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第30話 院長先生、行列の中に魔族がいることに気づく

これまでのあらすじ

 サイレント、門番から訊かれたくない質問をされピンチに陥るが、院長先生の機転でピンチを乗り越える。

 サイレントと院長先生、入島審査を通過した後、後輩門番が倒れる。





 ……って、院長先生も倒れている!!


 後輩門番のプレートメイルの音が大きくて全然気づかなかった。


「院長先生、大丈夫ですか?」


 ボクは院長先生を起こそうとして、右手をさし出した。


「ちょっと腰が抜けたけど。大丈夫なのよ。それよりも、サイレント、門番に気取られないように、そのまま聞いてほしいんだけど……」

 院長先生は小声でボクに言ってくる。


「どうしたんですか、院長先生」

 ボクはしゃがみながら、小声で返した。


「魔族の気配がしたのよ。私くらいの魔族探知のレベルが高くないと見逃してしまいそうなくらいの一瞬だけだけど」

 院長先生は腰を抜かしたままでボクに伝えてくる。


「一瞬だけなら弱い魔族なんじゃないんですか?」

「逆なのよ。これは強い魔族が一瞬だけ気を緩めて出してしまった魔力なのよ」


「強いってどれくらいですか?」

「私が腰を抜かしちゃうほどなのよ」

 院長先生が腰を抜かすほど……って、めちゃくちゃ強い魔族じゃないか。


「どこにいるんですか?」

 ボクは院長先生を起こさずに、すぐさまダガーを身構える。


 空か? 地面の中か?


「一瞬だったから、正確な場所までは分からないけど行列の方なのよ」

 ボクが行列の方を向くと、人だかりしか確認できなかった。


「行列の中に魔族が並んでいるわけないですよ……」


 ボクは周りを見回すが、行列の中にユニコーンを背負ったアリアがいるものの、特に怪しそうな人は見当たらない。


 そりゃあ、そうだよ。


 魔族が天界にくるなんて、カモがネギを背負ってやってくるようなものだもん。

 怪しい人なんかいるわけがない。


「ほら、いませんよ。行列の中にユニコーンを背負ったアリアくらいしか……って、アリア!?」


 念のために目を手でこすってからもう一度を確認する。

 何ということでしょう、包帯でぐるぐる巻きにされたユニコーンをアリアが背負っているではありませんか……


「完全に撒いたはずなのに、どうしてこんなところにアリアがいるの!?」


「きっと空から降ってきたユニコーンをお姫様抱っこして助けたのよ」

「院長先生、冗談はよしてください。ペガサスと違ってユニコーンは飛べないんですよ。ユニコーンが空から降ってくるなんてことないでしょ……って、まさか!!」


「そのまさかなのよ。私が吹っ飛ばした……もとい、事故に巻き込まれたユニコーンが落ちた先にアリアちゃんがいたのよ!!」

「なんてこった……」


 ボクはダガーを持ったまま頭を抱え込んでしまった。

 なんたる不運。

 まさか、院長先生が吹っ飛ばしたユニコーンがよりによってアリアに拾われるなんて……


「ユニコーンをお姫様抱っこするアリアちゃん。そして、純真無垢なアリアちゃんは天界へユニコーンを届けにきたのよ。きっとここから魔族とユニコーンの禁断のラブロマンスが始まるのよ」


「妄想を膨らませている場合じゃないですよ。おそらく後輩門番も院長先生と同じで魔族の気配に気づいたから倒れたんですよ!! このままだと、アリアが魔族だとバレて捕まっちゃいますよ」


「アリアちゃんが捕まったら、天界の牢屋に入れられて、一生を過ごすことになるのよ」

「一生牢屋暮らしだって!?」


「脱獄はほぼほぼ不可能だから、サイレントの婚約は果たされず、サイレントには恐ろしい罰が待っているのよ」


 ポンと肩に手を置く院長先生。


「うぉー、はやく何とかしないと……」

 アリアを連れて逃げるしかないと思ったボクは駆けだそうとした。


「何をする気なのよ、サイレント?」

「そりゃあ、アリアを連れて逃げる気です」


 ボクには逃げることくらいしかできないからね。


「門番が魔族の気配に気づいているのに、天界に行く気満々だった人間がアリアちゃんを連れて逃げ出したりなんかしたら、追いかけられるのは目に見えているのよ」

「それなら、どうしたらいいんですか?」


 ぐずぐずしていると、門番にバレてしまう。


「まずは落ち着いて状況確認なのよ」

「でもそれじゃあ、アリアが捕まっちゃうんじゃ……」


「いい、サイレント。さっきも言ったけど、魔族の気配はほんの一瞬。門番が気づいている可能性は低いのよ。状況を確認してから行動しても遅くはないのよ」

 優しく諭してくる院長先生。


「……分かりました」

 冷静になったボクはすぐさま切り替えて、門番たちの会話に聞き耳を立てる。


「おい、大丈夫か?」

「大丈夫…………であります。一瞬ですが、魔族の反応があったみたい…………であります」


 まずい、まずいぞ。

 後輩門番は魔族がいたことに気づいている。


「魔族の反応? ははは、気のせいだろ。お前は魔族探知が苦手中の苦手だったじゃないか。お前が魔族に気づいて私が魔族に気づかないなんてことはないからな」

 お願いだ、そのまま気のせいだったってことで話が進んでくれ!!


「それでも分かるの…………であります」

 ボクの願いも空しく、行列の方へふらふらと歩く後輩門番。


「あ、おい。持ち場を離れるんじゃない!!」

 先輩門番は後輩門番を追いかける。


「おい、そこの女!!」

 ボクが作戦を立てようとした矢先、後輩門番が大声をあげた。


 ああ、もうダメだ。

 アリアが捕まる。


 どうする?

 門番を気絶させるか?

 ボクはどう対処すれば考えもまとまらないまま、駆け出していた。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、行列の中に魔族が紛れ込んでいることに気づく。

 サイレント、行列の中にアリアがいると気づく。



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