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第6話 アリアと院長先生、自己紹介をする

これまでのあらすじ

 サイレント、院長先生と立ち話をする。

 サイレント、アリアが院長先生を知らないことを知る。




「知らないって、アリア、もう忘れちゃったの? カバッカ町の孤児院の院長先生のことを」


「忘れるも何も、会うのは今日が初めてデス」


 もしかして、アリア、家族が亡くなったことがあまりにショックで、孤児院にいた時のことを全然覚えていないのかな?


 いやいや、いくらショックだったからとはいえ、院長先生を覚えていないなんてことはないだろう……


「院長先生も何か言ってください」

 ボクは院長先生の方を見て、助けを求めた。


「初めまして、カバッカ町で孤児院院長のインフィニティ・インモラルなのよ」


 ボクの困った表情に気づいた院長先生はアリアに握手を求める……って、初めまして?


 今、“初めまして”って言った、院長先生。


 もしかして、これは本当に、孤児院の時のことをアリアが覚えていないってことか?


「初めまして、サイレントさんと一緒に冒険者をしております、アリアと申す者デス。よろしくお願いするデス」


 院長先生の手をがっしりと握り返すアリア。

 お互いに目を見合わせたまま、剣呑な雰囲気だ。


 なんで、アリアも院長先生からも険悪な雰囲気を醸し出しているんだ?

 ただの挨拶なのに。


 これには何か理由があるはずだ。

 考えろ、考えるんだ、サイレント。


 …………分かったぞ、これって……アリアが孤児院にいた時に流行ったギャグに違いない!!

 険悪な雰囲気で初めましての自己紹介をして、後で笑いあうんだ。


 うん、絶対そうに違いない。

 よーし、ボクも最近のギャグのトレンドに乗っかろう!


「初めまして、冒険者のサイレントと申します。アリアに院長先生、よろしくね」

 ボクは険悪な雰囲気でアリアと院長先生に握手を同時で求める。


「師匠、知っているデス」「何で、サイレントが自己紹介しているのよ?」

 アリアと院長先生はボクの手を握ってくれなかった。


 あれ?

 ここは握手して、険悪さを出すのが正解じゃないの?


 どういうこと?

 なんでボクの時だけ普通にツッコミされるの?


 おかしくない?

 ボクは差し出した両手をおろして地面を見つめる。


 ……いや、ちょっと待てよ。

 おかしくない……のか?


 そういえば、院長先生はアリアに冒険者になってほしくないと言っていた。


 それなのに、アリアが冒険者まがいのことをしていることに腹を立てていて、アリアは冒険者になりたいのに、冒険者にならせてくれない院長先生に腹を立てているということなんだ!!


 それなら、険悪な雰囲気もうなずける。


 つまりは冗談ではなく、本気で険悪な雰囲気を醸し出しているんだ。

 あれ、これ、失敗したんじゃね?


「冗談だよ、冗談」

 アリアと院長先生双方の気持ちを理解したボクはすぐさま、場を和ませようとした。


「つまらないデス」「つまらないのよ」


 うう、アリアにも院長先生にも責められた。

 もしかして、本当は仲がいいのかな?


 そうだよ、きっとアリアと院長先生は昔からこういうノリだったんだんだよ。

 アリアと院長先生は“つうかあの仲”で、ボクだけを仲間外れにするスタイルに違いない。


 だから、初めてじゃないのに、アリアと院長先生は初めてのテイで挨拶して、ボクだけを仲間はずれにしたんだ。


「もう、仲良しだな、院長先生もアリアも」

「仲良くないデス」「仲良くはないのよ」

 同時にこたえるアリアと院長先生。


「またまた。息がそろっているじゃないですか」

 険悪な雰囲気は漂っているけど。


「そろってないのよ」「そろってないデス」

 やっぱり、息がぴったり。

 険悪な雰囲気は漂っているけど。


「ところで、サイレント、ちょっとこっち来るのよ」

 珍しく院長先生が真剣な顔でボクの腕をつかんで路地裏へと連れ込む。


「え? どうしてですか?」

「あの子には聞かれたくない話なのよ」


 アリアに聞かれたくない話?

 ああ、アリアが冒険者になった経緯をこっそりと聞きたいのかな?


「院長先生、どうやらボクとお話があるみたいだから、ちょっと待ってて、アリア」

「分かったデス」


「で、あなた、召喚魔術なんてどこで覚えたのよ?」

 院長先生はアリアと距離をとって、話が聞こえないだろう場所までくると、ひそひそ声で話を切り出した。


「召喚魔術? 覚えてないですよ」

 文字さえ読めない、このボクが召喚魔術なんか覚えられるわけないじゃないか。

 何を言っているんだ、院長先生は。


「それじゃあ、なんであなた、魔族となんか一緒にいるのよ?」

「魔族ですって?」


 魔族というキーワードを聞き、ボクは脚のホルダーからダガーを構えて辺りを素早く見回した。

 ボクの近辺に魔族が居るのだとしたら、かなり危険だ。


 ダガーを構えたまま、一周するが何も感じられない。

 上か?


 空を見上げるが、虫一匹見つからない。

 いるのは、院長先生だけだ。


「魔族と一緒になんかいませんよ。どこにいるんですか?」

「すぐそこにいるのよ」

 院長先生はアリアがいるほうを指さす。


 指さした方を見るが、アリア以外には誰もいない。


「院長先生、誰もいませんよ」


「いるじゃないのよ」

 本当に何を言っているんだ、院長先生。


 何もいないじゃないか……はっ、そういえば、院長先生は聖魔法が使えるんだ。


 ボクが見えていないだけで、そこに魔物がいるのかもしれない。

 超熱病を引き起こす魔物みたいに。


「すみません、院長先生にはみえているかもしれませんが、ボクにはみえてないみたいです」

「冗談きついのよ、サイレント。さっきまで普通に会話していたのに、視えないはないと思うのよ」


「えー!? ボクが魔族と会話ですって!?」

 魔族と会話なんてしていた覚えないぞ!


「楽しげに話していて、会話していないとか、頭大丈夫なのよ?」

「いやいやいや、魔族と会話なんかしてませんから」


「あなた、アリアちゃんと会話していたのよ」

「なんだ、アリアのことですか。アリアとは会話をしていましたよ」


「それなら、魔族と話しているじゃないのよ」


 え?

 アリアが魔族?

 何を言っているんだ、院長先生は?


忙しい人のためのまとめ話

 アリアと院長先生、険悪なムードを漂わせながら自己紹介をする。

 院長先生、アリアが魔族だと指摘され。サイレントは混乱する。




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