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第24話 サイレント、院長先生と婚約する!?

これまでのあらすじ

 ユニコーン、魔法に巻き込まれて空へと吹っ飛ぶ。

 サイレント、院長先生に助けられる。






 


「ちょっと待ってください、ボクお姫様抱っこされてます!?」

「そうだけど、それがどうしたのよ、サイレント」


「まずいです」

「何がまずいのよ?」


「ボクは院長先生をお姫様抱っこしないって、アリアと約束していたんですよ。このままだと、アリアとの約束を破ってしまいます」


「大丈夫よ。サイレントが私をお姫様抱っこしているのではなく、サイレントが私にお姫様抱っこされているんだから」

「あ、それもそうですね」


 そうだよ、今回は逆だ。

 これなら問題ないはずだ。


「でも、約束の目的を考えたら、これはこれでまずいのかもしれないのよ」

「目的? どういうことですか?」


「きっとアリアちゃんは私とサイレントが仲良くなるのがイヤだから、お姫様抱っこをしないでほしいと約束したに違いないのよ」

「なるほど」


「でも、今の状況をはたから見れば、突然空から降ってきた少年をお姫様抱っこで助ける美少女の構図なのよ。これではアリアちゃんを怒らせてしまうのよ」

「美少女ってどこにいるんですか?」

 ボクはきょろきょろとあたりを見回す。


「……痛っ!! 院長先生、無言で頭突きをしないでください」

「今の状況をはたから見れば、突然空から降ってきた少年をお姫様抱っこで助ける『美少女』の構図なのよ!!」


 美少女という言葉をことさらに強調して、同じセリフをわざわざ大げさに繰り返す院長先生。


「…………確かにそうですね」

 ボクはしぶしぶうなずいた。


「これではアリアちゃんを怒らせてしまうのよ」

「こんなことでアリア、怒りますかね?」


「そりゃあ、これから壮大なラブロマンス劇がありそうな状況なら、怒るに決まっているのよ」

「この状況でラブロマンスなんか始まらないですよ」


「そんなことないのよ。客観的に事実だけを見れば、ラブロマンスが始まっているようにしか見えないのよ」

「どこをどう見れば、ラブロマンスなんですか!!」


「空から落ちてきた少年を助けた美少女。だけど、助けた少年には実は、契約上の婚約者がいたのよ。少年と美少女は婚約者に3日だけ猶予をもらって、婚約を破棄するために天界まで行って奮闘するのよ」

「…………確かに、ここだけ聞くと、ラブロマンスが始まりそうですね」


 院長先生が美少女というところ以外は事実だ。


「そうなのよ。天界を大冒険した少年と美少女は、婚約者の目の前で婚約破棄の呪文を唱えるのよ。婚約破棄された婚約者の目はつぶれて、ついでに天界も崩壊するのよ」


 うわっ、久しぶりに聞いたよ。

 院長先生の暴走した妄想。


「妄想とはいえ天界を勝手に崩壊させないでください。天界の天使たちに恨まれますし、それになにより、どうやってボクたちは助かるんですか?」

「愛の力なのよ。愛の力さえあれば、どうとでもなるのよ」


「院長先生、愛の力だけじゃどうにもならないこともあるんですよ」

「そんなことないのよ。愛の力さえあれば何でもできるのよ!!」


「いいえ、できないこともあります」

「それなら、検証するのが一番なのよ」


「検証?」

「サイレントがアリアとの契約を破棄したら、私と結婚すればいいのよ」

「そっか、ボクと院長先生が結婚すれば検証できますね」


「そうなのよ」


「……って、そもそも、ボク院長先生のこと愛していません!! だから結婚もしませんから」

「ちっ」


 舌打ちをする院長先生。

 危ない、危ない。

 話の流れで、あやうく院長先生の策略にはまるところだった。


「まずは降ろしてください、院長先生」

 お姫様抱っこされているところを誰かに見られたら笑われちゃうよ。


「私と結婚してくれるなら降ろしてあげるのよ」

「この期に及んでまさかの脅迫!!」


「脅迫なんてそんな物騒なことをするはずないのよ」

「そうですよね、院長先生がそんな物騒なことをするわけないですよね……って、ボクのことを殺そうとしていましたよね!!」


「殺すだなんて人聞きが悪いのよ」


「それじゃあ、さっきのホーリィは何だったっていうんですか?」

 こっちはあやうく大けがだったよ。

「教育なのよ」


「教育?」

「そうなのよ。私は自分の命惜しさに、他の人の命を見捨てるような薄情なマネをしてはいけないと再教育してあげただけなのよ」


「そんな教育いりませんから。そもそも、ボクは院長先生を見捨てたわけではないんですよ」

 本当は見捨てようとしたけど。


「それならどうして、ユニコーンから逃げている最中、私に向かって謝ったのよ?」

「防具が紙装甲のボクよりも、院長先生のほうが致命傷にならないかな……っていう判断であって……」


「なるほど、なるほど。それで私を見捨てる判断をしたと?」

「そういうことです……あ」


 思わず本音が出ちゃった……


「やっぱり私を見捨てようとしたのよ。それなら私もサイレントを見捨てるのよ。サイレント、アリアちゃんとお幸せに……なのよ」

 院長先生はハンカチを片手にボクに手を振る。


「申し訳ございませんでした」

 ボクは土下座をして謝る。


「言い訳なんかせずに最初から謝っていればいいのよ」

「はい」

 ボクはシュンとうなだれる。


「ところで、院長先生、ユニコーンをふっ飛ばしても大丈夫だったんですか? 門番なんですよね?」


「大丈夫なのよ。あのユニコーンはテレパシーを使わないようにしてあるし、ひん死状態なのよ」


「もしも、ひん死状態のあのユニコーンを仲間が発見したら、どうするんですか?」


「ユニコーンの飛んで行った方向はミスリド海集落方向だから、仲間が発見するなんてことはありえないのよ」


「それなら安心ですね」

「そうなのよ」

 院長先生がうなずくと、『ぐー』という音がした。


「そういえば、私、おなかがすいていたのよ」

 安心しておなかがすいているのを思い出した院長先生は、ぽんと手をうつと、何事もなかったかのようにしゃがみ込み、そこらへんに落ちていた豆粒サイズの赤い果実を拾い食いし始めた。


「ただでさえ時間をロスしたんだから、天界へはやくいきますよ」

 ボクは広い食いをし始めた院長先生の手をとり、天界へと向かった。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、院長先生と婚約をしそうになる。

 サイレント、ついに天界へと移動をする。

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