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51話 サイレント、冒険をやめる!?

これまでのあらすじ

 サイレント、ニック村全員を治療する

 サイレント、超熱病から復帰したおっちゃんと話す


 


「いやいや、あらかたこの村の人の病気はボクが治したから、おっちゃんは神にはなれないよ。残念ながら」


 ボクがすでに神様になってしまったんだから。


「お前は本当にバカだな。誰がニック村で神様ごっこをするって言ったよ」


「どこで神様ごっこするつもりなの?」

「そりゃあ、カバッカの町に決まってるだろ」


「カバッカの町? え? カバッカの町?」

 ボクは聞き返す。


「ああ、カバッカの町だよ」

 おっちゃんはこちらを見ずにこたえた。


「おっちゃんを町で一番のバカだと認定して、逃げだせないようにしようとしたあの町の病人を助けに行くと? おっちゃんが?」


 どういう風の吹き回しだ?


「ああ、そうだよ。きっと、超熱病にかかっている人がたくさんいるだろうからな」


「カバッカの町に超熱病の人なんているの?」

「いるだろ。なんせ、俺の花のあざが出始めたのは、カバッカ町を出るちょっと前だったからな」


「そうだったのか」

 ニック村に来てから具合が悪くなったものだと思っていたけど、カバッカ町にいた時からだったのか……


「だから、俺が助けに行ってやるのさ」


「それが正直な気持ち?」

「もちろんさ。お世話になった人がたくさんいるんだから」


 不自然なほど曇りない眼でまっすぐにボクを見続けるおっちゃん。

 あ、この眼は何か裏がある。


「で、本音は?」


「俺をカバッカ町のバカだといったやつの顔は覚えているから、ギリギリまで治療せずに俺をバカにしたことを後悔させてやる。助けてやる時も、『町一番のバカに助けられて、今、どんな気持ち?』って、聞いてやるんだ。屈辱に満ちた顔をみるのは、今から楽しみだぜ……」


 やっぱり。

 そんなところだろうと思った。


「なんだよ、サイレント、何か言いたそうな目をして。文句があるならカバッカ町にはお前が行くか、サイレント?」

「遠慮しておきます」


 ボクがカバッカ町に帰ったら、町の人は超熱病だろうが、槍が降ろうが、絶対にボクを追って、ムゴイ制裁されるに決まっているんだから。

 本当に、彼女がいない司祭様の恨みは怖い。


「そうだろ。だから、羽根を寄越せ」


 おっちゃんはボクの首に右の上腕をからめて、左手で羽を寄越せと要求してくる。

 これ、はたから見たら、カツアゲだからね、おっちゃん。


「羽根をあげてもいいけど、条件がある」

「なんだよ?」


「ホバッカ村とホバッカ村の近くの猟師のおばあさんの家にも寄ってほしいんだ」

「なんで?」


「ボクとアリアがニック村に来る前に寄ったんだ。もしかすると、超熱病で苦しんでいるかもしれないからね」

「お前たちが寄ればいいだろ」


「ボクとアリアはあの村には寄れない事情があるんだ」

「しょうがねえな。寄ってやるよ。だから寄越せ、羽根」


「はい、どうぞ」

 ボクはマジック・バックの中から羽根を何枚か取り出して、おっちゃんに渡す。


「よし、善は急げだ。ちょっくら行ってくる」

 ボクから羽根を持ったおっちゃんは走り出す。


「もう行くの? 病み上がりなのに」

「おう。今までずっと寝ていて体がなまっているからいい運動になるからな。若いころ韋駄天と呼ばれたサンザール様の脚をみせてやるぜ」


 おっちゃんはダッシュで走り始めた。


「無理しないでね」

 ボクは手をふっておっちゃんを見送る。


「分かってる」


「よかったんデスか、師匠。サンザールさんに羽根を渡して。羽根を悪用するかもしれないデスよ?」

 横でかいわを聞いていたアリアは心配そうに聞いてきた。


「大丈夫。おっちゃんは間違ったことをしないよ。本当はおっちゃん、いい人なんだ」


「そうデスか?」

「口ではバカにした人を見返すみたいなことを言っていたけど、あれは照れ隠しだね。ボクがカバッカ町に戻れないことは知っているから、急いで戻って助けようといているんだ。病み上がりなのに」


「サンザールさんを信頼しているんデスね」

「長い付き合いだからね、おっちゃんの考えていることは手に取るようにわかるよ」


「アリアも師匠とサンザールさんのような関係になりたいデス」

「それはもう少し時間が必要かもね」


「それなら、師匠、アリアと旅を続けてほしいデス」

「そのことなんだけどさ、アリア……」


「治療のほうは終わりましたか、神様」


 ボクが話を切り出そうとすると、広場にいた豪華な衣装をまとい、貴金属を身に着けて見るからにお金持ちっぽい老人が話しかけてきた。


「うん。そうだね」

 ボクはうなずく。


「それなら、ぜひ我が家に来て、未来永劫お住みください。何、お金はいりません。はっはっはっ」

 老人は笑いながらボクに家に来るよう勧めてくる。


「ちょっと待った、村長。この神様はうちの宿屋に泊っているんだよ。神様、うちにはかけ流し源泉もあるんだよ。お金はいらないから、ぜひずっと宿屋に泊り続けてください」

 ボクが宿泊している宿屋のおかみさんが必死に自分の宿屋を勧める。


「おいおい、神様がこんな辺鄙な村に住むわけないだろ。どうですか、神様、私と一緒に王都に来ませんか? 衣食住には不自由させません」

 若い男が王都に来ないかと勧めてくる。


 そのあとも、我が家に来てほしいだの、自分の店に来てくれだの、弟子にしてくださいだの、いろいろな人が勧誘してきた。


「アリア、聞いての通り、今、ボク引っ張りだこなんだよ。だから、ごめん。ボクの冒険もここまでなんだ。この中の誰かの家に行って、そのままスローライフをするよ」


 アリアには悪いけど、ボクのことを必要としてくれる人がいるんだ。

 わざわざ危険な冒険をする必要はない。


「そうなんデスね……」

 ボクの話を聞いて、がっかりするアリア。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、おっちゃんに火鳥の羽根を渡す。

 サイレント、アリアに冒険はここまでだと伝える。


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