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第16話 サイレント、アリアの口車に乗る

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生が堕天使だと知る。

 アリア、サイレントに堕天使の院長先生は仲間にふさわしくないと説明する。





「師匠、どうしてそんなに慌てて、かんでいるんデスか? しかも、アリアの目を見ていないデスよね?」


 じーっとこちらの目を覗き込んでくるアリア。

 うん、これは間違いなく疑われているね。


 ここは正直に伝えるか?


 ……いや、ダメだ。

 そんなことしたら、すべてが台無しになってしまう。


 それならウソをつくか?

 ウソをついてもいいけど、今のアリアならすぐにウソをすぐにでも見破ってしまうだろう。


 ウソをつかずに、なんとかこの場をごまかすしかない。


「師匠、どうしたんデスか? 黙りこくって」


「え? あ、それは……さすがはアリアだなって感心していたんだよ」


 ボクは腕を組み、首を縦にふって感心しているフリをする。


「師匠が感心しているってことは、やっぱりあの堕天使は何かを企んでいるんデスね?」


「…………実はそうなんだ」

 ボクはアリアの話に乗っかって、深刻そうな表情を作る。


「何を企んでいるんデスか?」

 眉間にしわを寄せながら訊いてくるアリア。


「ここだけの話なんだけど、結婚適齢期を過ぎそうだから、焦っていて、常に結婚しようと企んでいるんだよ」


 ボクは大げさに周りを見回し、誰もいないことを確認してから、アリアの耳元でささやきながら返答した。


 院長先生と言えば、結婚願望。

 結婚願望と言えば、院長先生。


 そこにウソ偽りはない。

 結婚願望を突き通せば、アリアをうまくごまかせるはずだ。


「結婚適齢期が過ぎそうデスって? そんなはずないデス!!」


 大声をあげるアリア。


「ボクより年上なのに、どうしてそう言い切れるのさ??」


「天使の寿命は人間の3倍だからデス」

「ん? どういうこと?」


「人間換算にすると、あの堕天使は、師匠よりも年下で子どもだということになるデス」

「院長先生が子ども?」


「そうデス。見た目から推定するにあの堕天使は30歳前後なので、人間の年に換算でだいたい10歳程度なんデスよ」

「なるほどね、そういうことか!!」


 さっぱりわからん。

 数字を出されても理解できないから、ボク。


 ボクより長く生きているのに、ボクより年下で子どもってどういうこと?

 ちんぷんかんぷんだ。


 でも、ここは大きくうなずいて、分かったフリをしておこう。


 バカと思われないために。


「でもね、アリア、院長先生は結婚適齢期ではないかもしれないけれど、結婚したいという気持ちがあるというのは本当なんだよ」


「それなら、師匠、気を付けてくださいデス」


「何を?」

「師匠が結婚相手にさせられるかもしれないデス」


「ボク? いやいや、あの院長先生だよ? そんなことあるわけないよ。異性としての魅力が感じられないし」

「今は魅力が感じられないデスが、未来は分からないデス」


「未来は分からないって、どういうこと?」

「あの堕天使はまだ、成人年齢である40歳になっていないので両性なんデス」


「『りょうせい』ってことは、院長先生は水中でも生きられるの?」

「陸と水中どちらもできる両生じゃなくて、男でもあり、女でもあるってことデス」


「そうなの?」

「そうデス。あと数年間、性別を決めるまでは男にも女にもなれるんデス」


 両性だから、男だろうと女だろうと誰彼構わず求婚していたのか……

 そして、両性だからこそ、結婚相手の異性として見られないんじゃないか。


「それじゃあ、もし、院長先生が女性になることを選べば……」

「師匠は今よりもっとあの堕天使を魅力的に感じるはずデス」


「ボクが院長先生に魅力を感じる? そんなことあるわけないって」

「分からないデスよ。相手は堕天使デスから。スタイル抜群になっているかもしれないデス。うかうかしているといつの間にか師匠が結婚にさせられていた……なんてことにもなりかねないデス」


「大丈夫だよ、きちんと断れば」

「師匠は、あの堕天使の申し出を断れるデスか?」


「院長先生との申し出なんか、お茶の子さいさいで断れるよ」

「それなら師匠、手本を見せてくださいデス」


「え?」

「今現在、堕天使がパーティーメンバーに入りたいと言っているので、お茶の子さいさいで断ってほしいデス」


 あ、これは悪い流れだ。


「なんで?」

「あの目は結婚以外の目的があるからに決まっているからデス」


 うう、最初から見抜かれていた……

 でも、さすがに、アリアとの婚約を解消しようとしてるんだ……と本当のことを言うわけにもいかないしな……


 もしも、本当のことを言ってしまったら最後、アリアが逆上して何をしでかすかわからない。


「そんなことないよ、院長先生は何も企んでなんかいないさ」

「師匠は、院長先生が何か企んでいるといったばかりデスけど……」


「それはいつものことで、アリアに対しては何も企んでいないと思うよ」

 本当は企んでいるけど。


「そうデスか。師匠も堕天使も本当に何も企んでいないというのなら、堕天使をパーティに加える件は、ぜひとも断ってくださいデス」


 えっと、もし、院長先生をおパーティーに加えなければ、ボクはアリアと結婚して、世界中を敵に回すんだよね。


 …………ということは、アリアの提案を断らなくちゃだめだ、アリアの提案を断らなくちゃだめだ、アリアの提案を断らなくちゃだめだ!!


「もちろん、何も企んでいないんだから、断るのなんて簡単さ。ボクに任せてよ」

 ボクはいつの間にか、自分の胸をドンと叩いていた。

 …………ボクのバカ。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、院長先生はまだ結婚適齢期じゃないことを知る。

 サイレント、アリアの口車に乗ってしまい、院長先生の申し出を断ることになる。



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