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第9話 院長先生、穴だらけな妄想をする

※2024年1月20日、サブタイトルの話数が間違っていたので訂正しました。(本文は変更していません)


これまでのあらすじ

 サイレント、アリアが魔族じゃないと抵抗するが諦める。

 サイレント、アリアは何者かと院長先生に問うが、院長先生は知るはずもない。



「そもそも、サイレント、あなた、アリアちゃんとどこで会ったのよ?」

「えっと……ボクが家のベッドで眠っていると、アリアは寝込みを襲ってきたんです」


「アリアちゃん、なんて大胆な行動なのよ!!」


 口に手をあてる院長先生。

 大胆な行動ってどういうことだ?


「それで、寝込みを襲われて、キスとかされちゃったのよ?」

「キ……キスですって!? 何でボクがキスされる話になっているんですか?」


「え? だって、サイレントは寝込みを襲われたのよね?」

「院長先生勘違いしてませんか? ボクはアリアに寝込みを襲われて、大鎌で命をとられそうになったんですよ!!」


「ああ、寝ているところを襲撃されたってことなのよ……」

「そうですよ」


 まったくもう、院長先生は何でも色恋沙汰にしたがるんだから……


「それで、襲われたサイレントは、どうなったの? もしかして死んじゃった?」


 院長先生は話の続きをワクワクしながら尋ねてくる。


「ボクが死んでいたら、今ボクは院長先生と会話できていないと思うんですけど」

「それもそうなのよ」


 ぺろっと舌を出す院長先生。

 絶対に分かっていて聞いただろ、院長先生。


「……って、ちょっと待って。サイレント、アリアちゃんを差し向けたのは私だと勘違いしていたのよね?」

 みるみるうちに表情が険しくなる院長先生。


「えっと、そうですね」

「私がサイレントの命を狙わせるわけないじゃない!!」


 怒りの矛先をボクに向けてくる。


「サイレント、あなた、何で疑った目で私を見ているのよ」

「院長先生なら言いかねないからですよ」


 昔から院長先生を怒らせたら、命がいくつあっても足りないくらいの反撃が待っていたのだ。

 ボクの命を誰かに狙わせても全然不思議じゃない。


「魔王じゃあるまいし、命を狙えなんて物騒なこと、私は言わないのよ」


 院長先生はだいぶ怒っていた。

 これ以上怒らせるとボクが命をとられてしまう。


 何でもいいから早く話題を変えないといけないぞ。


「院長先生じゃないとしたら、誰がアリアにボクの命を狙うように差し向けたんでしょうか……」


「アリアちゃん自身がサイレントに恨みがあって、命を狙おうとしたってことはないのよ?」


「アリアがですか? それはないですよ」

 ボクに恨みがあるなら、最初から一緒に旅をして魔王を倒そうなんて言わないはずだ。


「それなら、魔族の誰かが、魔王を倒すために、勇者を倒せとアリアちゃんに発破をかけたという線もあるのよ」


「魔王を倒すのに、どうして、勇者を倒すんですか? さすがにそれは飛躍しすぎですよ」


「そうでもないのよ。ここからは想像なのだけど例えば……」

 院長先生が話を切り出した。


「魔王に恨みを持ち、魔王を倒したいアリアちゃんは、魔王に会わせろ……と毎日毎日抗議していたのよ。でも、魔王は勇者討伐のため忙しいと面会謝絶されるのよ」

「ふむふむ」


 人間界の王様と一緒で、きっと、魔族の王様はなかなか会えない存在なのかもしれないな……


「面会謝絶され続けたアリアちゃん。そんなとき、魔王軍の誰かがぼやくのよ。『勇者一行を誰かが倒せば、魔王様は忙しくなくなるのにな』……って」


「なるほど。勇者一行を倒せば、魔王は忙しくなくなり、アリアにも会えるってことですか?」


「そうなのよ。それで、いざ、勇者退治のためにカバッカ町に来たのよ」

 院長先生は話を続ける。


「カバッカ町に来たアリアちゃんは、夜中に自分の翼を使って空から誰にも気づかれないように潜入したのよ」

「なるほど」


「そして、勇者のパーティーの一員であるサイレントを見つけ襲撃するも、あえなく返り討ちにあっちゃったのよ」

「おお、筋は通っていますね」


「全然、筋は通っていないのよ。むしろ、穴だらけの妄想なのよ」


「え? 何でですか?」

 穴なんか全然ないように思えたけど……


「だって、この妄想は、魔族のアリアちゃん一人で油断している勇者パーティーに、戦いを挑むだけ。油断しているとはいえ、アリアちゃんが勇者メンバー全員に勝つ確率はとても低いのよ」

「確かに」


 ボクに負けているくらいだ。

 ラカンなんて倒せないだろう。


「もし、アリアちゃんが失敗すれば、カバッカ町の魔族に対する警戒が上がり、ますます勇者を倒せなくなる。そうすれば、メインの人間界支配計画も台無しになるのよ。力のないアリアちゃんに発破をかけるなんてずさんな計画なんて立てないのよ」


「それなら、誰かが発破をかけたんじゃなくて、アリアが自分で気づいたんじゃないですか? 勇者一行を倒せば、魔王が自分と会うかもしれないと……」


「その可能性はもっと低いのよ」

「なんでですか?」


「アリアちゃんは、しゃべれて教養もあるから、魔族の住む魔界の出身に違いないのよ。魔界の住人は人間界に来る時に、必ず魔界の門を通らなければならないのよ」

「魔界の門を通ればいいじゃないですか」


「その門には門番ケルベロスがいるのよ。ケルベロスは、魔王の許可した魔族だけを通す存在なのよ。魔王の許可もなく、人間界には来られないのよ」


「それなら、魔王が許可したんですよ!」


「さっきも言ったけど、アリアちゃんが失敗したら、メインの人間支配計画が台無しになるかもしれないのよ。アリアちゃんが失敗しても勇者を滅ぼせるとか、町を壊滅状態にできるならともかく、そんなこと魔王が許可しないのよ」


 そうだよね。

 院長先生の言う通り、アリアが失敗したら、勇者を滅ぼせるとか、町を壊滅状態にできないなら、アリアには託さないよね。

 うん、納得……


「……って、アリアが失敗しても、町を壊滅状態にできますよ!!」

 ボクは叫んでいた。


忙しい人のためのまとめ

 サイレント、アリアとの出会いを院長先生に話す。

 院長先生、穴だらけの妄想をする。



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