第13話 サイレント、院長先生からパーティーの契約を迫られる
これまでのあらすじ
サイレント、アリアと結婚するのもありだと思う。
サイレント、アリアと結婚すれば世界を敵に回すことを院長先生に聞かされる。
「本当なのよ。ただ、とんでもなく危険で、失敗をしたら婚約破棄の前に天界から追放になるかもしれないリスクがあるのよ。それでもやる覚悟はあるのよ?」
「もちろんです!!」
世界から追放されるより、天界だけから追放されたほうがいくらかましだ。
「よく言ったのよ、サイレント! さすがは私の教え子!!」
「院長先生こそ、ボクのために、ボクと一緒に天界を追放されるリスクを一緒にしょってくれるとは思いませんでした。ありがとうございます」
「サイレントのためというより、私の結婚のためだし、危険が降りかかったら、すべてサイレントに責任を押し付ければいいのだから、私のリスクは0なのよ」
「何か言いましたか、院長先生?」
ぼそぼそ言っているから、なんて言っているかわからなかった。
「いいえ、教え子が困っていたら助けるのは当たり前だと言っていたのよ」
「ありがとうごいざいます」
ボクは深く深く頭を垂れた。
「よし、そうと決まれば、私を正式にサイレントのパーティーに加えるのよ」
「え? 正式にですか? 別に一時的なパーティーでもいいじゃないですか」
「一時的なパーティーだと、サイレントとアリアちゃんとの契約を解除したら、私は用済みになって、メンバーから外されるのよ。それだと、結婚できる可能性が低くなるのよ」
「え、何か言いましたか?」
「正式なパーティーじゃないと、サイレントを助けることなんてできないのよ」
「そうなんですか……」
「何でそんなにイヤそうなのよ」
「それは、その……」
言えない。
院長先生と一緒にパーティーを組むと、食費がとんでもない額になるからイヤなんです……なんて。
「私をパーティーに入れたくないなら別にいいのよ。アリアちゃんとめでたくゴールインして、世界中を敵にすればいいのよ」
「それは困ります!!」
「困るんだったら、まずは私をパーティーに入れるのよ」
院長先生はにかっと笑った。
ん? 待てよ……
「ボクとアリアは正式なパーティーを組んでいませんでした!!」
「え?」
「ボクはアリアと旅をしてきましたけど、アリアは冒険者登録をしてないんですよ。アリアは冒険者ではないから、もちろん、ボクとアリアは正式なパーティーは組めないんですよ」
「ああ、そういえば、アリアちゃんは魔族だったのよ。そもそも冒険者登録ができるわけがなかったのよ」
「そうですよ。だから、正式なパーティーは残念ながらできないんですよ。いやー、残念だなー」
「全然、残念そうに見えないのよ」
あ、まずい、ここは悲しいふりをしておかないと、後々面倒だ。
「そんなことないですよ。あー、残念だー」
ボクは大げさに肩を落とした。
「それなら、私と契約して、正式なパーティーになるのよ!!」
「え?」
「私は冒険者登録をしているから、サイレントとは正式にパーティーを組めるのよ」
「パーティーのことは、ボクだけでは決められないので、アリアにも訊いてみないと」
「正式なパーティーじゃないのに?」
「正式じゃないけど、今まで一緒に旅をしていましたからね。さすがに、意見を聞かないと」
「分かったのよ」
院長先生はしぶしぶうなずいてくれた。
「それじゃあ、アリアに聞きにいきましょう!!」
「ちょっと待った。サイレント、アリアちゃんにはどう説明するつもりなの?」
「それは……正直に『アリアと結婚する契約を結んだけど、ボクと魔族のアリアが結婚すると、全世界を敵にまわしちゃうから、婚約破棄するために、院長先生を仲間にしてもいい?』……って」
「全然ダメなのよ、サイレント」
「何でですか?」
「いい、サイレント。アリアちゃんが魔族だとサイレントが気づいたら、アリアちゃんは何をしでかすかわからないのよ」
「え? そうなんですか?」
「そりゃあ、そうなのよ。おそらく、アリアちゃんは自分の正体を隠しながら行動しているんだから」
あ、そっか。
そこまで気が回らなかった。
「それなら、なんて言えばいいんですか?」
「サイレントの師匠で、超絶可愛いくて、超絶強い仲間をパーティーに入れようって言えば、一発なのよ」
院長先生は、ウィンクをしてみたり、拳を鼻のところに持ってきたりと、ありとあらゆる『ぶりっ子のポーズ』をしながら言ってくる。
「そうですよね、ボクの師匠で、超絶可愛い……って言いませんよ。なんでボクが院長先生を超絶可愛いなんていわなければならないんですか?」
おえー。
「言わないならいいのよ。アリアちゃんとお幸せになのよ」
さっと身を翻す院長先生。
「すみません、ボクが間違っていました。超絶可愛い院長先生。ぜひとも仲間になってください」
「もっとへりくだってお願いしたら、仲間になってあげるのよ」
「仲間になっていただけないでしょうか?」
ボクは深く深く頭を下げる。
「仕方ないのよ。アリアちゃんの了解を得たら仲間になってあげるのよ」
「えっと、それは正式なパーティーじゃなくてもよろしいでしょうか?」
「私をすぐにパーティーから追放しないなら、それでもいいのよ」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
ボクは院長先生に何度も感謝の言葉を伝えた。
忙しい人のためのまとめ
院長先生、自分の結婚のために、サイレントを助ける。
サイレント、院長先生からパーティーの契約を迫られる。