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第7話 サイレント、院長先生に誘導され罪を告白する

これまでのあらすじ

 アリアと院長先生、険悪なムードを漂わせながら自己紹介をする。

 院長先生、アリアが魔族だと指摘され。サイレントは混乱する。





「アリアが魔族? そんなわけないじゃないですか。院長先生、冗談がきついですよ」

 院長先生でも言っていい冗談と悪い冗談があるぞ。


「冗談じゃないのよ」


 とっても冷静に言ってくる院長先生。

 確かに、冗談を言っているようには見えない。


 そっか、アリアって魔族だったんだ……って、いやいや、そんなはずないだろ。


 ああ、分かったぞ!!

 アリアがボクのことを手玉にとっているから、院長先生の目には、小悪魔に見えたんだ。


 院長先生はアリアが小悪魔に見えたから、ボクのことを惑わす魔族に見えたってことだろう。


 ふー、驚いて損した。


「確かに、アリアは院長先生から見れば、小悪魔みたいに見えるかもしれませんが……」

「小悪魔じゃなくて、あの子は正真正銘の魔族なのよ」


 正真正銘の魔族?

 アリアが?


「そんなわけないじゃないですか」

「どうしてそう言い切れるのよ? まさか、アリアちゃんの裸を見たの?」


「裸を見るとどうして魔族じゃないって言えるんですか?」

「魔族の種族には、背中に翼があるのよ。だから確認しているのよ」


「見てないですよ」

「なんで、あんなにかわいいアリアちゃんのお風呂を覗かなかったのよ? 人としておかしいのよ、サイレント!!」


 胸倉をつかまれて、揺さぶられるボク。


「院長先生、聞いてください。アリアがシャワーを浴びているところを覗こうとしましたよ。でも、ちょうどモンスターが襲ってきて、見れなかったんですよ。だからボクは人としておかしくないです」


「シャワーを浴びているところを覗こうとするなんて人として最低なのよ」


 しまった。

 罠だった……


「いや、これはですね……」

 うまい言い訳を考えるが出てこない。


「本当にサイレントは最低なのよ……でも安心してほしいのよ。そんなサイレントを私が愛してあげるのよ」

 抱き着いてくる院長先生。


「いや、今、ボクが覗きをした最低男かどうかなんてことはどうでもいんですよ。大切なのは、アリアが魔族かどうかということです」

 ボクは抱き着いてきた院長先生をかわしながら断言する。


「アリアちゃんが魔族であるということは紛れもない事実なのよ」

 院長先生の表情は真剣そのものでふざけているようにはみえない。


「ちょっと待ってください。そもそも論ですよ、アリアは院長先生が紹介してくれた、冒険者に入るか、冒険者ギルドの事務をするか迷っていた女の子ですよね? 最初から魔族を紹介するつもりだったんですか?」


「違うのよ」


「……………………え、違う? 今、なんとおっしゃいましたか?」

 ボクの聞き間違いか?


 今、違うって言っていたような……


「だから、違うのよ」


「ちょっと待ってください。アリアって、孤児院の教え子じゃなかったんですか?」

「もう一度言うけど、違うのよ。だから、アリアちゃんと会うのは今日が初めてなのよ」


「いやいや、待ってください。院長先生が紹介するって言っていたじゃないですか」

「紹介する予定の子の名前は、ジューンっていう名前の女の子なのよ。サイレントに紹介しようとしたら、あなた指名手配犯になっていたでしょ? だから、紹介できなかったのよ」


 つまり、院長先生が紹介したい人はジューンであって、アリアじゃない。


「えーーーーーーーーーーー!!」

 ボクは大声をあげてしまった。


「ちょっと、声が大きいのよ。アリアちゃんに聞こえるのよ」

 院長先生は、しーっと人差し指をたてる。


「師匠、何かあったんデスか?」

 大声に気づいたアリアはものすごい速さでこちらへと駆け寄ってくる。


「いや、何でもないよ。大丈夫。それより、院長先生と大切な話があるから、アリアは離れてもらってもいいかな?」


「アリアが聞いていたらダメですか?」

 絶対に聞かせられないよ、アリアには。


「うん、それは、あれだ……ちょっと、政治的に高度で難解でデンジャラスな会話だからね」

 自分で言っていて意味が分からないほどに混乱しながらこたえるボク。


「そうそう、アリアちゃんには聞かせたくないのよ」

 混乱しているボクをフォローしてくれる院長先生。


「わかりましたデス。もし何かあったら言ってくださいデス」

 アリアはにこりと笑って頷くと、さっきの場所へてとてとと駆け出した。


「それでも、アリアが魔族ということはないかと思います」

 ボクはアリアを見送ってからすぐさま院長先生に切り出す。


「どうしてそう思うのよ?」

「それはアリアが魔王を恨んでいるからですよ」


「どうして、アリアちゃんが魔王を恨んでいるって、知っているのよ?」

「寝言で、『魔王許すまじ』って、いってるからですよ」


「それ、本当に寝言なのよ?」

「本当に寝言って、どういうことですか?」


「あえて、寝たふりをして、サイレントに信じ込ませるためにあえて、魔王への恨み言を言っている可能性もあるのよ」


「いや、魔物に無理矢理眠らされた時も、寝言を言っていたので間違いないはずです」

「なるほど。それならきっと、アリアちゃんは本当に魔王を恨んでいるのよ」


「魔王を恨んでいるなら魔族じゃないでしょ?」

「魔王を恨んでいるから魔族じゃないというのは早計なのよ。魔王軍だって、一枚岩じゃないのよ」


「一枚岩じゃない……どういう意味ですか?」

「魔族の全員が魔王に従っているわけではないということなのよ」


「え? 魔王って、魔族のお頭ですよね? 魔族は魔王の命令に絶対順守しなければいけないんじゃないんですか?」


「魔族といえば、自分の気持ちに正直で自分の目的を果たすためなら、どんな卑劣なことでもやってのけるのよ。それなら、魔王に絶対に逆らってやろうって魔族がいてもおかしくないのよ」


「確かに、アリアには魔王を倒すためならどんなことでもやりそうですが……でも、アリアはボクと一緒に魔王以外の魔物を倒したり、アドバイスをくれたりしていたんですよ。魔王討伐の目的のアリアが、他の魔族のことについてもボクに協力しますか?」


「きっと、アリアちゃんの親は魔王軍の幹部で、魔王に利用されて捨てられたのよ。ボロ雑巾のように。だから、きっと魔王に従う魔族に関しても恨んでいるのよ。ああ、なんてかわいそうなアリアちゃん」


 院長先生は地面にへたり込みながら泣きまねをしはじめた。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、アリアは院長先生が紹介したかった人ではないと知る。

 サイレント、アリアは魔族じゃないと言い張る。

 



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