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第14話 サイレント、アリアと二人きりで話す

これまでのあらすじ

 院長先生、自分の結婚のために、サイレントを助ける。

 サイレント、院長先生からパーティーの契約を迫られる。




「アリア、唐突なんだけど、その……ちょ、超絶可愛いくて、超絶強いボクの師匠でもある院長先生をパーティーに加えても良いかな?」


「師匠、苦虫を潰したような顔で言っているデスけど、誰かに言わされているデスか?」

「実はそう……痛っ」


『実はそうなんだ』と言おうとしたところで院長先生はボクの足を踏んだ上に、『私をパーティーに加えないと、アリアちゃんとの結婚なのよ』……と、院長先生はボクの耳元でささやいてくる。


「誰かに言わされているだって!? そんなわけないじゃないか、アリア」


 本当は言わされていまーす。

 ボクは院長先生の傀儡でーす。


「本当デスか?」


「本当さ。ボクは本心から院長先生を仲間に迎え入れたいと考えているんだよ」

 今度は、自然に見えるようにボクは微笑んだ。


「師匠、笑顔が不自然過ぎます」

「ボクの笑顔はいつもこんなだよ」


「そうよ、サイレントの笑顔はいつもこんななのよ」

 院長先生もフォローしてくれた。


「そうですか?」

 アリアは明らかにいぶかしんでいる。


「いいかい、アリア。ボクの笑顔はどうでもいいんだ。院長先生をパーティーに加えてもいいかどうかだよ、アリア。院長先生は超強いんだよ。仲間に入れようよ」


 お、ボクの提案にアリアはにっこりと笑ってくれたぞ。

 これはいい返事がもらえそうだ。


「却下デス」

 にっこりとしたまま却下してくるアリア。


「え?」

 聞き返したのはもちろんボクだ。


「師匠は超絶強いと言っているデスが、この方は孤児院の先生だったんデスよね? 戦力にならないと思うデス」


「ちょっとちょっと、世界一カワイイ淑女のように見えるからって、なめてもらっちゃ困るのよ」

 腕まくりをする院長先生。


「世界一カワイイ淑女なんて言ってないデスし、カワイイ淑女には見えないデス」


 確かにアリアの言う通り、院長先生は淑女ではないよね。


 ショートカットで、生傷も絶えないから、院長先生の第一印象はわんぱくな子どものようにしか見えないし。


 そして何より、淑女はなめられたからといって、腕まくりなんか絶対にしない。


「アリアちゃん、私はね、超絶カワイイ淑女に見えて、聖属性の攻撃魔法と回復魔法を使えるのよ。きっと戦闘の役に立つのよ」


 うわっ、院長先生、アリアの言うことを完全無視して、アリアの腕をつかみながらお願いしているよ。


 子どもかっ!!


「くっつかないでくださいデス」

 腕だけでは飽き足らず、アリアの体に抱き着いてきた院長先生に文句を言うアリア。


「抱き着く位いいじゃないのよ、減るもんじゃないんだし」

「減っているどころか、怒りが溜まっているデス」


「院長先生、アリアから離れましょうか」


 ボクは院長先生をアリアからひっぺがえす。

 これ以上、アリアを怒らせたら、絶対にパーティーには入れないって言われちゃうよ。


「サイレントが言うなら、しかたないのよ」

 院長先生は口を尖らせながら、渋々アリアから離れた。


「師匠、ちょっといいデスか?」

 笑顔で尋ねてきているけど、今まで見たことのない笑顔でとても怖い。


「どうしたのよ? 言いたいことがあるなら、今ここで言うといいのよ」

 こたえたのは院長先生だった。


「アリアと師匠だけで話をしたいんデスが」


 どうやら、院長先生には聞かれたくない話のようだ。

 うう、きっと、パーティーを組むことを反対するつもりだろう。


「すみません、院長先生、ちょっといいですか?」

「もちろんなのよ。じっくり、ゆっくり、私の魅力について話すといいのよ」


 笑顔で手をふる院長先生。

 すれ違い様に耳元で、『アリアちゃんと結婚』とささやきさえしなければ、完璧な送り出しだっただろう。


 院長先生に見送られながら、ボクとアリアは人気のないところへと歩く。


「……それで話したい事って何?」

 院長先生からだいぶ離れたところで、ボクはアリアに尋ねた。


「師匠! 訊きたいことがあります」

 詰め寄ってくるアリア。


「顔が近い、近いよ、アリア」

「すみませんデス」

 アリアは少しだけ距離をとった。


「先ほどは自称・院長先生と何を話されていたんデスか?」

「あー、それは、そのー、世間話……かなー」


 言えない。

 言えないよ。

 アリアが魔族だと気づいて、しかも婚約を破棄しようとしているなんて口が裂けても。


「本当デスか?」

「うん、本当だよ」


「そうなんデスね……」

 歯切れ悪くうなずくアリア。


「どうしたの?」

「いえいえ、自称・院長先生……もとい、あの天使が師匠に変なことを吹き込んだんじゃないのかと思っただけデス」


「いくら院長先生が天使だからって、変なことなんて吹き込まれてないよ……って、天使?」

 天使って、院長先生のことだよね?


「そうデス。あの天使デス」


 こくりとうなずくアリア。

 いやいや、何を言っているんだ、アリアは。


 院長先生が天使?

 院長先生は、常に結婚願望むき出しの欲望の塊なんだよ。


 天使とは程遠い存在なのに、天使と表現するなんて、ちゃんちゃらおかしいよ。


 あ、分かった。

 ボクから見たら天使とは正反対に位置する人だけど、アリアは院長先生のことを知って間もないから、天使に見えたんだ。


 きっとそうに違いない。


 確かに、院長先生は美形というより、子どもっぽくて可愛い系だしね。


「院長先生が天使みたいに可愛いってこと?」


「見た目の話ではないデス。院長先生は天界にいると言われている天使デスよね?」

「天使? 院長先生が?」


「そうデス」

 こくりとうなずくアリア。


「…………えーーーーーーーー!!」

 ボクは大声をあげてしまった。


忙しい人のためのまとめ

 院長先生、無理やりパーティーに入ろうとする。

 アリア、サイレントが院長先生に何か吹き込まれたのではないかと疑う。



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