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第23話 サイレント、空に跳ぶ

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生を見捨てようとして院長先生を怒らせる。

 サイレント、院長先生に攻撃されたので、ユニコーンと逃げる。



 ユニコーンと逃げている最中、背後から『ドッカン、ドッカン』と爆発する音。

 ホーリィの魔法が大木を爆発させているんだろう。


 うん、こんなのをくらったら、紙装甲のボクは間違いなく死んじゃうよ。


 ボクは振り返らずに、まさしく必死に脚を動かす。


 そんな中、ユニコーンがボクよりも脚を早め、ボクの前を陣取ってきた。


 何だ、ユニコーン!!

 自分だけボクより先に逃げようってか?

 ぬけがけは許さないんだからな!!


 ボクはユニコーンを追い越そうと加速をしようと脚に力をいれた瞬間のことである。


 …………あれ?

 さっきよりも走りやすい。


 自分の脚に力をいれなくても、いつもよりはやく走れていることに気が付いた。


 何でだ?

 …………そうか、風よけだ。

 ユニコーンが前にいるから、風の抵抗がないからいつもよりも速く走れるんだ。


 おお、ユニコーン、お前、ボクの風よけになってくれるから前に出てきたってことなのか?

 ユニコーンが先頭に立って風よけになってくれれば、後ろについてくるボクは体力を温存できる。


 昨日の敵は今日の友というが、さっきの敵は今日の友だね、この状況は。


「ユニコーン、お前ってやつは……ボクとお前はずっとずっと友達だ!!」

 そうさ、永遠に!!


「ひひーん」

 その通りだと言わんばかりにいななき、ボクの方に笑顔を向けてくるユニコーン。


 ボクも笑顔になった瞬間のことである。


 ユニコーンは突然立ち止まり、後ろ脚でボクを蹴飛ばそうとしていた。


 お前、さてはボクだけをホーリィの串刺しにして自分だけ逃げる算段だったな!!


 なんて薄情なやつなんだ。

 お前なんて、友達でもなんでもない。


 ボクも院長先生を見限ろうとしたから、“人のこと”……いや、“ユニコーンのこと”を言えないけど。


 自分だけ逃げようとした態度にカチンと頭に来たボクは、後ろ脚を華麗によけ、ついでにユニコーンの背中へまたがった。


「ひひーん」


 なんで背中に乗るんだよ、あの魔法の槍に殺されてしまうじゃないか……と言わんばかりに悲鳴のようないななきをしながら、暴れまわるユニコーン。


 ボクは必死にユニコーンにしがみつく。

 暴れまわったところでボクは振り落とされたりなんかしないんだからね。

 絶対に。


 ボクがしがみ続けていると、ユニコーンのスピードは落ち始めた。


 このままだと、ホーリィの槍の先に当たって、大けがだよ、ユニコーン。

 でも仕方ないよね。

 ボクを見捨てようとしたんだから。


 お、ホーリィの槍がユニコーンのしっぽに当たりそうだぞ。


 ……って、このままボクもユニコーンにしがみついたままだと、ボクもユニコーンと一緒に大けがじゃないか?


 もう、逃げないと。


 ボクはしがみついていた手に力を入れ、体を宙に浮かせると、ユニコーンの背中を足場にして、大きく上に跳んだ。


 ボクは雲一つない青空から、森を見下ろすと、『ドッカーン』と爆発音がしたかと思ったら、ボクに向かってものすごいスピードで何かが飛んできた。

 あれは間違いなく、院長先生のホーリィでぼろぼろになったユニコーンだ!!


「達者でな」

 ユニコーンとすれ違った瞬間、ボクは手を振り、見送った。


「ひひーん」

 ユニコーンはボクに手を振り返しながら、どこか遠くへと吹っ飛んでしまっていた。


 ふぅ、これでユニコーンに襲われることはなくなったぞ。

 これで一安心……じゃないから!!


 こんなに空高く跳んでしまったら、木の枝を使ってうまく減速しながら着地しないと大けがだから。


 ボクは下を見る。


 そこには、木っ端みじんにはじけ飛んだ大木の残骸があった。

 うん、木がなければ、簡単に減速できそうにないね。


 でも、大丈夫!

 困ったときの火ネズミの皮衣!!


 火ネズミの皮衣があれば、どんだけジャンプしても着地の時の衝撃をカバーしてくれるからね。


 ボクはマジック・バックから火ネズミの皮衣を取り出そうとした……のだが、火ネズミの皮衣が出てこない。


 マジック・バックの中にあるのは、小麦ばかりだ。


 ……なんで?

「あ、そうだ、そうだ。火ネズミの皮衣はニック村でフラットさんに引き渡したんだった」


 ボクはポンと手をうつ。

 ……って、のんきに納得している場合か。


 このままだと頭から地上にダイブだぞ。

 どうする?


 地面にダガーをたたきつけるか?

 いや、そんな時間もない。


 ああ、もうダメだ。

 ボクは諦めて空を見上げる。


 空ってこんなに青かったんだな……


 このままだと背中からぶつかるな……


 さようなら、世界。

 覚悟を決めて目を閉じる。


 目を閉じた瞬間、背中に衝撃が……なかった。

 痛みを感じずに死んでしまったのだろうか……


 ボクは恐る恐る目を開ける。

 そこには院長先生の顔があった。

 どうやら、ボクが地上にぶつかる瞬間、院長先生にお姫様抱っこされて助けられたみたいだ。


「空から男の子が降ってきたのよ! アンビリーバボー!! なんでこんなことになっているのよ!?」


「何でって、白々しすぎますよ。院長先生のせいじゃないですか。逃げ切れたからよかったようなものの、当たっていたら大けがでしたよ」

「私を見捨てようとした人が何か言ったのよ?」


 うわ、あれだけの仕返しをして、まだ根に持ってるよ……


「院長先生を見捨てようとしたのではなくてですね、アサシンのボクは紙装甲じゃないですか? そんなボクがユニコーンの突進に耐えれられないと判断して……」


「まだお仕置きがほしいなら、言い訳を続けるといいのよ、サイレント」

 ボクの話の途中で割り込んでくる院長先生。


「不肖、サイレント、お口をチャックさせていただきます」

 ボクは院長先生にお姫様抱っこをされながら、口を閉じた。


忙しい人のためのまとめ

 ユニコーン、魔法に巻き込まれて空へと吹っ飛ぶ。

 サイレント、院長先生に助けられる。



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