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53話 サイレント、死体がフェス様じゃないことを証明しようとする

これまでのあらすじ

 サイレント、フラットさんに火ネズミを渡す。

 サイレント、火ネズミを出したときに火鳥も出してしまう。



 



 もしかして、ボクやっちゃった?


 この鳥の死体がもしも本当にフェス様だとしたら、そのフェス様を殺したボクは、フェス様信者の人から嫌われる。


 ……って、フェス様信者って、この村全員だよね?


 もしも、嫌われることになったら、この村でスローライフなんかできるわけがない。

 よし、ここは全力で否定しよう。


「みなさんは、これがフェス様だと言いますが、異議があります!!」

 ボクは全力で叫ぶ。


「ほう、異議とは何かね?」

 金持ちそうな男が聞き返してくれた。


「村長そんなやつの言うことなんかに耳を傾ける必要はねえよ」「そうだよ、これはどう見てもフェス様じゃないかい」「そうだ、そうだ、フェス様を殺したやつなんか、処刑しろ!!」

 怒声を発する村人たち。


「まあ、待ちなさい。ここにある死体がフェス様じゃない可能性だってあるんだ。もしもフェス様じゃなかったならば、本物のフェス様に対して不敬を行うことになる。まずは公平な立場でこの男性の異議とやらを聞こうじゃないか」


 村長はみんなをなだめてくれた。


「まあ、村長がそういうなら」「きくだけ聞いてやるか」「そうだな」

しぶしぶではあるが納得する村民たち。


「それで、異議とは何かね?」

 村長が優しく尋ねてくる。


「そもそも、フェス様って、女神じゃないの? ほら、女神像があるじゃないか」

 ボクは昨日教えてもらった石像を指さす。


「その像は、鳥の姿をしているフェス様を擬人化したものだ。フェス様の正式名称はフェニックス様なんだ」


 擬人化した像?

 つまりは最初から鳥だったってこと?


「フェニックス様なのに、何でみんなフェス様って呼んでいたのさ?」

 不思議に思ったボクは尋ねる。


「それは、この村はニック村でしょう? フェニックス様は常にニック村と共にあるから、『フェニックス』から『ニック』をとって、フェス様と崇めていたんだよ」


「へー、そうなのか!!」


「納得されたということは、異議は取り下げでいいですかな?」


「ちょっと、待った。まだ異議はあるんだからね」

 危ない、危ない、危うく懐柔されるところだった。


「ほう、うかがいましょう」


「この魔物は自分の魔法で火山を噴火させて村を半壊させた後に、村を訪れて励ましの言葉を与えるようなやつなんだよ。つまりは自作自演をしてたんだよ。そんな魔物がフェス様であるわけがない」


 ボクは火鳥をぴしっと指をさしながら異議を唱えた。

 そうだよ、もしもこれがフェス様だとしたら、言動がおかしいよ。


「フェス様が自作自演? そんなことをするわけないだろ」「そうだ、そうだ! フェス様はそんな卑怯なことをしない!!」「死んだフェス様を悪く言うな!!」

 怒りをあらわにしてくる村人たち。


「いや、だって、本当のことだよ。嘘発見調査官に誓ってもいい。この魔物はボクの頭の中に直接そう語ってきたんだ!!」


「……ということは、ここにおられるのはフェス様で間違いない」

「え? ちょっと待って。何でそうなるの?」


 自作自演をしていたんだよ?

 フェス様は自作自演なんかしないって村人たちは言っていたじゃないか。


「伝説上では、フェス様は頭に直接語りかけてくる鳥ですからな」

「えっと、つまりそれって……」


「あなたの証言でこの鳥がフェス様だと確定したということです。まあ、本当にフェス様が自作自演をするとは思えませんが」


 しまった、墓穴を掘った。


「ここからは推測ですが、あなた、フェス様の羽根を使ったんじゃないですか? どんな状態異常でも治すといわれているフェス様の羽根を」


「あはは……そんなはずないじゃないですか……」

 ボクは青く澄んだ空を見ながらこたえる。


「それなら、身体検査をしてもかまいませんか?」

 村長はボクの体に手を入れようとしてきた。


「やめてください!!」

 ボクは村長の手を払う。

 その時にひらひらと1枚の羽根が村長の足元に落ちた。


「おや、これは……」

 村長は落ちる羽根を拾ってしまった。


「「「「「あー、フェス様の羽根!!」」」」」

 村人全員の声が重なる。


「最初から怪しいと思っていたんだ。見るからに聖職者じゃなくて冒険者だろ、お前」「確かに、どこからどうみても神様の格好じゃないな」「薬も聖魔法も使わないで病気を治すなんておかしいと思ったんだ」


「いや、あの、それは、その……」


 ダメだ、全然言いわけもヘリクツも出てこない。

 ここまでなのか……


「これにて、この死体はフェス様ということでよろしいですかな?」


「まだだ、まだ諦めていないよ、ボクは」

 ボクは必死に抵抗する。


「ほう、まだ異議があると?」

 いつのまにかあきれ顔になっていた村長がボクに尋ねてくる。


「そうだよ。まだあるよ」


「一応聞きましょう、なんですかな?」


「さっきから聞いていれば、フェス様のことについて、伝説上とか、人づてに聞いたことばかりじゃないか。実際にフェス様の姿を目で見た人がこの中にいるの?」

 ボクが尋ねると広場はしーんとなった。


 よしよし、誰もいないなら、反撃ができそうだぞ。


「目で見たことがないのなら、どうして、この魔物がフェス様だと断言できるの? できないよね?」


「つまりあなたは、誰もフェス様の姿を見たことがないなら、この魔物がフェス様ではないと言いたいのですか?」

「その通り。この魔物はフェス様によく似ただけの魔物なんだよ」


「あなたの頭の中に直接話しかけてきたのにですか?」

「そうだよ。フェス様に似ている魔物だから、ボクの頭に直接語りかけてきたんだよ」


「羽根で病気を治したのは?」


「たまたま、フェス様に似ている魔物にも羽根に病気を治す効果があったんだよ」

「かなり苦しい言い分ですな」


「でも、この場に本物のフェス様を見たことある人はいないんでしょ? いないなら、この魔物がフェス様だと証明できないよね?」


 フェス様といえども、所詮は偶像。

 実際に見た人がいないのであれば、誰が本物のフェス様だと証明できようか……いや、できない。


「まあ、それはそうですが……」

 しぶしぶ納得する村長。


 よし、なんとかこの場を切り抜けられそうだぞ。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、死体がフェス様だと特定されかけ、ピンチに陥る。

 サイレント、へりくつを言って、死体はフェス様じゃないと村民を無理やり納得させる。

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