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第18話 院長先生、アリアを離れさせる

これまでのあらすじ

 サイレント、何も言わずして、院長先生のパーティ加入の申し出を断る。

 サイレントとアリア、結局、院長先生をパーティーに迎え入れる。




「ありがとう、アリア」

 ボクはアリアにお礼をする。


「デスが、一つ条件があるデス」

 アリアは院長先生に聞こえないように耳元でささやいた。


「何かな? ボクにできることならなんでも言って」

 世界中から習われるのに比べたら、もうなんでも来いだよ。


「お姫様抱っこをしないでほしいデス」

「そうだよね、人前でお姫様抱っこをされるのは恥ずかしいよね。ごめん、ごめん」


「違うデス。アリアはお姫様抱っこしてよいデスが、あの堕天使をお姫様抱っこしないでほしいデス」

「うん、いいよ」

 なんだ、院長先生をお姫様抱っこしなければいいだけでしょ?

 そんなの余裕だよ、余裕。


「こそこそと何を話しているのよ?」

「アリアにお礼をしていたんですよ」

 ボクは適当に話しをごまかす。


「私もするのよ。アリアちゃん、私を仲間に入れてくれてありがとうなのよ」

 アリアに抱き着く院長先生。


 アリアの顔がどんどん険しくなる。


「離れるデス!!」

 アリアは院長先生をひっぺ返そうとする。


「あ、ごめんなさいなのよ。それなら、サイレントに抱き着くのよ」

 ひっぺ返された院長先生はボクに抱き着く。


「ダメデス! 師匠はアリアの……」

 アリアは瞬動を使ってまで院長先生とボクとの間に割って入ってきた。


「サイレントはアリアちゃんの何なのよ?」

『にまー』と笑いながらアリアの次の言葉を待つ院長先生。


「何でもないデス」

 ぷいとそっぽ向くアリア。


「アリアちゃん、かわいいのよ」

 院長先生はちゃっかりとアリアに抱き着いた。


「離れてくださいデス!!」


「分かったのよ。それじゃあ、離れるのよ、アリアちゃんが」

 院長先生はさっと離れ、ボクにひっつく。


「アリアがデスか? それってどういうことデスか?」


「そのままの意味なのよ、アリアちゃん。パーティーを組んでさっそくなんだけど、今からサイレントと私で別行動をするから、アリアちゃんはこのミスリド海集落に一人で私たちの帰りを待っているといいのよ」

 ニコッと笑う院長先生。


「あなたになんの権限があって、アリアだけを仲間外れにするんデスか?」

 きっと院長先生をにらみつけるアリア。


「アリアちゃんをパーティーから外すのは、パーティーの総意なのよ」


「総意じゃないデス」


「そんなことないのよ。ね、サイレント?」

 ボクに同意を求めてくる院長先生。


「えっと……」

 そうなんだ……とは言いづらい。


「アリアちゃんと結婚」

 院長先生は耳元でささやいてくる。


「実は……そうなんだ」

 ボクはうなずかざるを得なかった。


「ほら、私もサイレントもアリアちゃん追放に賛成しているんだから、2対1でパーティーの総意なのよ」


「アリア、院長先生を迎え入れたのに、5分で追放されるんデスか?」


「そういうことになるのかな?」

 5分という時間はよくわからないけど、追放することに変わりはないよね。


「アリアはこのパーティーにいらないということデスか?」

 アリアは目を潤ませてこちらを見てくる。


「いや、違うんだ、アリア。院長先生は追放するっていっているけど、用事が終わったら、すぐにまたパーティーを組めるから」

 そうだよ、アリアとの婚約を解消すれば、またパーティーを組めるんだ。


「期限付きだったんデスね」

 アリアは一安心する。


「どれくらいの期間、アリアは離れなければならないんデスか?」

「えっと、どれくらいなんですか?」


 まったく見当もつかないのでボクは院長先生に顔を向けた。


「1か月くらいなのよ」

「そんなに待てないデス」

 即答するアリア。


「それなら1週間でどうなのよ?」

「3日間デス。3日間だけ待ってあげるデス」


「分かったのよ。それじゃあ、アリアちゃん、3日後にね」

 そう約束すると、ボクの手をとり、走り出す院長先生。


「どうしたんですか? 急に走り出して」

「3日間しかないのよ、1秒でも無駄にできないのよ」


「そうかもしれませんが、アリアから逃げるように走らなくたっていいじゃないですか」

「逃げるように走るんじゃなくて、私たちは実際にアリアちゃんから逃げているのよ」


「逃げている……って、え? 何で?」

「あなたの婚約をアリアちゃんにバレないように破棄するのに、アリアちゃんがついてきたら、パーティーを解散した意味がないのよ」


「それもそうですね」

 おっしゃる通りだ。


「納得したなら、もっとはやく足を動かすのよ」

「いやいや、こんだけ走れば、さすがのアリアもついてこれないですよ」


「そう思うなら、後ろを見てみるのよ」


 振り返るとアリアの姿が見えた。


「追ってきている……だと」

「それもすごい速さなのよ」


「なんで、こんなに追いつけているんだ……って、ボクの瞬動をアリアに見せたことがあったからだ!!」

「見るだけ……って、あの子、魔眼の使い手なのよ!?」


 院長先生は驚きの声をあげる。

 こんなに驚いた院長先生を見るのは初めてだ。


「魔眼って何ですか?」

「何でも見るだけでコピーができるスキルなのよ」


「ああ、アリアもそんな能力があるって言っていた気がします」

「あの速さから逃れるのは骨が折れるのよ」


「そんなことを言いながらも、アリアと距離を離しているじゃないですか」

「アリアちゃんに追いつかれるほど、まだ老いちゃいないのよ」


 ボクと院長先生は全速力でアリアから逃げ出した。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、アリアをパーティーから外す。

 パーティーから外されたくないアリア、サイレントと院長先生を追う。



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