第20話 サイレントと院長先生ユニコーンに追いかけられる
これまでのあらすじ
サイレント、ユニコーンについて学ぶ
サイレント、ユニコーンをバカにする。
ユニコーンは、こちらをにらみながら右前脚を何度も地面にこすりつけている。
これって、突進してくる前触れだよね。
「いや、あのこれはですね、ユニコーン様をサイみたいだとバカにしたわけじゃないんですよ……」
「なんでこの期に及んでウソついて言い訳しようとするのよ!? ユニコーンにウソは通じないといったはずなのよ」
あ、そうだった。
すっかり忘れていた。
ボクのバカ!
右脚をこすりつける間隔が徐々に速くなってきている……
ボクと院長先生は顔を同時に見合わせて、同時にこくりとうなずくと、同時に走り出した。
うん、素晴らしいシンクロ率……って、思っている場合か!!
ボクたちが走り出したと同時に、いななきながら追いかけてくるユニコーン。
「もしかして、さっきの場所って、天界への関門だったんですか」
「もしそうなら、私がこんなところでユニコーンのことを笑うわけないし、サイレントのことも止めているのよ」
それもそうだ。
「それならなんでこんなところにユニコーンがいるんですか?」
「知らないのよ。一頭だけだから、きっと天界から降りてきて、散歩でもしていたんじゃないのよ」
「ひひーん」
その通りだと言わんばかりに、いななくユニコーン。
「とにかく、逃げましょう」「そうなのよ」
ボクは院長先生のスピードに合わせながら一緒に逃げる。
まさか、院長先生と肩を並べて一緒に逃げることになるなんて、夢にも思わなかったよ。
「あ、そういえば、ユニコーンってテレパシーが使えるんですよね? もしも仲間を呼ばれたら、追い込まれてしまうんじゃないですか?」
「それについてはすでに私の魔法でテレパシーを使えなくしているから大丈夫なのよ。ひとまず、逃げ続けるのよ」
「分かりました」
さすがは院長先生。
そういうところは抜け目ない。
…………
……
「逃げ続けてだいぶたちますけど、いつまで逃げればいいんですか?」
「そんなの、ユニコーンに訊いてほしいのよ」
「そうですね。それじゃあ、今から突進してくるユニコーンに訊いてきます…………って、そんなことできるわけないじゃないですか!!」
訊く前に吹っ飛ばされるのがオチだ。
「それなら逃げ続けるしかないのよ」
「聖獣相手に体力勝負ですか?」
「まさか、そんなバカことはしないのよ。逃げつつも策を見出すのよ」
「何か策があるんですか?」
「森の中に入れば、木がユニコーンの巨体を邪魔して、速度が落ちるはずなのよ」
院長先生はミスリド海集落へと続く森を指さす。
「なるほど、さすがは院長先生」
地の利を生かすというわけか。
ボクと院長先生は森の中に入った。
目の前には無数の大木。
ボクと院長先生は、大木を避けながら一緒の方向へと逃げ続ける。
よしよし、これだけ大木があるなら、さすがのユニコーンも諦めるだろう。
ボクと院長先生はは何本か大木を避けたところで足を止めて後ろを振り返った。
さあ、諦めろ、ユニコーン。
ユニコーンは木など気にする様子もなく、スピードを緩めずに一直線にボクたちに追ってきていた。
「スピードを緩めずに突進してくるとは、バカなユニコーンなのよ。そのまま大木に頭を打って気絶でもするといいのよ」
「そうだ、そうだ!! ボクよりバカのユニコーンめ!!」
スピードを落とさないなんて自殺行為だぞ!!
バリバリバリッ!!
ユニコーンが木にぶつかった音が響き渡る。
ん?
バリバリバリッ?
こういう時って、普通、バーンじゃないの?
ボクは音の出所をまじまじと見る。
そこには無傷ユニコーンがボクたちに向かって突進を続けていた。
「ウソでしょ?」
ボクはあっけにとられてしまう。
あのユニコーン、あんなに大きな木を角一本だけでなぎ倒したってこと?
しかも、スピードを全然落とすことなく。
「ちょっと、サイレント、ぼーっと突っ立ってないで、逃げるのよ!!」
「すみません」
院長先生に促され、ボクはすぐさま走り出した。
「院長先生、あのユニコーン、巨木をなぎ倒したにも関わらず、スピードを緩めずにボクたちを追ってきているんですけど、これはどういうことですか?」
「あのユニコーンはスキル・肉体硬化を使ったのよ」
「なんですか? 肉体硬化って?」
「ユニコーンが自身の角を大木をもなぎ倒すくらいに硬くさせる魔法なのよ」
「ああ、肉体硬化の魔法のおかげで、ユニコーンは追ってこれるというわけですね……って、大問題じゃないですか!! このままだと、ボクたち、ユニコーンに串刺しにされますよ」
「そうならないためにも、今は必死に逃げるのよ」
「そんなー」
ボクは大声で叫びながら逃げ続ける。
逃げ続けていると、急に目の前が真っ暗になった。
「院長先生、ボク、前が見えません!! もしかしたら、ユニコーン攻撃魔法かもしれないです。院長先生は大丈夫ですか?」
ボクは前が見えなくても、気配察知を使えばぶつからずに走ることができるけど、院長先生はボクほどの気配察知は使えないはずだから、下手したら大木と正面衝突して大けがになりかねないぞ。
「落ち着くのよ、サイレント。ユニコーンの攻撃じゃないのよ」
「それじゃあ、何でボクは前が見えないんですか?」
「あなたの顔に紙が張り付いているだけなのよ」
紙?
ボクは手を顔の前に持ってくると、確かに紙らしきものが張り付いていた。
「なんでこんなところに紙があるんですか……って、手配書じゃないですか、これ」
なんて書いてあるかはわからないけど、手配書なのは確かだ。
「これは…………変装の名人で男か女か性別不明だけど、民から慕われている義賊・パルーンの手配書なのよ!!」
「なるほど、そんな義賊が指名手配されているんですね……じゃないですよ、何でこんな森の中に手配書があるんですか?」
「そんなの、理由は一つに決まっているのよ」
院長先生はそう言いながら木の上を指さした。
忙しい人のためのまとめ
サイレントと院長先生ユニコーンに追いかけられ続ける。
サイレント、手配書で目の前が真っ暗になる。