」


 ボクとアリアはその場を後にし、近くにあった大きな木のうろの中に入り、気配を消してじっと院長先生が来るのを待った。


忙しい人のためのまとめ

 天界から足を踏み外したサイレント、セーフティ・ネットがあって助かる。

 サイレント、天使の会話を盗み聞いて、天界に張られているバリアのシステムを知る


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