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第29話 サイレントと院長先生、門番に指名手配されているかを訊かれる!?

これまでのあらすじ

 サイレントと院長先生、入島審査をうける。

 サイレント、院長先生が伝説級の杖を永遠に借りるつもりでいることを知る。




「観光者を緊張させるなど、エリート門番にあるまじき行為。本当に申し訳ない」


 頭を下げて、丁寧な言葉遣いで謝ってくる先輩門番。


 そっちかー。

 良かった、ボクが何か失敗をしたのかと思ったよ。


 ほっと一安心。


「あ、いえ、大丈夫ですよ。お仕事ですから、気にしないでください」

「我らはエリート門番。観光者の優しさに甘えるわけにはいきません。お詫びの印に通行証を……」


 エリート門番は通行証を机の引き出しから取り出した。


「ありがとうございます」


 やったー。

 これで、入島できるぞ。


 審査は楽勝じゃないか。

 ボクが通行証を受け取ろうとしたときである。


「……通行証をどうぞと言いたいところなのですが、貴方たちは犯罪とか指名手配とか……」

 あ、これは聞かれたら詰んじゃう質問だ。


 ボクはいつの間にか、通行証をもらおうとしていた手を後ろに組み、雲を見上げていた。


 ああ、雲はいいなー

 もちろん、現実逃避も忘れずに。


「私たち、指名手配になるような重罪なんか犯してないのよ。ね?」


 院長先生は先輩門番の話を遮り、食い気味に話を変え、ボクに同意を求めてきたので、ボクは視線を院長先生の方へと向けた。


 ちょっと、何で自分から指名手配のことを持ち出しているのさ、院長先生!!


 ここで、『はい、そうです』……ってこたえたら、すぐさまユニコーンにいななかれてウソがバレちゃうじゃないか!!


「まだ緊張しているのよ? “指名手配になるような重罪”なんか犯してないのよね?」

 院長先生はもう一度ボクに聞いてきた。


 院長先生が同じこと言ってきたということはそこに何か意図があるはずだ。

 考えろ、考えろ、ボク。


 あ、分かった。

 これは言葉のトリックだ。


 門番が『お前たちは指名手配されているか?』と聞いてきて、指名手配されているボクが『いいえ、指名手配されていません』とこたえれば、ユニコーンはウソに気づいていななくだろう。


 だが、今回、院長先生は“指名手配になるような重罪”を犯していないかどうかを聞いている。


 それなら、ボクが『はい、していません』とこたえても、ウソにはならない。


 なぜなら、ボクは指名手配になってはいるものの、重罪をしたから指名手配になったわけではないからだ。


 ニック村でフェス様を倒して追放されたけど、重罪じゃない。


 ホバッカ町で人狼をかばって追放されたけど、重罪じゃない。


 カバッカ町でアリアを魔族だと知らずにパーティーを組んで指名手配されたけど、重罪じゃないのだ。


 アリアの入浴を覗こうとしたのは……あれは、覗こうとしただけで実際は覗いてないのだから、犯罪にはカウントされないはず。


「そうですよ、指名手配になるような重罪は犯していません」


 院長先生の意図を見抜いたボクは、自信たっぷりにうなずく。


 後はウソを見抜くユニコーン様が、ボクの発言をウソと判断するかどうかだ。


 ボクはチラリとユニコーン様を盗み見る。


 ……どうやらいななく気配はない。


「どうやら、ウソではないみたいですね」

 ユニコーンの反応を見て先輩門番がつぶやく。


 やったー。

 これで、入島できるぞ!!


「それでは通行証をいただけますか?」


 ボクは先輩門番から通行証を受け取ろうと手を差し出した。

 しかし、先輩門番は通行証を持ったまま、ボクのことをじっと見つめ、微動だにしない。


「どうしたでありますか?」

 後輩門番も動かない先輩門番を見てどうしたのか尋ねた。


「うーん、なんかひっかかっているんですよね……この男の顔はどこかで見たことがあるんですけど、どこだったかな……」


 まずい。

 もし、先輩門番が指名手配書を見ていたら、ボクのことを思い出してしまうかもしれないぞ。


「世界には自分と同じ顔をした人が3人はいるというのよ。きっと、どこかで似た顔と会ったことがあるのよ」

 院長先生がフォローをしてくれた。


「確かにそうかもしれませんね。ですが、念のために指名手配書と照らし合わせてもいいですか?」


 あ、これはまずいパターンだ。

 ボクは院長先生に視線を送った。


「いいのよ」


 そうだよね、院長先生はこういうとき助け船を出してくれて、きちんと否定してくれるんだよね……って、いいの!?


 ボクが指名手配されてるってバレちゃうんだけど!?


「でも、優秀なエリート門番なら、一度見た指名手配書に描かれている顔や特徴を忘れる……なんてことがあるわけないのよ」


「確かに、我々は優秀ですから、一度見た手配書ならすべて覚えていますな」「一度見たら忘れないであります」


 門番たちはうなずく。


「さすが、優秀なエリート門番なのよ。我々のような凡夫とは違って頭が良いのよ」

 急に門番たちをベタ褒めをし始める院長先生。


「いやいや、それほどでもありませんな」「そんなことないであります」


 照れる門番たち。


「一度見て覚えているならわざわざ手配書なんか確認しなくてもいいんじゃないのよ? だって、手配書は全部頭の中にインプットされているはずなのよ」


「確かに」「おっしゃる通りであります」


「それなら、通行所をもらってもいいのよ?」


「通っていいです」「通っていいのであります!!」


「ありがとうございます」「ありがとうなのよ」

 いつの間にか、ボクと院長先生は通行証を手に入れていた!!


「あとは、目の前の城門にタッチするだけですね」


 そうすれば、タッチ&ゴーで一気に天界へ突入だ。


「そうなのよ」

 ボクたちは城門に向かって歩き出す。


「……っていうか、やっとうちの番だし!! 時間かかりすぎだし!!」


 ボクたちが歩き出すと同時に背後から大声が聞こえてきた。


「それでは次の人、こちらに来るでありま……」


 ん?

 途中で、後輩門番の声が止まった……と思った矢先、ガシャーンという音がした。


 振り返ると、そこには倒れこむ後輩門番。


「おい、どうしたんだ? まさか、さっきの奴らに何か攻撃されたのか?」


 さっきの奴らって、ボクたちのことだよね?

 ボクは何もしてない……ってことは……


 ボクは院長先生の方を振り向いた。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、門番から訊かれたくない質問をされピンチに陥るが、院長先生の機転でピンチを乗り越える。

 サイレントと院長先生、入島審査を通過した後、後輩門番が倒れる。

 


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