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第32話 サイレント、落ちる!?

※2024/2/12 作者体調不良のため、すみませんが7日間お休みします。

      次回は2月19日(月)の予定です。


これまでのあらすじ

 後輩門番、陽キャラの人が魔族だと見抜き、連行する。

 緊急事態宣言により逃げ道を封鎖されたので、サイレントはアリアと逃げ出せない。




「分かりました」

ボクはこくりとうなずき、アリアの元へと向かおうとする。


「ちょっと待つのよ。私がアリアちゃんと入れ替わるんだから、私をアリアちゃんのところに行かないと意味がないのよ」


「分かってますよ、だからはやく来てください」


「腰が抜けて動けないのよ」

まだ腰が抜けていたのか……


「院長先生、アリアのところまで連れていくので背中に乗ってください」

ボクは倒れている院長先生を引っ張り上げ、おんぶすると、群衆をかき分け、アリアのところへと向かった。


「アリア!!」


「あれ? 師匠と院長先生、どうしてこんなところにいるんデスか?」

きょとんとするアリア。


「それはこっちのセリフだよ」

「アリアはデスね――」


アリアが口を開いた瞬間、包帯でぐるぐる巻きになっているユニコーンが目に入ってきた。

いや、何があったかはだいたい分かっているんだった……


「アリアの話は後で聞くよ」

ボクは院長先生を背中から降ろしながらこたえる。


「とりあえず、背負っているユニコーンを降ろして」

「分かったデス」


アリアはボクの支持通りにユニコーンを背中から降ろした。


「よし、降ろしたら、何も聞かずに、この通行証を持って、気配を消してボクについてきて」

「分かったデス」

アリアはこくりとうなずく。


「お待たせしました。そろそろ、入島審査を再開します」

先輩門番の声がした。


「アリアちゃんと私の服を取り換えようと思ったけど、どうやらその時間はなさそうなのよ。急ぐのよ、サイレント」

「分かりました。後で落ち合いましょう」


ボクとアリアは誰にも気づかれないくらいに気配を消す。


「あ、そうだ、門番に入れ替わったことを気づかれてはいけないのよ。あと、天界についたらすぐに案内人……じゃなくて、案内天使がくるはずなのよ。その案内天使には絶対に見つからないようにするのよ」

「了解です」


ボクは後ろ背に返事をすると、金ぴかの城門の方へと向かった。


「いいかい、アリア。本来であれば、ボクの隣にいたのは院長先生だったんだ。あの門番にアリアがいると気づかれちゃいけないんだ。走ると目立つから、気配を消しつつ、他愛ない話をしながら歩いていこう」

「アリアがいると気づかれちゃいけない……あ、それなら、いいものがあるデス!!」


「いいものって何?」

「ミスリド海集落でもらった包帯デス、この包帯で顔をぐるぐる巻きにすれば、アリアだときづかれないデス」


「そうだね、その包帯でアリアの顔をぐるぐる巻きにすれば……ってアリア、それ目立つから!!」

「叫んでいる師匠の方が目立っているデス」


あ、しまった。

周りを見ると、ボクの方を注目する人々。

その中にはもちろん先輩門番もいた。


いや、これは逆にチャンスだ。

大声を出してしまったけれど、金ぴかの城門は手を伸ばせば届くところまで近づいているし、みんなボクのほうだけに注目しているんだから。


「アリア、城門にはやく触るんだ」

ボクは両腕を広げ、先輩門番から見て死角になるように位置取りながら叫ぶ。


「分かったデス」

指示通りすぐに城門に手を触れるアリア。

アリアが城門に触れたのを確認してから、ボクも城門に手を触れた。


城門に触れた瞬間、通行証が光りだして足元に幾何学な紋章が現れる。

体が光に包まれたと思っていたら、目の前はうっそうとしたジャングルに変わっていた。


どうやら、無事に天界に転移したみたいだけど、天界ってジャングルだったの!?


「師匠、ここはもしかして天界デスか?」

「アリア、とりあえず、あの木々のところに身を隠そう!!」


案内人……じゃなかった案内天使が来るかもしれないと思ったボクはアリアの質問にこたえることなく、気配察知のスキルを使って、行先に生き物がいないことを確認してから、アリアの手を取り走る。


「分かったデス」


…………

……


よし、誰にも見つからずに隠れることができたみたいだ。

ここならすぐには見つからないだろう。


「師匠、改めて聞くデスが、ここはもしかして天界デスか?」

「うん、そうだよ」


ボクはこくりとうなずく。


「ここが天界デスか……一生来れないところだと思っていたデス」

嬉しそうに目を輝かせるアリア。


「来れてよかったね」

サムズアップするボク。


「天界はうっそうとしたジャングルだと本で読んだことはあるデスが、実際には道が整備されていて、まっ平で歩きやすいんデスね。天使は基本的に飛んでいるから、道は整備されていなくて、もっと歩きにくいかと思っていたデス」


「あ、言われてみればそうだね」

最初はただのジャングルだと思っていたけど、整備されているんだな……


「師匠、見てくださいデス!!」

アリアの指さす方に目線をやると、そこには山頂から見たような絶景が広がっていた。


「あれは海だね」

どうやら隠れた場所は島の端っこだったらしく、地上を一望できた。


「ミスリド海デス! それに、あっちにはボルケノ山もあるデス!! 地図で見た地形と同じデス!!」

地図と景色を見比べ、ビュービューと吹く風に黒髪をなびかせながら興奮するアリア。


「あ、あの奥に見えるのは、カバッカ町デスかね」

「そんなに島の端まで行ったら落ちちゃうよ」


「大丈夫デス。どうやら、目に見えないバリアみたいなものが落ちるのを守っているデス」

アリアが端っこギリギリまで立ち、ノックする仕草をするとコンコンと音が鳴った。


「へー。目に見えない窓みたいだね。これなら落ちる心配はないか」

「そうデスね」


安心しきったボクは、島の端に背を向けて、後ろ向きで歩く。


後ろ向きで歩き続けているが、まったくバリアみたいなものに当たらない。

……というより、足の裏に土の感触がない。


おかしいなと思ったボクは下を見る。

そこには何もなかった。


えっと、これは……つまり、何かの原因でバリアが作動しなくて、このままだとボクは天界から落ちて地上にたたきつけられる……ってこと?


「師匠!!」


アリアは手を差し出してくれるのだが、アリアの手はバリアに阻まれ、ボクまで届かない。

ボクは空中で必死に脚を動かして、なんとか落ちないように悪あがきする。


ぴたっ。

空中で一瞬だけボクの体が止まった…………気がした。


よし、このままアリアのところまで……

ボクは脚を動かし続ける。


動かすものの、確実に下に落ちているボクの体。

はい、このままアリアのところまでいけるわけがないですよね。


このまま、ボク、落ちちゃうのかな……


忙しい人のためのまとめ

 サイレントとアリア、天界へ入島する。

 サイレント、天界から足を踏み外す。



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