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第31話 サイレント、倒れる!?

これまでのあらすじ

 院長先生、行列の中に魔族が紛れ込んでいることに気づく。

 サイレント、行列の中にアリアがいると気づく。





 


「もしかして、うちのことを言っているし?」

 後輩門番が声をかけたのはアリア…………ではなく、ボクの後ろに並んでいた陽キャラの人だった。


 ボクは脚を止めてもう一度アリアじゃないことを確認する。


「そうだ、お前で…………あります。お前は魔族……でありますな!?」

 事務的な口調で確認する後輩門番。


 後輩門番がどことなく元気がないのは緊張しているせいだろうか?


「ははは、魔族だって? こんなところにいるわけないでしょ」「そうだよな」「突然魔族が襲ってきたときのための避難訓練か?」


 魔族がいるわけないと高をくくって楽観視する行列の人々。


 ははは……実際にはいるんだけどね。

 ユニコーンを背負った魔族が。

 口には絶対に出せないけど。


 でも、これは絶好のチャンスだ。

 みんなが陽キャラの人に注目が集まっているうちにアリアと逃げ出そう。


「おいおい、お前は何を言っているんだ? まさか、エリート門番であるこの私に誤認逮捕させて私の経歴に泥を塗ろうとしているのか? この人から魔族の気配なんか全然しないんだから魔族のはずはないじゃないか!!」


 後輩門番を高圧的に叱責する先輩門番。


「それはウソを見抜くユニコーンの前で会話をすればわかるの…………であります。お前は魔族……でありますか?」

「……ってゆーか、その白い馬ウソが見抜けるとか超ウケるんですけど」


「話をそらそうとせずに、質問にこたえる…………であります」

「うち? うちは正真正銘の魔族だし!!」


 陽キャラがあっけらかんに返事すると、周りはこんなにも殺意とプレッシャーでピリピリとした重い空気に包まれた。


 ユニコーンに確認するまでもない。

 この陽キャラは間違いなく魔族だ。


「気配を隠していたのか!? エリート門番である私でも見抜けないほどに」

 先輩門番は驚きの声をあげる。


「ひー、魔族だって!?」「い、い、命だけは助けれくれー!!」「うわぁぁぁぁぁぁぁ、門番なんとかしろ!!」


 行列の群衆はあまりものプレッシャーで、先ほどの院長先生みたいに、みんな足がすくんでしまっているようで、逃げることなく、しりもちをついて思い思いのことをなんとか口に出していた。


 その中にぽつんと一人立つアリア。

 お願いだから、みんなと同じように倒れていてよ。


 行列に並んでいた人々は倒れているのに、その中で一人だけ立っていたら、目立って近づけないじゃないか。


 アリアは自分が周りからどう見られているかを少しは意識するべきだ……ボクはそんなことを思いながらアリアに駆け寄ろうとして、ふと思う。


 …………あれ?

 ボクも立っているから目立っているんじゃないか?


 ここは、倒れた方がいいんじゃないか?


 周りと見回す。

 立っているのはアリアと後輩門番、そしてボクだけだ。


 うん、全然アリアのところには行けていないけど、とりあえず倒れよう。

 みんなそうしているから。


「うわー」

 ボクは棒読みで恐怖の言葉を叫ぶと、その場でばたりと倒れた。


「みなさん、大丈夫です!! 今、魔族はエリート門番である私が捕獲いたします」

 ボクが倒れた瞬間、先輩門番は倒れながらも、みんなを安心させるための声掛けをしていた。


 こんなに重い空気になっていて、立つことさえ大変なのに、職務を全うしようとするなんて、さすがエリート門番だ。


「おおー」「さすがは天界の門番だ!!」「頼んだぞ」

 尻もちをつきながらも歓声が沸き上がる。


「はーい、捕獲されちゃうし」


 陽キャラ魔族は自ら両手をあげ、降参する。

 戦う気がないんかい!!


 最初から戦う気がないなら、さっきの殺意とプレッシャーはなんだったんだよ。

 愉快犯みたいに、ただただ驚かせたいだけだったのか?


「逮捕……であります」

 カチャリと魔族に手錠をかけたのは、先輩門番ではなく、後輩門番のほうだった。


「みなさん、安心してください。この手錠は、魔族の力を奪う力が込められている特別製のアーティファクトです。これで、魔族が暴れることはありません」

 先輩門番は何とか立ち上がると、人々に説明をした。


「牢屋まで連行する……であります」

 後輩門番は魔族とともに転移を始めていた。


「よろしく頼むぞ」

「承った…………であります」

 よし、これで一件落着だ。


 あとはゆっくりアリアとここから離れる算段を考えればいいだけだ。


「近くに仲間がいるかもしれない。テレパシーで緊急事態宣言を出して、ここらへん一帯を封鎖するんだ、ユニコーン!!」


 はい、ゆっくりしている暇なんてないね。

 封鎖される前に、はやくここから逃げ出さないと。


「ひひーん」

 ユニコーンが倒れたままいななく。


「よし、連絡さえしてしまえば、すぐに転移魔法で仲間が所定の位置に配置されるから、魔族の仲間がいればすぐにわかるはずだ」

「ひひーん」


 もう緊急事態宣言が出たの?

 もっとゆっくりやってくれてもいいのに……


 さてと、これからどうするか……

 このままアリアのところへ駆け寄っても、逃げる時間がないなら駆け寄る意味がない。


「院長先生、どうやら、ここらへん一帯はもう封鎖されてしまったみたいです。これからどう動きましょう?」

 ボクはまだ腰を抜かしている院長先生の方へと向かって状況を報告する。


「今の混乱しているうちに、私とアリアちゃんが入れ替わって、アリアちゃんとサイレントは天界に入っちゃうのよ」


「なるほど!」

 確かに、封鎖されてしまうのであれば、天界に入るのもありだ。


「……って、ちょっと待ってください。アリアには通行証がないですよ」

 そう、通行証がなければ天界へはいけないはずだ。


「アリアちゃんには私の通行証を渡すのよ」

 そう言って、院長先生通行証を差し出してきたのでボクはその通行証を懐に入れた。


「確かに、院長先生の通行証があれば、アリアは天界に入れますが、入ったところで天界にいる天使たちにすぐにばれませんか?」


 天界は天使たちの総本山だよね?

 院長先生レベルの感知能力がある天使がいてもおかしくはない。


「私レベルの感知能力がある天使なんてそうそういないのよ。誰にも気づかれないように気配を消していれば気づかれないはずなのよ」


忙しい人のためのまとめ

 後輩門番、陽キャラの人が魔族だと見抜き、連行する。

 緊急事態宣言により逃げ道を封鎖されたので、サイレントはアリアと逃げ出せない。



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